第59話 vs傭兵ギルド
※一部文章の入れ替えをしました。内容の変更はありません。
魔王軍の駐屯所に到着した俺達は、捕らえた傭兵とガットランドの男たちを監倉へと放り込んだ。
そして、例によってパイルとシーニャが尋問を始める……はずだった。
「首謀者はギルド大隊長のザーザード大佐。オーガ族で、かつては魔王軍の突撃隊にいた過去がある。軍時代に命令違反を犯したうえ上官を殺害し脱走。脱走時にも衛兵五人を殺害している。その後傭兵ギルドに偽名で加入し、その事がバレた後も戦績を理由にお咎めは無く大隊長にまでなった。傭兵ギルド本部はザーザード大佐がガットランド王国と通じている事は知らないはず。全てはザーザード大佐独断でガットランド王国と取引して配下の傭兵を動かしている」
――と、尋問しないうちから喋ってくれた。どうやら魔族の傭兵ってのは口が軽いようだ。まぁ、パイルとシーニャの尋問を受けた事がある者なら……口が軽くなるのは当然と言えば当然なのだろう。
「そのザーザード大佐ってのは、何処から指示を出しているんだ?」
「ガイールの傭兵ギルド支部だ。ガイール支部に所属している傭兵は、皆ザーザード大佐の配下だと見ていい」
「他に関わってる支部は?」
「無い……と思う。ザーザード大佐は自分の目が届かない所の連中は信用しないから、他の支部と連携してるとは考えにくい」
「ならばそのガイール支部だけが、ガットランドと組んで亜人種族拉致をしているワケか?」
「そうだ」
傭兵ギルド全体で暗躍していたのかと思っていたが、どうやらそこまで酷くは無かったか。レトルスもそれを聞いて幾らかホッとしたようで、大きく肩を動かして深呼吸していた。
だがもう少し全体像を把握しておきたいので、このまま知っている事を全部吐いてもらわねば。まぁ、もうこっちが質問すれば何でもかんでも喋ってくれるから楽でいいけど。
取り敢えず、どれだけの魔族傭兵が関係しているのかだが……。ガイールの傭兵ギルド支部は全てだと考えていいらしい。
ガイール支部の最高責任者は本来ならば支部長になるのだが、実権はザーザード大佐が握っているため支部長の役目はザーザードの言葉を各傭兵に伝える事で、当のザーザードは支部長室でふんぞり返っていると言う。
つまり、実際は支部長もザーザードの配下というワケだ。
ガイール支部の傭兵はガイール大隊として五十人ほどが常駐していると言う。そして、こうして拉致した亜人種族をガットランドへ連れて行くのを一部の小隊が受け持っているらしい。
「駐屯所内で信頼のおける魔族だけを選出して、ガットランドに引き渡す亜人種族を連れた連中を捕らえる部隊を出して貰えるか?」
協力者として追随する衛兵に訊ねると、「直ちに編成する」と言って数名が部屋を出て行った。
「主力となるガイール支部への襲撃は、俺達<不気味な刈手>が主体となって突撃して傭兵と直接対峙する。軍の協力者達にはガイール支部内に囚われているかもしれない亜人種族の保護を頼みたい」
「それで、ターナス。俺達は傭兵を殺してもいいのか?」
「ああ、構わんだろ。『囚われている亜人種族の解放』だって事を宣言した上で、それでも攻撃してくるなら敵だ。殺っちまおう」
グレッグの様子からして、めちゃめちゃ暴れたい気分なんだろうな。尤も、にやけているのはパイルとシーニャ、そしてハースもだ。流石にアレーシアとレトルスは神妙な面持ちなのは、多少なりとも緊張しているからだろう。……と言うか、それが普通だと思うぞ。
綿密な作戦計画――などと言うものはなく、ほぼ行き当たりばったりになりそうではあるが、そもそもギルド支部一つ潰すくらいなら俺一人で十分なのだ。
捕らわれている亜人種族がいれば人質とならないよう早めに保護する事と、首謀者であるザーザードを逃がさない事。その二つがクリア出来れば、後はどうにでもなる……はず……だ……と思う。
一応、襲撃の手筈は打ち合わせておく。
ガイール支部のある場所や、そこまでの道程。移動の手段に前衛部隊と後衛部隊、それから万が一の為の救護班等々……ある程度の準備を衛兵や自警団の面々と打ち合わせていると、ガットランドに亜人種族を引き渡す傭兵ギルドの連中を捕縛する為の部隊編成が整ったと知らせが入った。
捕縛部隊の案内役には、四肢を切断した傭兵の一人を付かせる。手足は魔法で作った義肢を装着させるが、勿論自分の意思では動かせないようにしてあるし、何らかの反抗や抵抗を見せた場合は『死んだ方がマシだと思うほどの苦しみを味わう事になる』と、しっかり伝えておいた。
首が捥げるんじゃないかと思うほど、ブンブンと大きく首を縦に振っていたから、やましい気は起こさないだろう。
そして、ガイール支部襲撃の本隊は……まず突撃班の<不気味な刈手>、傭兵と直接対峙する三つの中隊。拉致されている者の捜索と保護をする小隊が二つ。怪我人の救護をする救護班。そして逃亡者を防ぐ為の範囲障壁班――と、それぞれの馬車に分かれて隊列を組み出発する事となった。
こちらの案内役も、義肢を与えた二人の傭兵だ。一人は俺達<不気味な刈手>が乗り込む馬車の御者台で案内させる。手綱を握るのはシーニャだが、何しろ荷台に乗ってる俺達が睨みを効かせているのだから妙なマネなど一切不可能。
そして、もう一人は後ろに続く中隊の馬車に乗せている。ちなみに、この中隊の馬車に乗っている中隊長の魔族は『毒魔法』という魔族の中でも特殊な魔法の使い手らしい。
俺もパイルも興味があってどんな魔法なのか聞いてみたところ、パイルは魔術で再現するのが難しいようで残念がっていたが、俺は簡単に放つことが出来たので中隊長も驚いていた。
そりゃ俺は「想像した事を具現化出来る」のだから、反則技だけどな。
◆◇◆◇◆◇
ガイールの近くまで来た俺達は、此処でそれぞれの役割毎に分かれての行動となるが、その前に敵から察知されない様、全体に認識阻害を掛けておく。
範囲障壁班以外は全員馬車から降り、歩いてガイールに潜入する。
俺達は案内役の傭兵を先頭に傭兵ギルドを目指す。この時、傭兵の義肢は魔法で歩けるようにしているが、あくまでも案内の為に歩けるようにしておくのであって、それ以外の行動を取ろうとすれば……それは傭兵もよく分かっているようで、「絶対に裏切らない」と自ら約束していた。
そもそも、俺達に対して「裏切らない」ってのもおかしな気がするが……ま、いっか。
まず範囲障壁班が広がり、ガイールの町を取り囲むように配置していく。
そして、俺達突撃班を先頭に第一・第二中隊、第一・第二小隊、第三中隊、救護班――の順に続く。
ガイールの町は暮らしているその殆どが魔族なだけで、それ以外はランデール領内で訪れた街と変わりはなかった。
認識阻害を掛けてはいるが、体がぶつかったりすれば怪しまれてしまうし、何より隠密で移動するには大所帯過ぎるので、なるべく接触を避ける為に郊外から人通りの多い場所を避けて傭兵ギルドを目指した。
「あれがガイール支部です」
暫く歩いてから案内役が指差した先に、石壁造りの大きな建物が見えた。
冒険者ギルドと違ってあまり町に溶け込む事は無いのか、俺達にとっては都合の良い事に町の中心部からは少し離れた所に傭兵ギルドは建てられていた。
「救護班は此処で待機していてくれ。これから俺がギルドの周囲で魔法を放つ。建物から傭兵が飛び出てきたら作戦開始だ」
無言のまま皆が頷き、それを確認した俺は傭兵ギルドのとば口付近に向かって、爆炎魔法を放った。




