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第143話 説明会

 トラバンスト聖王国に対してガットランド王国への内政干渉と軍事侵攻未遂への謝罪を求めたが、トラバンストが非を認めることなどあり得ず、当然の如く戦争状態となった。


 トラバンストは着々と戦争準備を進めているはず。否、先の通告からして既に準備は整っているのかもしれない。

 とはいえ、ガットランドはまだ新体制になったばかりだし、主戦力だったかもしれない勇者連中は俺たちが……()っちゃいました。

 まぁ、あんな連中じゃ戦力として役立ったかどうかワカランけどな。


「タナトリアス公、我々は如何様にすればよいのでしょうか?」


 ガルメリア宰相を筆頭に、軍事及び外交で関わる者たちが集まり、対トラバンスト聖王国に向けた会議が行われていた。

 まぁ、これは会議というよりも、現存する戦力ではトラバンストに対抗するには心許ないガットランド王国の最適手段、グレッグ発案「無敵部隊編成」についての説明会って感じだな。


「まずは指揮を執れる者を数名抜擢し、その下に規律正しく行動出来る騎士で中隊規模のグループを幾つか作ったらどうかと思ってる」


「騎士は皆、規律には厳しく正しい者ばかりです」


「まぁ、騎士ってのはそういうモンだろうけどな。これから作ろうとしてる無敵部隊ってのは、傷つくことすらない不死身の体を持つことになる。ただ、そうなると良からぬ事を考える者が出る可能性もある。だから同時に“規則に背いたら即死する”魔法を掛ける。その意味が分かるかな?」


「規則に背いたら即死……ですか? それはいったいどのような事なのでしょうか?」


「要は――、行動中に一般市民に対して暴行や略奪などの騎士道に反する行為をした場合、その場で即死。まぁそうだな、頭が破裂するとか首が飛ぶって感じの魔法を掛けるって事だ」


「そ……そのような魔法が……?」


「俺はこの国に来る前、ガーネリアス教の連中に似たような魔法を掛けた。“死神タナトリアスが人間中心主義を殲滅する”その事を国の偉いヤツに伝えろ――ってな。そして、万が一それ以外の言葉を喋ったら体が燃え上がるっていう魔法を掛けたワケだ。結果的に、俺のその言葉はこの国には伝わらなかった。という事はつまり――」


「……死んだ……という事でしょうか?」


「多分な」


 場がざわつくが<不気味な刈手(グリムリーパー)>の面々だけが無反応でいる。それを見た役人たちも嘘ではないと感じたようで、殆どの連中の顔が青ざめていた。


「ユメラシアの魔王国軍にも、その――無敵になる魔法――ですか? それを掛けたと仰っていましたが……」


「ああ。ユメラシアに侵攻してきたトラバンストの軍に対抗するためにな。確かあの時は魔法による効果と、命令に背いた時には必ず死ぬって事を説明した上で、志願してきた兵士に……だったっけ?」


 隣のグレッグに確認すると、「ああ」と呟き頷いた。


「そういえば、ユメラシアとの国境付近でトラバンストの軍が崩壊したとの話を耳にしましたが、まさか()()が……?」


「あっ、その話、詳しく聞かせてくれ」


 そういえば、ユメラシアを出て以降は、侵攻してきたトラバンストへの反撃部隊の情報を何も知らないままだったよな。

 そんなワケで、ガットランド王国として入手している彼らの情報を聞いてみた。


「トラバンスト聖王国は凡そ1万3千の兵で国境にある魔王国側のケットルス地方へ侵攻。当初は聖王国軍の魔術師による魔法阻害術で魔王軍の魔法を封じ、その隙に騎馬兵が突入し攻撃をする――という方法で戦局を優位に進めていたそうですが、魔王軍に少数の増援部隊が到着するや否や……たちまち騎馬兵が全滅。こちらが得た情報では、増援に来た魔王軍の兵士が、一人当たり百人以上の聖王国兵を殺害したとありました。あまりにも突拍子もない話なので噂や誤情報どころか、敢えて魔王軍が大袈裟な情報を流して混乱に陥れようとしていたのではないかと思った次第です。しかし、我が国の監視官が聖王国側から視察に訪れた際、交戦のあった場所でおびただしい数の亡骸を確認したそうで……」


「魔王国側の被害は?」


「……情報では交戦初期に数千の兵士と民間人に死傷者が出て、ケットルス地方では複数の街が崩壊したとあります」


「結果として、勝敗はどう見る?」


「明らかにユメラシアの勝利でしょう。確かに魔王国軍も甚大な被害を受けていますが、それよりも聖王国軍があれほどまでに敗退するのは珍しいですし、聖王国側も正式に撤退を認めていますから」


 やはりあの選択は正しかったな。


「これで答えが出たな。俺が無敵になる魔法を掛けた魔王軍の兵士は七十名程度だった。その数だけで一万以上のトラバンスト軍を撤退させるだけの力があったワケだ。ならば数百からの兵士がいれば、トラバンストに勝てると思わないか?」


 納得したのか、驚きと勝利への自信が出たか知らんが、各々が紅潮した顔を見合わせて手を取り合っている。もう勝った気なのだろう。


「それじゃあ、説明はこれで終わるとして、無敵部隊となる兵士の選別の方はそっちで頼むぞ」


 俺が言うと、ガルメリア宰相が騎士団の総長とかいう者に何かを伝えていた。おそらく兵士の選別に関しての事だろうから、あとは彼らに任せるとしよう。





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