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第53話 得られた情報

間違い部分を修正しました。

 突如馬車が大きく揺れると、急な方向転換をしたのであろう、荷台にいた全員が遠心力で振り飛ばされてしまった。


「パイル、何があった⁉」


「襲撃です! 多分ですけど野盗かもしれません、弓を射られました!」


 グレッグが御者台の方から顔を出して周囲を見渡し、俺は索敵を広げる。

 少しのんびりし過ぎたせいか、索敵を怠ってしまった。


「パイル、馬車を反転させろ!」


 馬車の向きを逆回転させてもらい、荷台の後端から襲撃者が身を隠しているブッシュに向かって火炎散弾(ファイヤーショット)を打ち出す。

 いくつもの火球を飛ばす火炎散弾は、一瞬で広範囲に火をつける事が出来る。ブッシュのような低木の茂みを延焼させるにはうってつけだ。


「逃がすかよ!」


 燃える茂みから逃げた襲撃者二人を『呪縛』で拘束しつつ、反対方向で隠れて様子を窺っていた他の襲撃者も結界を張って閉じ込めてしまう。


「グレッグ、右の拘束した二人を頼む!」


「おう!」


 『呪縛』で拘束した襲撃者をグレッグに任せ、俺は結界で閉じ込めた三人の方へ向かった。索敵内には他に襲撃者の仲間と思しき反応は無いから、取り敢えずは全員捕縛出来たようだ。


 結界に近付くと、中で三人の男がそれぞれ脱出を試みようとしているのか、バシバシと結界を叩いたり、剣で斬り付けてみたり――と、慌てふためいている。


「ふむ、野盗……には見えんな」


 結界に閉じ込めた男たちは、野盗にしては小奇麗な身形をしている。さりとて冒険者にも見えないし、全員が同じデザインの装束を纏っているという事は……。


「ターナスさん」


 馬車のままパイルとレトルスの二人が駆け付けて来た。アレーシアたちはグレッグの方に向かったと言うが……実際のところは「また知らない魔法を使った!」と、俺がやった事を確認したいがために、アレーシアたちにはグレッグの方へ行ってもらったのだそうだ。


「二人共、こいつ等の身形に見覚えは無いか?」


「う~ん、どこかで見たような気もしますが……どうだったかなぁ?」


「この服装はガットランド王国のモノです。ハジクという地方の民族衣装だったはずです」


 パイルは漠然とした記憶しかないみたいだったが、レトルスの方は良く知っていたようだ。


「パイル、ちょっとグレッグたちの方へ行ってくるから見張っていてくれ。万が一ヤバそうになったら『死絶の業火デスフレア・デストラクション』で消しちまって構わない」


「了解です!」


 襲撃者を結界で封じ込めたままこの場をパイルとレトルスに預け、瞬間移動でグレッグたちの方で拘束している連中を確認しに行く。


「グレッグ」


「うおぅっ!」「きゃっ!」「ひゃいっ‼」「……‼」


 うっかり皆の背後に出現してスグに声を掛けたもんだから、四人共声を上げて(シーニャだけは声を出してないが)驚いている。……スマン。


「心臓に悪いですよ、ターナス様……」


「スマン、反省してる。――と、それはさておきだ。こいつ等……やっぱり同じ服装だな。レトルスによれば、こいつ等はガットランドの者だそうだ」


「ほう、こんなユメラシアとの国境近くでガットランドの人間とは……いろいろと繋がりが見えてきそうだな」


「ああ、そうだな。取り敢えず、向こうは三人拘束してるんだか……一カ所に集めて尋問するか?」


「ふむ、そうだな。……いや、やはり別々に尋問してみようか。どう答えるか分からんが、最後に答え合わせをしてみた方が面白そうだ」


「面白そうって……」


 ホント、こういう場面では<宵闇の梟>の裏の一面を醸し出してくるよなぁ。


「アレーシア、ちょっと……」


「何でしょう?」


 アレーシアを呼んで小さな声で<宵闇の梟>の拷問を見るのがキツければ、無理をせずに目を逸らすよう耳打ちをする……のだが。


「別に大丈夫ですよ。<宵闇の梟>もターナス様も似たようなモノじゃないですか」


 俺ってそんなに残忍な事してたか? パイルやシーニャほどじゃないと思うんだけどなぁ……。

 なんとなく釈然としないのだけれども、深く考えても仕方がない。伝えるべき事は伝えて、喋れるように呪縛の首から上だけを解除した後、再び瞬間移動でパイルたちの下へ戻った。


「やはり向こうで拘束してる連中も同じ服装だった。あっちはあっちで尋問するって事だから、こっちはこっちで聞き出そうか。パイル、体を拘束したうえで結界を解くから、襲撃してきた理由を聞いてくれ」


「了解です」


 喋れるように首から下だけに『呪縛』を掛けて動けなくしてから、結界を解く。

 結界を破ろうと躍起になったままの体勢で動けなくなったところに、結界が解かれたもんだから連中はそのまま地面に転がってしまった。


「さて、皆さんはガットランドから来たようですが……私たちを襲った理由を教えてもらえますか?」


「……」


 素直に喋るつもりはないらしい。

 パイルは自分のナイフを取り出すと、質問した男の耳にナイフのエッジを添えた。流石は<不気味な刈手(グリムリーパー)>の尋問担当官。


「このナイフ、とぉ~っても良く切れるんですよ。いいですかぁ……」


 ――と、言いながら、男の左耳をスパッと切り落としてしまう。


「ほら、どうです?」


 切り取った耳を摘まんで、男の目の前に晒すが……男はそれを見ても呆然としているだけで、何が起こったのか……否、何をされたのかが分かってないようだ。

 そして、暫し経ってから――。


「うわあぁぁぁぁぁ!」


「いきなり大きな声出さないでくださいよ。自分の耳が切られた事くらい分からなかったんですか?」


「耳がぁ! 耳がぁ! みみ……ッ」「煩い」


 耳を切られた男が騒ぎ出すと、躊躇いなく男の顔を踏みつけるパイル。

 見慣れたワケではないが、手加減などしないパイルの尋問方法にはある意味尊敬してしまう。

 そして、ふとレトルスに目を向けて見れば……こちらも「やっぱりな」と言うべきか、ガクガクと体を震わせながらパイルを見つめていた。

 そりゃドン引きされるわな。


「なぁ~んで私たちは襲われたんでしょうかねぇ~?」


「じゅ、獣人族だからだ! 俺達はガーネリアス教会に雇われて、亜人種族を集めるよう言われたんだ! だから、獣人種族のあんた達を……」


 耳を削ぎ落された男とは別の男が、自分も同じ目に……もしくはそれ以上(・・・・)の目に遭うかもしれないと思ったのか、ベラベラと喋り出してくれた。


「……襲撃して捕らえてガットランドに送ろうとしたんですね?」


 コクコクと頷いて返答をする男。


「捕らえたら、どういうルートで送るつもりだったんですか?」


「ユメラシアの傭兵ギルドに引き渡す手筈になってた。あとはアッチの連中が何とかする事になってるから、それ以降の事は知らない。本当だ」


「ふむふむ。やはりユメラシアの傭兵ギルドが関わっていましたね」


 俺に顔だけ向けて確認を取るパイル。片足は耳を切った男の顔を踏んだままなのだが、それが何故か決めポーズに見えてしまう。


「ああ、ビンゴだな」

 

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