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第77話 情け容赦なし

 虚空斬(ブラインドスラッシュ)でオーガ族の反逆者を倒し、対峙していたダグジールの衛兵には市民の保護を託して次なる標的を探す。


 何かを破壊している大きな音のする方へ向かうと、戦斧を振り回し家屋を壊しているオーガ族を発見した。

 物理的な攻撃ではオーガ族を抑えきれない衛兵が、魔法による攻撃をしてはいるもののオーガ族の防御魔法に阻まれているようだ。


「衛兵ッ! 斬撃魔法は使えるか?」


「使える者もいるがオーガ族に防御魔法の使い手がいて弾かれる……」


「どいつだ?」


「あの緑の革鎧を着たヤツだ」


 衛兵が指差したのは、暴れているオーガ族の中で一番手前にいる戦斧を持っていない男。どうやら防御専門で後ろの仲間に攻撃を通さない役割らしい。


「虚空斬ッ!」


 試しに撃ってみるが、なるほど弾かれてしまった。だが、弾いた時の衝撃でよろめきながら数歩後退りしているところを見るに、もっと威力を上げた斬撃なら打ち破る事が出来そうだ。


「キサマ、衛兵じゃないな?」


 衛兵の攻撃を嘲笑って弾いていた緑革鎧のオーガ族が、顔をしかめて俺を睨み言葉を発した。


「ああ、俺は軍の者じゃないが、ガイールでザーザードを処刑した張本人だ」


「何ッ⁉ キサマがザーザード大佐を処刑しただと?」


「ああ、俺の攻撃に手も足も出ずにくたばったぞ。アイツはクディアードよりも全然弱かったなぁ。何であんな弱いヤツが大佐なんだ? って悩んだぞ」


「キ……キサマ、大佐を愚弄しやがって」


 少し煽ってやると相当憤激したのか、額やこめかみには青筋を浮かべ、防御魔法を張っていたであろう両手はブルブルと震え出していた。

 それにしても……ヤツの後ろにいる戦斧を持ったオーガ族たちは前に出ようとしないし、コイツほど怒りを露わにしている風でもない。何よりチラチラとこの緑革鎧のヤツを見ては他の連中とも目を合わせているし、もしかしたらこの中では緑革鎧のヤツが一番偉いのか?


「オーガ族ってのは、ドラゴノイドよりも弱いんだろ?」


「ドラゴノイド……クディアード中佐の事なら、あの方はクロコデュリア族の中でも特に優れた戦闘力を持ったお方だ。中佐が特別なだけだ」


「ほう、あれで(・・・)特別か」


「キッサマァ! ぶっ殺してやるッ‼」


 両腕を広げたかと思うと、頭上で強大な火の玉を作り出し、大きく振りかぶってソレを俺に投げつけて来た。


「ふん……」


 あまりにもモーションが遅すぎる。十分な時間を掛けて『破断(ブレイク)』魔法を繰り出し、こちらは振りかぶる事無くそのまま巨大な火の玉に向けて放出しぶつけてやると、火の玉は激しく四方八方に飛び散って粉砕してしまった。


「なにィ……⁉」


「クディアードより弱いザーザードの、更に弱いお前の魔法なんてお手玉みたいなものだ。この程度でどうにかなるとでも本気で思っていたのか?」


「クッ……。お前等ッ! さっさとコイツを叩き潰せッ!」


 自分の魔法では敵わないと思ったのか、後ろにいる戦斧を持ったオーガ族たちに命令している。やはりコイツがここでは指揮官的な役割をしていたんだな。


 緑革鎧が命令するも、後ろの連中はオロオロするばかりで一向に向かって来る気配はない。それはそうだろう、自分より上の立場の攻撃が効かないのに、自分たちの攻撃が敵うはずがないのだ。

 

「何をしてる! とっとと行きやがれッ!」


「ザニア様、無理です。我らが敵うはずありません」


「お前等、命令を無視する気かッ! この俺に殺されたいのかッ‼」


 あ~あ、それはパワハラって言うんだぜ。


「おいおい、ザニア様とやら。自分の事は棚に上げて部下を見殺しにするつもりなのか? そんなんじゃ誰も付いてこないぜ?」


「う、うるさいッ! どいつもこいつも舐めやがって……」


「オーガを舐める趣味はないっての。そもそも煩いのはお前の方だ」


 喧しく騒ぎ立てるザニアの頭部だけを結界で覆う。


「……ッ⁉」


 頭から透明な壺を被ったような見た目になったザニアは、結界を外そうと引っ張ったり叩いたりと慌てふためいている。

 そんなザニアに向かって腕をのばし手を広げると、俺は結界の中の空気を少しずつ消していった。


 空気が薄くなっていくのを感じたのか、ザニアが更に暴れ出す。部下のオーガ族もどうしたらいいのか分からず、ただただザニアの愚かなさまを眺めているしかない。


 暴れていたザニアの動きが徐々に遅くなっていく。酸素が無くなり意識が遠のいているのだろう。

 そして、遂に両膝から崩れ落ちて、そのまま前方へバタリと倒れてしまった。


「ヒ……ヒィィィィ!」

「お、お助けを!」

「降参、降参します。どうか、どうか命だけは……」


 ザニアが倒れると、ヤツの部下たちは恰幅の良いオーガ族には似つかわしくない悲鳴を上げて後退りをしたかと思うと、その場に平伏し震え上がった。

 命乞いされたところで、それまでさんざん暴れて一般の魔族たちの生活を壊してるような連中を許すわけがない。


「テメェらで始めといて今更何言ってんだ」


 俺のその言葉を聞いて助からないと思ったのか、この場から逃げ出そうと立ち上がって反転するが――。


「逃がさねぇよ」


 『呪縛』を掛けて身動きを封じ込める。そして更に球状結界に閉じ込めた。


死絶の業火デスフレア・デストラクション


「「「…………ッ!」」」


 声は聞こえないが、業火に包まれた結界の中で断末魔の叫びを上げもがき苦しんでいるオーガ族を見つめ、胸糞悪さに思わず顔が歪んでしまっていた。


 結界の中で燃え盛る業火が鎮火してきた頃、そう遠くない場所で大きな音が聞こえ、直後に振動が伝わってきた。

 付近を探察すると、一対四での戦闘が行われているのが分かった。


「グレッグか……」


 すぐさま感知した方へ移動すると、予想通りグレッグが四人のオーガ族と対峙している。その四人のオーガ族は今まで対峙したオーガ族よりも一回り大きく、尚且つ持っている武器も更に巨大な戦斧で、それを軽々と持ち振り回していた。


「グレッグ、ヤツラは特殊個体か?」


「ターナスか。どうやら【オーガジェネラル】って個体のようだ。あの馬鹿デカイ戦斧を木っ端みたいに軽く振り回すうえに、破壊力も桁違いで近づけん。ターナスの魔法なら攻撃が通るか?」


「やってみよう」


 オーガジェネラルに向かって斬撃を飛ばしてみると、大戦斧で弾いてしまった。魔法の斬撃を弾くって事は、あの戦斧も魔法で強化されているのだろう。


「斬撃がダメなら、コイツはどうだ――『雷電撃射(サンダーボルト)!』」


 自然に発生する稲妻とは比べ物にならない程の雷撃をオーガジェネラルに向かって撃ち込んだ。


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