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第26話 共同戦線

 ランデール入り早々に、情報収集の為冒険者ギルドへ赴いた俺達は、グレッグという冒険者から話を聞くことが出来た。


「まだ未確認ではあるんだが、ガットランド王国が『亜人種族を大量に集めている』との噂がある。何でもトラバンスト聖王国に亜人種族の融通を断られたのが理由らしいが、そもそも何で急に亜人種族を必要としているかが分からなくてな」


「トラバンストが断った理由も?」


「ああ、それもまだ分からねぇ」


「でもガットランド訛りの人物がドワーフの誘拐に係わっていたのなら、行方不明の亜人種族はガットランドに運ばれた確率が高いワケね」


「おそらくな」


 グレッグは確証が無くて動けないもどかしさ(・・・・・)にうんざりした様子だ。


「亜人種が狙われる時の共通点はあるか?」


「共通点……かぁ。パイル、何か知ってるか?」


「ああ……ええっと……共通してるかは分からないけど、殺害された人達は夜明け前に襲われてるわ。宿の主に『夜明けと同時に森の中に入りたいから』って理由で、まだ暗いうちに宿を後にしたって話だから」


「行方不明の亜人種族も、夜明け前に攫われた可能性がある……ってか?」


「多分。もともとドワーフは早起きなのよ。夜明け前から仕事の準備を始めるから、もし拉致するとしたら昼間より気付かれにくいはず。ただ獣人族の方は分からないけど……」


「もし――」


 俺はちょっと気になった事を訊ねてみた。


「もし、次に同様の事件が起こるとしたら……また夜明け前に起こる可能性は考えられるかな?」


「私は考えられると思います。でも、だったらどうするんだ? ってなりますけど……」


 パイルが即座に返答するが――


「亜人種族を囮に使うのはダメだぞ?」


 俺が何かを言う前にグレッグが釘を刺してきた。

 そりゃ俺だってグレッグに言われるまでもなく、亜人種族を囮に使おうなんて思ってないっての。


「分かってる。囮になるのは俺達だ」


「ほう、俺達が囮に? どうやって?」


「偽装するのさ」


 つまりはこうだ。

 俺とアレーシアで獣人のフリをして夜半過ぎから未明に掛けて出歩く。

 グレッグにはそれを張っていてもらう。

 犯行集団が現れたら、いったん捕まった振りをして油断させた上で捕縛だ。


「なるほど、それは面白そうだな。――と言うか、俺が囮になってもいいんだぜ? あんたは冒険者じゃないんだろ? まぁ俺より強いんだろうけどな」


 グレッグの言葉を聞いて、パイルとシーニャが驚いて俺を凝視してる。

 というか、グレッグは洞察力に優れてるのか? それとも何かそういうのが分かる能力を持ってたりして。


「ああ、俺は冒険者登録してないが、強さで言ったら……まぁ期待していい、とだけ言っておく。それと、グレッグが囮で俺が張っていても良いんだが……そうなると俺としてはアレーシアが心配でな」


「ちょ……っ、何言ってんのよ⁉」


 アレーシアが真っ赤な顔をして動揺してるが、別に俺はそういう(・・・・)気持ちで言ったワケじゃないぞ? 

 勿論、女であるアレーシアに何かあったら心配と言う意味では本当だけど。


「ハッハッハッ! いいぜ、俺がお前達を張ってやるから問題ない。アレーシアもその方が安心だろう」


 何が可笑しいのか超絶に笑ってるグレッグだが、あんたも勘違いしてんじゃねぇっての!


「あのぉ……よろしいですか?」


 パイルがそっと手を挙げた。


「私達だって囮くらい出来ますよ? グレッグなら私やシーニャの能力を分かってるでしょ?」


「あの……その……私も、オトリ? 出来ると思いますけど」


 ハースも慌てて発言してるけど……囮の意味が分かってないのでは?


「ダ――」「ダメだ」


 俺が言う前にグレッグが二人の進言を拒否して、理由を説明する。


「こればかりはパイルもシーニャもダメだ。あとハースちゃんも我慢してくれ。既に犬獣人族の冒険者も殺されてるんだ。確か殺された冒険者は全員三等級だったはず。それに、相手がどんな手を使っているのか分からない以上、お前たちを囮として危険に晒すワケにはいかない」


 パイルとハースは落胆した様子で項垂れているが、シーニャは特に何の感情も露わにしてないようだ。まぁそういう性格なのかもしれん。


「そうガッカリするな。パイルもハースちゃんも俺と一緒に二人を張る役割だ。シーニャもそれで良いな?」


 コクリ――と、黙って頷くシーニャであった。やっぱり。


「よし、じゃあ実行組はターナスとアレーシア。俺達張り組は状況を見極めて加勢って具合で決まりと」


「それでだ。獣人に偽装するのに尻尾が欲しいんだが……この辺りで長い尻尾を持つ野獣が狩れる場所はあるか?」


「長い尻尾の野獣かぁ……。それなら双剣猫(サーベルキャット)が良いか」


「サーバルキャット?」


狩猟(サーバル)じゃない、双剣猫(サーベルキャット)だ。長い牙を持つ大型の野獣だよ」


 サーバルキャットでもサーベルタイガーでも無く、サーベルキャットか。

 大型と言うくらいだから、サーベルタイガーに近いのだろうな。


「生息地は近いのか?」


「歩いてでも行けるが、それだと今日中に帰って来れるか分からん。行くなら馬車を借りた方が早い」


「分かった。アレーシアはその場所って知ってるか?」


「いいえ、知りません。すみません」


「いや謝る必要はないって。グレッグ、スマンが案内してくれ」


「ああ、任せろ」


 いつ次の事件が起こるか分からないからあまり悠長に時間を掛けたくないので、俺達はフードコートで肉野菜巻きを買って食べながら準備に取り掛かった。





 馬車はパイルが手配をしてくれる事になり、その間に俺達は双剣猫狩りに必要な物を買い集める事になった。

 必要な物――と言っても、要は携行食料と飲み物が必須なくらいで、後は狩った素材を纏めるためのロープを買っただけなんだけど、他の冒険者との買い物ってことで少しだけ知見も増える。

 グレッグ曰く「弓使いがいると矢の補充が必要になるんだ」そうだ。要は普段は最低限の矢しか持たず、仕事に応じて買い足すのだと言う。

 生憎というか幸いというか、ウチにもアチラにも弓使いはいないので武具屋に行く用はなかった。


 やはりグレッグは剣が武器の剣士。シーニャは鉤爪グローブ(クロー)の使い手で、パイルは魔術師なんだそう。

 気になって「獣人族でも魔術が使えるのか?」と聞いたら、「魔術師ってのは勉強すれば誰でもなれる職業だからな」と言う。だが、そもそも“魔術を覚えるには金が掛かる”のだそうで、やはりある程度は裕福な家庭じゃないと難しいらしい。

 という事は、パイルはそれなりに余裕のある暮らしが出来てたはず……。

 まぁ、こういう事はあまり詮索しないのがマナーだよな。


 パイルとの待ち合わせ場所に行くと、既に馬車を用意して待っていた。


「幌無しですが今回はコレで問題ないと思います」


「ああ、十分だ。シーニャ、御者を頼む」


「了解」


 シーニャは御者が出来るのか。猫獣人族だからって事は無いよな。

 そもそもハースだって父親の代わりにやってただけだし。


 馬車に乗り込み、一路目的地を目指し城塞を出発した。

 現在時刻は午前11時。何とか日暮れまでには戻りたいものだ。


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