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第34話 苦手ですが、何か?

 ランデールの城塞内で起こっていた亜人種族の拉致事件と、それに絡んだ冒険者殺害事件の真犯人を始末する事が出来た。

 結局、亜人種族を攫っている理由までは知ることが出来なかったが、その主犯がガットランド王国内にあるガーネリアス教会の司祭である事は分かった。

 始末した連中の言う事が正しければ、城塞内では取り敢えず件の問題は落ち着くだろう。だが、まだ城塞外では他のグループが跋扈しているようなので、それらも始末しておきたいところだ。


 幸いにして、反人間中心主義であるグレッグがリーダーである冒険者パーティー<宵闇の梟>が仲間として同行してくれる事になった。

 尤も、志を同じとする――などと言う大義名分ではなく、パーティーメンバーの一人、羊獣人族の魔術師パイルが「魔術と魔法について勉強したい」という理由で俺達に同行したい旨をグレッグに訴えたからなのだが……。

 それでも、今後の事を考えれば頼れる仲間が増えるのは有難い。


「さて、まだ他にガーネリアス教会の連中がランデール領内にいるとは言っても、城塞内と違って探す範囲が広すぎるワケだが……どうするのが得策だと思う? グレッグ」


「そうだな。亜人種族がある程度多く出入りしている街に行って、城塞内と同じ様な事件が起きていないか聞いてみるしかなさそうだが……とは言え、闇雲に動いても埒が明かないだろうしなぁ」


 俺の問いにグレッグは一応答えてはくれたが、そう言いながらも、もっと良い案が無いものかと、まだ思案している。

 すると――


「ランデールからガットランドへ亜人種族を連れて行くには、必ずトラバンスト聖王国かユメラシア魔王国を経由する必要があります。ですが、攫った亜人種族を連れて魔族国であるユメラシアに行くのは危険過ぎますから、おそらくランデール経由で戻ると思うんですよ」


 アレーシアが連中の動きに関して思う所を話す。

 それにパイルが続けた。


「それでしたら、此処からトラバンスト聖王国の境界に向かう街道を進んではどうでしょうか? 街道沿いの村や街で情報を仕入れるという手もあると思います」


「ふむ、闇雲に動くよりはその方が良いか。ターナスはどうだ?」


「うむ、良いんじゃないか。まぁ、正直言えば俺には土地勘が無いからな。何処に行くかは皆に任せるしかない」


 苦笑いして正直に話すと、皆も納得してくれた様だ。

 魔王国……魔族の国ってのも興味あるけど、確かトラバンストの侵攻に遭ってるとか言ってたよな。であれば、何れは行く事になるだろう。


「それじゃあ、馬車もあるしこのまま進んじまうか? 今から発てば次は……確かギルトアの街だったな。日が一番高くなる位には森を抜けられるだろう」


 グレッグよれば、城塞を出て暫く街道を進むと「ジスタークの森」と呼ばれる場所があるそうで、その森は野獣や魔獣が出るので冒険者にとっては路銀稼ぎに丁度いい場所なのだと言う。

 その話し振りから想像するに、森を抜けるのに半日程度掛かるようだ。


 アレーシアとパイルも路銀稼ぎをするなら丁度いいと、グレッグの提案に同調した。因みにシーニャとハースはお互いに何か話し合っている様で、俺達の会話には全く入って来なかった。

 同じ種族同士だから波長が合うのかな?





 ワイニー山から街道に出て、ジスタークの森を目指し出発する。

 御者はシーニャとハースが買って出たのだけど、どうやらシーニャがハースを気に入ったらしい。グレッグが言うには「お姉さん風を吹かせたいのだろう」との事だが、同時にアレーシアも「ハースはお姉さんが出来たみたいで嬉しいのでは?」と言う。

 

 ガットランドの亜人種族誘拐犯が持っていた馬車には、水や食料がそこそこ積み込まれていたので、連中は人目に付かない様に野宿でもしながらガットランドへ戻るつもりだったのだろう。

 逆に、俺達は道中の街や村を転々とするつもりなので、これらは非常食として保存しておく事にした。


「そういえば、森には野獣や魔獣が出ると言ってたな。野獣と魔獣の違いってどういうものなんだ?」


「そうだな……野獣ってのは巨躯猪(ギカントエーバー)双剣猫(サーベルキャット)のような猛獣の類なんだが、魔獣ってのは猛獣とは限らない。例えば、一角鼠(ホーンラット)一角兎(ホーンラビット)なんかがそうだな。見た目はただの鼠や兎に角があるだけだ。ただし見た目に反して攻撃性は強いけどな」


 グレッグに野獣と魔獣の違いを訊ねるが、頭に角が生えていれば魔獣って事なのだろうか……と思っていたら、パイルが話を紡いできた。


「魔獣は体内に【魔核】という物を持っていて、これが狂暴性を生み出す根源だと言われてるんです。ジスタークの森で危険な魔獣となると森林狼(ヴァルトウルフ)大黒熊(シュヴァルツベア)ですかね。見た目は野獣とあまり変わらない様に見えますが、魔力を宿しているので攻撃性や生命力が強いのが特徴です。魔物なら大百足(スコロペンドラ)がいますが……」


「スコロペンドラ?」


「体長が大木ほどもある百足です。顎で噛まれたら鎧を着てても真っ二つにされちゃいますし、噛まれなくても傷ついただけで、そこから毒が回って死んでしまいます。危険度は大黒熊よりも高いかもです」


 パイルの話を聞いていたら背中がゾクッとして鳥肌が立ってきちまった。何しろ俺は百足とかゲジゲジってのが苦手なんだから。

 しかし……魔物かぁ。そういうのもいるんだな。


「でも大百足には氷結魔術が効きますから。ターナスさんなら大丈夫ですよ」


「ああ、肝に銘じておく……」


 あの苦笑いは、多分パイルにはバレたな。


「因みにですけど、大百足の外殻は結構良い値で買い取って貰えるんですよ。もし出てきたら傷付けないで即凍らせて下さいね」


「……了解した」


 渋々返答すると、アレーシアがニヤニヤしているのが横目で見て取れた。

 コイツめ! 百足が出たらまずアレーシア(おまえ)を前に立たせるぞ! 


「ターナスよ、因みにだがパイルは大蛞蝓(ギムノーガス)が苦手なんだぜ」


「ちょっ、グレッグ! 何そんなことバラしてるんですか!」


「いや、ちょっと待て。俺は百足もだが蛞蝓の方がもっと苦手だ。もし出てきたらマジで他の誰かが何とかしてくれ!」


「ハハハハハハ! 死神も蛞蝓には弱かったか。ハハハ」「フフフ……」


 グレッグとアレーシアは二人揃って笑いやがるが、俺とパイルは一層鳥肌が立ってしまった。本当に勘弁してほしい……トホホ。


「ま、冗談は兎も角として。大黒熊と大百足には要注意って事だ。取り敢えずは森林狼か赤鹿(レッドディア)あたりを狙うのがいいだろう。路銀稼ぎとは言えあまり時間も掛けたくないしな」


 グレッグの言葉にパイルもアレーシアも頷き同意する。

 本来の目的はガットランドからの侵入者を探し出す事だからな。時間が掛かればその間にガットランドへ戻られてしまう。 

 まぁ、どの道ガットランドへは行く事になりそうだけどな。


 そうこうしているうちに、馬車はジスタークの森が見える所まで来ていた。


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