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第49話 <グリム・リーパー>始動

※サブタイトル誤字修正しました。

 魔族の冒険者レトルスが加わり、俺達は<不気味な刈手(グリムリーパー)>というクラン名を付けて行動する事となった。


「レトルスは冒険者として何等級になるんだ?」


「三等級で燻ってます……」


 グレッグの問い掛けに、レトルスは意気消沈気味に答えた。


「どうした? ここにいるパイルやシーニャ、それにアレーシアも三等級冒険者だぞ。その歳で――っと、実際の年齢は知らんが、その若さで三等級なら早いくらいじゃないか」


 自分のせいで気を落としてしまったと思ったのか、グレッグも少し戸惑ってしまったみたいだ。

 確かに、アレーシア達を見れば三等級は結構なベテランの地位になると思うし、見た感じレトルスはパイルよりも若そうなのだから、ちっとも恥ずかしい事じゃないだろうに。

 なので、その辺りを聞いてみる事にした。


「三等級だってことで、何か嫌な思いでもしたのか?」


「以前、請け負ったクエストを二等級のパーティーに横取りされまして、その時に『三等級で燻ってるようなヤツには勿体ない』と言われてしまい……」


「ああ、そういう奴等いるな。自分等より下の等級からクエストを横取りして偉そうにしてるアホども。そんなの気にする必要無いっての。そもそもクエストの横取りなんてのは罰則こそ無いが、しない事が冒険者同士暗黙のルールなのによ」


「グレッグの言う通り、どの世界でもそういうやからはいるもんだ。気にするな」


「ありがとうございます。ご期待に応えられるよう精進して参ります」


「レトルスさん、そんなに気負いしない方が良いですよ。そのうち分かるけど……考えるだけ無駄って思う様になるから」


「アレーシア? それはいったいどういう意味かな?」


「あら、別に深い意味はありませんけど? 何か気になりますか?」


 ムググ……アレーシアめ、絶対それは俺に対して思ってる事だろう! とは言っても、そう思わせてしまってきたのも事実だしなぁ。


「ま、<不気味な刈手(グリムリーパー)>のメンバーとなったからには、これからは今まで想像すらしたことも無い事を目の当たりにするだろうからな。アレーシアの言う事もあながち出鱈目じゃないぞ。――な! ターナス?」


「な! じゃねぇよ。な! じゃ!」


「想像したこともない事を……? いったいどんな事が……」


「アハハハハ。レトルスちゃん、そんな心配しなくてもいいですよ。ここにいるメンバー全員が経験してる事ですから」


 既にレトルスを“ちゃん”呼びしているパイルだが、彼女の言葉にレトルスは更に不安というか、委縮してしまったようにも見えなくはないんだが……大丈夫か?


「まあいい、兎に角、俺達はこれからユメラシアに行く事になる。レトルスにとっては母国での活動になるワケだが、今現在俺達が危惧しているのは『魔族の中にガーネリアス教へ通じている者がいるのではないか』という懸念だ。それについてレトルスは、何か知っていることはないかな?」


「いえ、そのような事は聞いた事もありませんが……。でも、魔族の中にガーネリアス教との内通者がいるのだとすれば、私は絶対に許せません!」


「まだ決まったワケじゃないんだけどな。攫わられた亜人種族はトラバンスト経由でガットランドへ運ばれていたと考えていたんだが、ここアトーレでも亜人種族が襲われたとなると、ユメラシアを経由してガットランドへ連れて行かれてる可能性も考えられると思ったんだ」


 レトルスにとって、同族が『人間中心主義』の片棒を担いているとなれば、それは黙っていられないだろう。ただ、今のところはまだ不確定要素であって証拠は何一つ無いのだから、場合によってはレトルスに俺達が『同族を疑う酷いヤツ』と思われても仕方ない事ではあるワケだが。


「ユメラシアには冒険者ギルドと対立する傭兵ギルドがあります。もしかしたら、その傭兵ギルドが関わってるという可能性も……」


「傭兵ギルド……か。俺の知る傭兵には二種類いる。雇い主には絶対で契約期限内は何があっても契約破棄はしない者。それとは逆に、契約期間中でも金次第で敵側に平気で寝返る者。もしその傭兵ギルドが後者であれば、悪い方の予感が当たりって事になるがな」


 普通、傭兵は契約がある限り雇い主を裏切る事は無い。金次第で簡単に寝返るような傭兵だと知れたら誰も雇わないからだ。とは言え、それでも金次第で動くクズはいる。

 人間族の野盗と一緒に獣人族を襲う獣人族だっているのだから、ガットランドに加担している魔族の傭兵がいないとも言えない……か。


 そういえば、ハースの母親も結婚する前は傭兵だったと言ってたっけ。

 

「どうしたターナス? 何か思い付いたのか?」


「ん、いやそういうワケじゃないんだが……仮に、魔族の傭兵がガットランドと通じていたとしてだ。メリットは何だ?」


「金……じゃないのか?」


「レトルス、魔族の傭兵が人間族に加担していたとして、その傭兵は金の為にやってると思うか?」


 人間族や獣人族とは考えが異なる可能性もある。


「……可能性は、あるかもしれません。傭兵になるのは生まれが貧しいか、魔王軍に入れなかったかの何れかが多いと聞きます。それに、正直言って傭兵ギルドは素行の悪い連中が多いのも事実です」


「――と、なると。トラバンストとは別ルートとしてユメラシアを経由出来る理由に真実味が出てくるな」


 グレッグとアレーシアが小さく頷く。

 そして、同様に小さく頷いたパイルが更に口を開く。


「それでは、ユメラシアに入ったら傭兵ギルドを集中的に調べてみますか?」


「そうだな。ただ、冒険者ギルドとは対立しているとの事だから、今までの様にはいかないかもしれないだろうし、注意は怠らないようにしよう」


 魔族領――じゃなくて魔王国か。

 現魔王はカラム侯国という人間族の侯国と懇意にしていると言うが、民衆の魔族まではどこまで友好的かが分からないし、これから探ろうとしている傭兵ギルドも、レトルスの話からして“問題児の溜まり場”と思ってもいいだろう。

 厄介事が増えなけりゃいいんだけどな……。


「それじゃあ、どうする? このままユメラシアへ行くか、いったんアトーレ(ここ)で宿を取って準備を整えた方がいいのか……だが。レトルスはどう思う?」


「わ……私ですか⁉ えっと……準備を整えてからの方がいいかな? ――と、思います」


 俺が振ると、少しワタワタ動揺したようだが、俺達任せにせず自分の考えをキチンと言ってくれたので安心した。


「ヨシ、じゃあ早速宿屋探しだ。カルゴ村の二の舞は避けよう!」


「「「「「オーッ!」」」」」「オ……オー?」


 レトルスよ。そのノリには付いて行かなくていいからな。


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