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第48話 新しい仲間

 ギルド支部長のゴーランから『死神タナトリアス』の説明を受けたレトルスは、やはり最初にその事を知ったパイルとシーニャ同様に片膝を付き頭を垂れて俺に敬意を示そうとしたので、慌ててそれを止めた。


「レトルス、その行為を俺は望んでいない。仲間になった以上、俺はお前も他の皆と同様に接するし、お前も普段は俺を『死神タナトリアス』ではなく、ターナスという一個人として接してくれ」


「しかし……」


「レトルスさん、それがタナトリアス様の望みであれば従うのが常でしょう」


 レトルスの肩に手を置いてアレーシアが言いくるめ……じゃなく諭す。

 言われたレトルスはパイルたち獣人種族の方を見て、どうすべきなのかを探ろうとするが、パイルは笑って、シーニャはいつも通り無表情で大きく頷くのを確認すると、アレーシアに向き直り「はい!」と、大きく返事をした。

 正直、パイルなら兎も角、アレーシアが言うと何だか納得出来ないのは……やっぱり普段のアレーシアの俺に対する言動がアレ(・・)だからなんだろうな。


「そういえば、魔族の冒険者ってのは初めて見た気がするが……実際は珍しくないものなのか?」


 少し気になったのでグレッグに聞いてみた。


「魔族の冒険者は珍しいと言えば珍しいな。いなくは無いんだが魔族領――、つまりは殆どの魔族冒険者はユメラシア内で活動していて、人間族の領地で活動するヤツは少ないんだよ」


「レトルスは何故、ランデール領で活動してるんだ? しかも人間族に変化(へんげ)してまで」


「単純に他の種族と探索したかったんです。ユメラシアに来た人間族と羊獣人族のパーティーに憧れたというのもあります」


「魔族と組む他の種族は少ないのか?」


「いえ、そんな事はないのですが……他の種族とパーティーを組むのを敬遠してユメラシア内だけで活動する魔族がいる為、他の種族からは『魔族は排他的だ』と思われてしまっているみたいなんです。悪いのはその一部の魔族のせいなんです」


「それで人間族に変化している……と?」


「はい。仲間になってから魔族である事を打ち明けると『魔族だからと断る事はないから安心して』と言われて、結果的には人間族も獣人族も魔族に対して別段敬遠する事はなかったんだと思い知らされました。ただ『人間族の姿の方が亜人種狩りに遭い難いよ』と言われて、なるべく人間族の姿でいる様にしていました」


「そうか。もし、魔族の姿の方が楽なんだったら、素の姿でいてくれて良いからな」


「ありがとうございます。もし――気が向いたら魔族の姿に戻らせて頂きます。それまでは、もう少しこのままでいさせて下さい」


 話してみれば、魔族と言えど別に他の亜人種族と変わりはないみたいだ。『魔族』という言葉に反応してしまうのは、前世で見ていた漫画や映画のキャラクターとして登場する魔族の知識のせいなのかもしれないな。


 こうして、レトルスという新しい仲間――――それも魔族の仲間が加わった。

 皆もそれぞれ歓迎の意を示しているが、その中でもパイルは皆と少し違う歓迎かもしれないな。俺の魔法と魔族の魔法にどんな違いがあるのかは分からないが、それでもパイルが取り組んでいる『魔法術』に良い影響が出るのではないだろうか。


「さて、ターナス殿の一団はこれによりだいぶ人数が増えたと見るが、グレッグ殿が率いる<宵闇の梟>とはクランとして活動しているのであろう? ならばこれを機にクランとして正式に登録してみてはどうだろう?」


 確かに、グレッグも「クランに名前を付けよう」と言っていたし、ゴーランの言うように正式なクランとして登録する方が都合が良いのだろうか。


「支部長もこう言ってるんだ。やっぱりクランの名前を付けよう! 死神の――」

「「「却下‼」」」


「まだ全部言い終わってないのに……」


「取り敢えずグレッグの意見は置いといて……ターナスさんは、何か名前の候補ありませんか?」


 パイルに言われてグレッグが少し肩を落としているのが見えて、ちょっと気の毒に思ってしまった。

 さりとて、俺だって名付けのセンスなんてあるワケ無いからなぁ。


「パーティーの名前を付ける時には、どういう方法で名付けてるんだ?」


「ん~、例えば憧れのベテランパーティーの名前を捩ってみたり、自分たちが掲げる理想や夢をパーティー名にしてみたり……と、いろいろですよ」


「なるほど……」


 あまり名付けの法則なんてのは無いもんなのか。


「因みに、死神はどんな姿をしてると言われてるんだ?」


 この世界における死神の容姿というものを聞いてみたが、獣人族には言い伝えとしてただ単に『人間族からの解放を齎す者』と言われているだけらしい。

 パイル曰く、それがガーネリアス教典における『人間族に死を齎す者』と同意との事。


 魔族には死神に関する伝記等は無く、代わりに悪魔が死神同様に『死の象徴』とされているらしい。かつて魔王と悪魔が戦って魔王が負けた――という言い伝えがあり、その時の悪魔は『残虐残忍で全てを恐怖に陥れた』と言われ、姿については『見た者は狂気に震え死んでいった』とされているだけで、明確な容姿については語られていないと言う。

 どんな悪魔だ⁉


「ガーネリアス教では、死神は『黒い羽根と鋭い爪を持つ』と言われてたと思います。あとは『黒髪で赤い目、全身黒尽くめ……』ああ、ターナス様と同じじゃないですか」


 アレーシアが自分の知るガーネリアス教における死神の容姿を説明してくれたのは良いが……何故か途中から、今の俺の姿がガーネリアス教で言われる死神と同じだと言いやがった。


「俺は羽根も無ければ鋭い爪も無いぞ! 目だって赤くないだろ」


「でも黒髪に黒尽くめの服ですよ?」


「それは別に死神じゃなくったっているだろう! だいたい俺がいた世界での死神ってのは――。ああ、そうか。ならば<グリム・リーパー>ってのはどうだ?」


「<不気味な狩手(グリムリーパー)>ですか?」


「ああ、俺がいた世界での死神ってのは『黒いローブを着て大鎌を持った骸骨』ってのが定番のスタイルでな。その大鎌で命を刈り取るって意味なのか、 死神のことを<グリム・リーパー>と言うんだ」


「おお! いいじゃないかソレ! ガーネリアス教の連中の首を刈り取ってやるって意味にもなるだろ」


 どうやらグレッグのツボにハマったらしい。何故か一人で大はしゃぎしている。案外グレッグは厨二の気質があるのかもしれない。


「いいじゃないか。クラン<不気味な狩手(グリムリーパー)> その名で登録したらどうだ?」


 ゴーラン支部長も気に入ったらしい。

 アレーシアやパイルを見ても……うんうん頷いているから問題無いのか。ハースは……笑ってる。シーニャは……親指立ててグッジョブか? 問題無いらしい。


「では、俺達は今日からクラン<不気味な狩手(グリムリーパー)>として登録させてもらおう」


「「「「「オーッ‼」」」」」


 いや……オーッじゃねえよ、オーッじゃ。そのノリは望んでないっての!


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