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第39話 類は友を呼ぶ?

 ギルトアで行方不明になっている亜人種族が、冒険者に扮した人間族に拉致されている情報は掴めた。だが、やはりその行き先はトラバンスト聖王国を経由している。

 そうなると獣人種族を仲間にしている俺達では、危険過ぎて迂闊に入国することは出来ない。

 

「トラバンストを経由しないのであれば、ユメラシアからガットランドに向かうって方法もあるが……こっちは逆に人間族である俺達が受け入れられない可能性があるからなぁ」


 ユメラシアと言うのは魔王が統治する魔族の国で、現在はトラバンスト聖王国からの侵攻に遭っている。その為、人間族に対する敵愾心は相当強くなっているだろうというのがグレッグの懸念だ。

 もともと他の亜人種族とは交流を持っているし、亜人種族に寛容な人間族が統治する貴族領や小国と接しているので、一概に人間族を敵視しているワケではないが、トラバンスト聖王国と交戦状態の現状では受け入れて貰えるか分からないのだと言う。


「それなら心配ないんじゃないかな?」


「何故だ、ターナス?」


「俺がいるからさ」


 俺は一見すれば人間と何ら変わりはない。ただし、魔族と同じく魔法が使え、尚且つ自分の体を変化させることも出来る。それに、おそらくは魔族よりも強いはずだ。

 いざとなれば皆を守る事は可能だし、絶対的に敵対しているトラバンストよりも危険という事は無いだろう。


「確かに、ターナスがいれば説得する事も難しくはないか……」


「アレーシアはどうだ? 魔族の国に行くのに不安はあるか?」


「不安は無い……とは言い切れませんが、トラバンストとの国境沿いでなければ、おそらくそれ程警戒しなくても大丈夫ではないかと思います。ユメラシアの魔王はイスターク侯国の侯爵と旧知の仲だと聞いた事がありますし、こちらが敵意を持たない限りは人間族だからと無闇に危害を加えて来る事はないと……思いたいです」


「大丈夫、心配するな。何があっても俺がアレーシアを守る」


「……なっ!」


 不安は無いと言いつつも、どこかで『そうあって欲しい』という思いも隠し切れないアレーシアを心配させまいと声を掛けたが、何故か真っ赤になって俯いてしまった。


「ターナスさま……」


 呼ばれて振り向くと、今度はハースが耳を垂れてシュンとしているじゃないか。

 これはアレーシアだけを贔屓してると思われてしまったのか⁉


「ハース、お前だって何があっても守るぞ。俺はお前が一番大事だからな」


「エヘヘ。ターナスさまぁ~」


 良かった。機嫌が直ったというか、笑顔になってくれた。

 このところハースはシーニャと一緒に居る事が多かったから、あまり構ってやる機会も無かったし、寂しい思いをさせてしまったか。


「ハース、私もハースを守る」


「シーニャ?」


 何故かシーニャがハースに向かって胸を張っているのだけど……これはどう解釈すればいいのだろう?


「シーニャ姉さまも! ありがとうございます~!」


「ハハハハ! 何だよシーニャ、ハースちゃんに『姉さま』って呼ばせてんのか?」


「……呼ばせてるんじゃない。呼んでくれる」


 グレッグに揶揄われたせいか、シーニャの顔がほんのりと赤くなってるが、やはりハースの方から『シーニャ姉さま』と呼んでいるのか。そこまで仲良くなってるとは思わなかった。

 ――とは言え、確かにシーニャならハースと同じ武器を使うから教師としても良いだろうし、そして何より頼りになる。


「シーニャ。万が一俺が至らなかったら、その時はハースの事を頼むよ」


「ん、任せて」


 自信に満ちた顔を俺に見せた後は、ハースに振り替えるとその凛々しい顔をフニャっと緩めてハースと二人笑いあっている。

 本当に、良いお姉さんが出来て良かったな、ハース。


 話を戻そうかと思い、何気にグレッグに目を向けたら、ハッと何かに気付いたようで慌てて喋り出した。


「パイル、俺はちゃんとパイルを守ってやるぞ」


「はぁ? 何言ってるんですか。当然でしょう。それより今後の計画を練りましょう」


「そ、そうだな。ちゃんと計画を練らないとな。じゃあターナス、話を戻そうか」


 羊獣人族の魔術師という、言っちゃ悪いが見た目的には強者には見えないパイルなんだが、意外と性格はキツイと言うか強いと言うか。見た目に反して怖いものなしなタイプなんだよなぁ。


「取り敢えず、ユメラシア経由でガットランドに向かうという案だが……これに関して何か懸念はあるかな?」


「ユメラシアとトラバンストとの国境沿いは紛争地帯となってますから、まずその辺は外さなければなりませんね。そうなると、ギルトア(ここ)からユメラシアの比較的安全と思われる地域の近くとなると――。南下してアトーレの街に向かうのが良いのかなぁ?」


「アトーレは確か、パイルの故郷が近くにあるんだったよな?」


「ええ、アトーレから休みなしで歩いて行ける距離ですけどね」


 なるほど、パイルにとっては土地勘のある場所なのか。


「そのアトーレと言う街は、どんな所なんだ?」


「ドワーフ族が多いので鍛冶師の街として知られてますが……反面、酒場街でもあるので昼夜を問わず煩い街ですよ。昼は金物を打つ音、夜は酒場の喧噪。私自身はあまり好きな街じゃないんですけどね」


 パイルの故郷に近いと言うから獣人族の街かと思ったが、ドワーフ族の街なのか。確かドワーフって大酒飲みなんだよな。そりゃ煩そうだ。


「パイルは酒が飲めないワケじゃないよな? 確かエール飲んでたし」


「エールは子供の頃から飲んでますからね。あれはお酒とは違います」


 そいうものか……。そりゃまぁハースだって飲んでたし、中世じゃエールもワインも水代わりだったそうだけどさ。


「そういえばターナスさんって、お酒飲まないんですか?」


「ああ、酒は飲まない。と言うか、苦手なんだよ。ウィスキーボンボン一個で顔が真っ赤になるくらいだからな」


「ウィスキーボンボンって、何ですか?」


 しまった! この世界だか、この時代にはウィスキーボンボンなんて無かったか。


「ああ~っと、チョコレートの中にウィスキーって酒を仕込んだお菓子の事なんだが、分かるかな?」


 パイルやシーニャ達が首を傾げているが、グレッグとアレーシアは知っていたみたいで「ああ、あれか!」と手を打っていた。

 だが――


「チョコレートもウィスキーも王族や貴族が使う高価な薬だと聞きましたけど……お菓子なんですか?」


「俺が知ってるチョコレートもウィスキーも薬の事だけどな。薬同士を混ぜてお菓子にするってのか?」


「いや、中を空洞にして丸く固めたチョコレートの中に、ウィスキーを入れるんだよ。まぁ、兎に角俺がいた世界では大人向けのお菓子だったって事さ」


 ふむ、まだチョコやウィスキーが薬用として使われてた時代と同じなのか。しかし、そうなると何とかすればチョコが手に入るって事だよな。チョコ好きの俺としては、何としてでも手に入れたくなったぞ。


「しかしまぁ、お菓子だと言われても味の想像が出来ねぇし、あまり食ってみたいとも思えないな」


 そう言って苦笑いするグレッグに、アレーシアもパイルも同様に苦笑している。

 そりゃ薬がお菓子になるって言われても分からないか。


 それにしても、また話が脱線してしまった。

 クランとして纏まったはずの俺達だが、何でこうも真面目に計画を練る事が出来ないのだろうか……。

 まるで旧知の仲の様に接する事が出来て、肩肘張らず本当に気兼ねなく話せるのは有難いんだけどな。


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これからも楽しんで頂けるよう頑張ります。

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