第140話 後始末
※一部敬称表現を修正しました。
ザーラン達が城内にいる反乱貴族側の騎士や傭兵達の対処に向かうと、嬉々としてパイルが追加尋問を始めた。
どれくらい意味があるのかワカランが、もうパイルのやりたいようにやらせておくことにした。時折小さな悲鳴が聞こえるのも無視して俺は窓の外を眺めていた。
小一時間も経った頃に、ケルツが一人で戻ってきた。
「タナトリアス公、城内の掌握は完了しました」
「随分と早かったな」
「ハハハ、タナトリアス公の魔法のおかげですよ」
頭を掻きながら笑うケルツだが、なかなか清々しい顔をしている。とても敵対する騎士や傭兵と戦ってきたようには見えないが……『絶対的身体防護』で無敵状態なんだからそりゃそうか。
「それで、他の二人はどうした?」
「降伏した者を一カ所に纏めて拘束しています。降伏したのは18名、それ以外の抵抗した者達についてはその場で処分としました」
「18人か……多いのか少ないのか?」
「まぁ、少ないとみて宜しいかと。意外と侯爵達に忠義を尽くす者が多かったようです。降伏したのはやむを得ず追従した傭兵が殆どですから」
「内訳は?」
「そうですね、騎士が3名、傭兵が15名です」
騎士がたった3人とは……。まぁ、もともと人間中心主義を是としてきたのだから当然と言えば当然か。
逆に、傭兵たちはそれほど人間中心主義に傾向していないという事なのだろうか。
そこら辺の事情をケルツに聞いてみると、やはり宗教的にも然程熱心なガーネリアス教徒というワケでもなく、亜人種族とも殆ど関わる事がない連中なので亜人種族に対する差別意識も薄く、参加したのはあくまでも報酬のため……という事らしい。
傭兵達は王族に敵意があったわけでも、ジェネリアス等に忠誠があるわけでもない。であればある程度の温情は見込めるだろう。
騎士の方については、投降した理由は単に勝てる気がしない。死にたくない。ただそれだけのようだ。となれば……あとはシェレルなりローデンサスなりが判断を下すだろう。
呪縛で動けなくしている貴族と聖王国の連中を一纏めにし、転移してザーランとナッスルに合流する。
「ご苦労だったな」
ザーランに声をかけた後、捕らえられた連中に目を向けると、突然目の前に現れた俺達を見て一様に目を丸しポカンと口を開けて唖然としていた。
「タナトリアス公の魔法のおかげで楽に事が済みました。正直、自分が強くなった気になってしまいます」
「死なないどころか、怪我を負う心配すら必要ないのですらかね。正直これが敵対する側も同じだったとしたら恐ろしいですが、逆にこの気持ちをヤツラに与えたと思うと爽快ですな」
「まったく、あまり調子に乗るなよ。あくまでも今はタナトリアス公の魔法のおかげでいられるんだからな」
ザーランは頭を掻きながら苦笑しているが、対照的にナッスルは『絶対的身体防護』の効果を満喫したようで、腕を組んでケラケラと笑っている。
そんな二人にケルツは些か呆れていた。
「兎に角まあ、これで連中を捕らえる事が出来たんだ。後はコイツ等を王都に連れ帰って審判に任せるとしよう」
チラリと騎士と傭兵たちを見ると、彼らは捕縛されて身動き一つ出来ずにいる侯爵とトラバンストの連中に目を向けていた。
その表情からは侯爵や男爵達にある種の怒りの感情を向けているようにも窺えるが、ある程度強制はあったにしても金のために反乱に加わったのも事実なんだから、多少の罰はあると思えよ。
ザーランたち3人に捕らえた者全員を縄で縛らせた後、全員で王城に転移魔法で帰る事にした。