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第3話 一撃です

「おい、そこの獣人の女の子! 怪我は無いか?」


 前方の甲冑男等に注意しつつ少し振り返って、後ろで唖然としている獣人の女の子に声を掛けてみる。


「……はい、大丈夫です」


「よし!」


 何が「よし」なのか分からないが、一応無事を確認したという事で自分で納得し安心した。

 再び前を向き、剣を構えて警戒態勢を取っている甲冑男たちと対峙した俺は、こいつ等をどうするべきなのか数秒考え、腹を決めた。


「それじゃまぁ、俺はこの獣人たちを助ける事にしたから、お前等はぶっ倒す。いいな?」


 ラダリンスさんの言う事が正しければ、獣人はこの甲冑男たちに追われ、そして理不尽な理由で捕らわれようとしている状況なのだ。

 それならば俺は『死神』『人間にとっての悪魔』として、こいつらを排除するのが役目って事だろう。


 現世では傍若無人の輩に対して憤りを感じていても、それをどうこうする力なんて無かった。

 でも今は違う。想像した力を具現化する能力『最強種の悪魔』が俺にはある……はず。


 ――想像する。

 目の前の甲冑男たちを倒す(すべ)は何か。

 剣を振り翳し、或いは剣を斜に構え、こちらに突進してくる5人の甲冑男。

 思い浮かんだのは――


「おらぁぁぁぁぁあッ!」


 右手をチョップの形にして、そのまま腕を勢いよく水平に振り抜いた。

 勿論、視線と狙いは甲冑男たちだ。


 そして――

 俺が水平に振った腕から、鋭利な空気の斬撃が飛んでいく。

 勿論ソレは、そうイメージして創り出した――云わば “魔法の斬撃” だ。


 甲冑男を乗せ勢いよく走っていた馬は、突然首を跳ねられて前のめりに倒れてしまう。

 勿論、騎乗していた甲冑男たちも無事ではいられない。

 切られた馬の首と同一線上にあった甲冑男の胴体がスッパリと分割し、上半身は後方へドサッと落ち、下半身は騎乗したまま馬と一緒に地面へ雪崩れ込む。

 あっという間、本当に一瞬で片が付いてしまった。


 スゲェ、マジか。


 自分で想像して具現化したものだけど、想像以上に凄まじいな。それと―― ここまでのグロさは想像してなかった。

 何しろ首がちょん切れた馬と、胴体が真っ二つに切られた人間の死体が、真っ赤な血を“色々なモノ”をぶち撒けて転がってるんだもの……。

 とはいえ、自分で人を殺してグロい状態を作ったというのに、何の罪悪感も無い。これもある意味、能力のせいなのだろうか。

 それに、自分の手を見ても特に血が付着しているわけでもないし、刀で切ったとか棒で殴ったなどという感触も残っていない。ただただ、何も実感が無いまま人を殺したという事実だけがそこにある――という、まるで他人事のような気分だ。


 そうだ……と、獣人のことが気になった。


「獣人……」


「はひっ‼」


 獣人の女の子が凄いビビってるような気がするが、まぁ一瞬で人間を5人も殺しちまってるんだから当然か。


「大丈夫かい?」


「は、はい。お、お、お陰様で……だ、大丈夫、で、です」


「怖がらないでいいよ。俺は獣人に危害を加えたりしないから」


「は、はい……」


 良く見れば髪と耳は猫のソレのようだ。おどおどしている姿からも、人間なら十代前半くらいに見えるが、この世界じゃこんな子供でも馬車の御者とかするのだろうか。


「あ、あのぉ、助けていただき、ありがとうございます」


 かなり恐縮しているみたいだけど、どうやら俺のことを味方だと思ってくれたようだな。


「礼はいい。それより他の人はいないのかい?」


「あ、います。みんな無事です!」


 猫獣人の女の子がそう言うと、横転した馬車の陰から恐る恐る数人の獣人が出てきた。

 皆彼女と同じように、パッと見は人間だけど、如何にもな猫耳や尻尾があるところをを見ると、やはり猫の獣人のようだ。


 その中の一人、やや年配だと思われる男が挨拶してきた。


「……お助けくださり、ありがとうございました。私はセサンのメナルと申します。これらの代表をしております」


「私はターナスといいます。それにしても、なんでアイツ等に追われていたんですか?」


「おそらく人間族の亜人種狩りでしょう。我々はセサンからアダルへ向かっているところでしたが、運悪く聖王国騎士団に見つかってしまい追われていました」


 亜人種狩り……あるんだ。

 セサンとかアダルとかってのも国なのか街なのか分かんないしなぁ。


「ターナス様は、魔族の方でしょうか?」


「いや、魔族ではありません……が、虐げられている者の味方と言うか……」


「魔族ではない、と? では人間族の魔術師でしたか。そのような方が我々を助て下さるとは」


 どうするかな。とりあえずは様子見して目立たないようにしようか。

 どうせ何れは事が大きくなって嫌でも目立ってしまうだろうけど、今はまだ目立たない方が良いような気がする。


「ああ……と、今はまだ何も言えないというか……ただ、私はあなた方の味方である事は間違いありません。何れは分かる事だと思いますが、今はまだ余り詮索しないで頂けるとありがたい」


「は、ははっ。決して詮索など致しません。どうかお許しを!」


 いやいや「お許しを」って何だよ。怒ってねぇよ。

 ヤバイ、却って脅しになっちゃったのかコレ?


「大丈夫、別に怒ってないので謝らないでください。それよりも皆さん、怪我は無いですか? 派手に横転してたようだけど」


「ご心配ありがとうございます。我々は機敏な動きが取り柄なので、この通り何ともありませんので」


 トントンと自分の腕や足を叩いて、丈夫さをアピールしているようだ。

 まあ笑ってる事だし、無事で何より。

 他の猫獣人さんたちも、それぞれ服に付いた土埃を叩き落としてるが、特に痛がっている様子も、怪我を気にしてる様子もない。

 猫獣人も動物の猫と同じく、高い所から落ちても一回転して着地なんてことが出来るのかな。

 なんて思っちゃったりするわけで。


お読み下さりありがとうございます。

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