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第38話 情報収集

※誤字訂正しました。

 馬車は宿屋に預けたまま、俺達は歩いて冒険者ギルドに向かう。

 一応、グレッグが案内代わりに先頭に立っているが、先程行ったばかりの【素材買取所】の隣なので迷う事は無い。


【冒険者ギルド・ギルトア支部】

 ランデールの城塞にあったのが本部だったのかは知らないが、其処のギルドと比べてもなかなかに立派な建物だ。ランデール城塞の前に寄ったドルトアの街だって、ギルトアに比べれば多少規模は小さかったが、それでも冒険者ギルドは支部さえ無かったのにな。


 グレッグ達<宵闇の梟>の面々に続いてギルド内に入っていく。

 そのままグレッグに促されてフードコートの方に行き、空いてる六人掛けの丸テーブルの席を確保した。

 然程間を置かずにウェイトレスの様な女の子がやって来る。


「食事?」


「取り敢えず俺はエールを。皆はどうする?」


 グレッグの問いに俺以外は皆エールを注文する。確か中世ヨーロッパでもエールやワインが主流で、子供でもエールを飲んでいたって本に書いてあったよな。

 俺は酒が苦手なので、念のため聞いてみた。


「エールやワイン以外に何かあるかな?」


「シードルならあるけど」


「じゃあそれを」


 シードル……確かリンゴ酒だったよな。来たら魔法でアルコールを飛ばしちまえばリンゴジュースになるだろ。


 然程間を置かずに飲み物が運ばれてくると、軽くそれを口にしてからグレッグが発言する。


「取り敢えず俺の知ってる冒険者が何人かいる。そいつ等にガットランド王国の近況を聞いてみようと思う」


「私はギルド内を周ってみる」


 そう言ったのはシーニャだった。普段口数の少ないシーニャなので俺とアレーシアは少し驚いて彼女の方を見てしまったが、それに気付いたグレッグが理由を説明してくれた。


「シーニャの本職は斥候(スカウト)だからな。ウチでは探索(シーカー)も兼ねてるが、仕事前の情報収集にはシーニャに任せる事が多い」


 ほほう……と、シーニャの方を見直すと、無表情だが親指を立てて決めている。意外とユーモラスな面もあるんだな。


「というワケだから、まずは俺とシーニャが動くから皆は此処で待機しててくれ」


 ギルド内での情報収集はグレッグとシーニャに任せて、残った俺達はフードコートで時間潰しをするしかなかった……という事もなかった。

 そう、パイルだ。ここぞとばかりにパイルの質問攻めが始まったのだ。


「魔術による攻撃って、火炎弾(ファイヤーボール)とか氷結槍(アイシクルスピア)が主になるんですけど、魔法ではどんな攻撃を行うのが多いんですか?」


「俺は空気の斬撃を飛ばす事がある。名前は特に無い」


「空気の斬撃……ですか?」


「そうだ。要は風圧だよ。腕を横に思いっきり振ると、僅かながら風が起こるだろ? その風を刃物に見立てて相手に飛ばすのさ。まぁ、強い風を小さく圧縮して刃物として飛ばす……う~ん、言ってる事が分かるかな?」


「ええ、何となくですが分かります。仮にそれは魔術で再現可能でしょうか?」


「火炎弾が打てるなら、出来るんじゃないかな。空気を圧縮して、その圧縮した空気を刃が外側に着いた草刈り鎌にして飛ばせばいいんだし」


「ふむふむ、なるほど。……で、それの利点は何でしょうか?」


「利点ねぇ……。俺が使った時は、こっちに向かって来る騎乗した騎士を馬の首ごとぶった斬ったけどな。もし、殺さずに動きを止めるだけなら、足に向かって飛ばせば動きを止められるかな。因みに、火炎弾や氷結槍は一度に何発くらい打てるんだ?」


「私はまだ、一度に一発ですよ。連続して打ち込む事も出来ますが、詠唱が長くなるので敵に見つかる前じゃないと難しいです」


「それなら今度、空気の斬撃の練習してみればいいさ。鋭い刃を持った風を飛ばすイメージでやってみれば出来そうじゃないか? 名前は……そうだな『虚空斬(ブラインドスラッシュ)』とかどうだ?」


「いいですね~! それ、やってみます!」


 なんだか技に名前を付けるのって、男の子の夢だよね。決して厨二じゃないよ。

 アレーシア、その半目で見るのヤメテね。ハースを見てごらん、大きく目を見開いてキラキラしてるよ?


 ま、まぁ兎も角として。こんな具合で時間を潰していると、知り合いの冒険者に話を聞きに行ったグレッグが先に戻ってきた。


ギルトア(この街)でも亜人種族が何人か消息不明になってるそうだ。俺が聞いた限りでは兎獣人族が二人とドワーフ族が三人。ドワーフはランデール城塞の時と同じで、夜明け前に姿を消して、獣人族は人間族の冒険者に荷物持ち(ポーター)として雇われたらしいが、どうもその人間族の冒険者ってのが胡散臭い連中らしくてな。亜人種族のポーターを雇ってクエストに出ては、「ポーターは途中で死んだ」と言って帰って来る事が何度かあるって話だ」


「ガットランドかガーネリアス教の関係者だな」


「ああ、もしくはその何方かに雇われた可能性もあるが」


「まだこの街にいるなら捕らえて聞き出そう」


 グレッグの話を聞いていると、いつの間にかシーニャも戻っていた。


「人間族三人組のパーティーに雇われたポーターの亜人種族が死んでる。兎獣人族二人、猫獣人族二人。兎獣人族一人はギルドの紹介だけど、他はギルドの紹介じゃなく路上で直接声掛けて雇ってたって」


 グレッグの話と合致する。

 そのままグレッグがシーニャに詳細を聞き出す。


「シーニャはその人間族のパーティーの行方は聞けたか?」


「今朝も獣人族のポーターに声掛けて出て行ったって。猫獣人族亜種虎族だって」


「何処へ行ったか分かるか?」


「クエストはシトラウス渓谷にある薬草の採取。シトラウス渓谷は聖王国に近いから、普通は亜人種族は近づかない」


「なのにポーターとして付いて行ったのか?」


「ポーターに嘘吐いたか、ポーターがお金が必要か、逃げる自信があるか……」


「何れにせよマズイ案件だな。ターナスよ、どう見る?」


「十中八九、その冒険者はガットランドかガーネリアス教会と係ってるな。それにしても出て行ったのが今朝か……その渓谷まではどの位時間が掛かる?」


「此処からシトラウス渓谷までは半日掛かる。薬草採取のクエストであれば帰還は明日になるが、目的が獣人族の引き渡しであれば……今からでは間に合わないだろう」


 間に合わないというグレッグの言葉に、皆口を噤み思い空気が流れる。

 ふと、気になった事を聞いてみた。


「奴等は帰って来ると思うか?」


「と、言うと?」


「そんなに何度もポーターだけ死んだと言っていれば、ギルドへの印象も悪くなるだろうし、何か裏があると怪しまれるんじゃないか? クエストの報酬が目的なら帰って来るだろうが、もし亜人種族の拉致と引き渡しだけが目的なら、立場が危うくなるギルドに戻るより、そのままガットランドに行く方が安全じゃないかな……と思うんだ」


「ふむ。もともとガットランドの人間だとしても、こっちで雇われたにしても、ギルトアに戻れば身辺調査され兼ねない。ならばそのまま……か」


「可能性としての話だけどな」


「いや、大いにあり得るな。そうだ! ちょっと待っててくれ」


 何か思い付いたのか、グレッグはそう言って急に席を立つと、依頼受注カウンターの方へ向かい、カウンターの職員と何やら話をしている。

 そして、すぐに戻ってきた。


「連中がこれまでに受けた依頼は今回のを含めて四件。ギルドでポーターの手配を頼んだのは一度。それ以外は街頭で直接ポーターと接触して雇っていたと、ギルドは他の冒険者から知らされたそうだ。それで今回戻ったら調査部が動く事になったそうだが……」


「戻って来ないだろうな」


「ああ、獣人族の方はこれで決まりだな。あとはドワーフの方か」


「ドワーフ族はギルドに二等級冒険者指定で警護の依頼出したって」


 グレッグがドワーフの方の問題を口にすると、既にシーニャはドワーフ側の情報も仕入れていた。


「そうなると、やはり獣人族の消息を追うべきか?」


「今から追っても間に合わないが、ランデールで拉致した亜人種族はトラバンスト経由でガットランドに連れて行かれると考えてほぼ間違いだろう。ただ……俺達がトラバンストに行くのは危険だ」


 そうだ。グレッグに言われるまでもなく、トラバンスト聖王国は亜人種族を迫害している国なのだから、獣人族と一緒にいる俺達が行くのは危険過ぎる。

 俺が認識阻害や隠匿の魔法を掛ければ、ハース達の気配を消す事は可能だろう。しかしそれも絶対に安全だとは限らない。

 やむを得ず、俺達は今後の行動をどうすべきか、改めて話し合う事となった。


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