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第138話 反則技

※一部敬称表現を修正しました。

 突入とは言ってもなんてことはない。

 まず廊下にいる警備兵に対して――というよりも、一直線上に『沈黙(サイレンス)』の魔法を飛ばして無音状態にし、続けて『呪縛』で拘束する。一切音を立てずに警備兵を無力化するにはこのやり方が手っ取り早い。

 音を遮断しているので何が起こっても応接室の中にいる連中には感づかれない。

 そして、パイルが『虚空斬(ブラインドスラッシュ)』で警備兵の体を切断して終わり……だったのだが、これにはザーラン達三人がちょっと引いてた。


「まぁ、騎士さんたちからすれば無抵抗の敵を討つワケですからね。残虐行為と思われてもしょうがないかもしれませんね」


 ――と、パイルは自嘲気味に苦笑いしている。これはちょっとパイルに申し訳ないことをしちまったか。


「騎士と冒険者は違うだろ。俺は誰よりもパイルを信頼している。もしあそこでパイルが躊躇していたら、この先パイルと行動するのに不安になるかもしれん」


「ああっ、違うんですよ! 私はちっとも躊躇してませんし、なんなら如何にターナスさんの()()()に近づけるかの方が大事ですから」


「そ……そうか」


 てっきり、ザーラン達から軽蔑されるような行為をした事に気落ちしたのかと思ったが、全然そうじゃなかった。


 それはそれとして。


 応接室の扉に手を当て『千里眼(クレヤボンス)』で中の様子を窺う。


「よくワカランが、如何にも貴族っぽいのが七人いる。奴らが侯爵連中だろう。それから護衛っぽいのが……十二人か。結構多いな」


「如何なされますか?」


 流石に緊張しているのか、強張った面持ちでケルツが訊ねてきた。


「扉は俺が魔法で破壊しよう。その後スグに……そうだな、圧縮した空気で奥へ吹き飛ばすか」


「圧縮した空気……ですか?」


「ああ。空気を圧縮するってのは分かるか?」


「ええと、腸を膨らませる時のアレでしょうか」


「まぁ、それもあるな。俺がやろうとしてるのは吹き矢の原理と思えばいい」


 そう言って握った右手の拳を口に当てて「フッ」と息を吹いてみせた。

 すると、横からナッスルが「ああっ」と小さく声をあげる。


「つまり、今の吹きかけた息の巨大なヤツってことですね」


「そういうコトだ。巨大というか強力な空気の圧をドンッとぶつける。連中はそのまま反対の壁に向かって吹き飛ぶだろうから、三人は吹き飛んだ護衛の連中を始末してくれ。同時に俺は侯爵達を拘束する」


「私は?」


「パイルは俺と一緒に尋問だ」


「了解です!」


 これまでも尋問に関しては得意としていたパイルだが、王城での戦闘で更に色々な尋問方法を試したようだからな。まぁ、尋問と言っていいのかワカランが……。


 兎に角――


 扉を魔法による雷撃で破壊すると同時に、衝撃波を叩き込む。

 ドンッと乾いた音と共に僅かな振動が起こり、部屋の中は粉塵が舞ったように白い埃が立ち込めた。


 衝撃波により埃が立ち込めてはいるが、視界が悪くなるほどではない。

 ザーラン、ナッスル、ケルツの三人が素早く中に入り、向かいの壁に叩きつけられてぐったりしている護衛の兵士(様相から見るに騎士だろうか)に剣を突き立てていく。

 彼等とは別に兵装をしていない人物七人を『呪縛』で拘束する。

 この間、ものの数十秒。一分も掛からず終了だ。


「こうも簡単に……」

「ああ、なんかこう……何というか、手応えも何も無いな」


 ナッスルとケルツが呆れるように呟いていると、ザーランが剣に付いた血を拭いながら俺に問いかけて来た。


「タナトリアス公の魔法は、これ程までに凄まじい威力を持っているのですね。以前、魔族の魔法を目にしたことがありますが、まるで違います」


「魔族と戦った事はあるが、そういえばそれほど強力な魔法ではなかったかな。まぁ、オーガとドラゴノイドでは戦い方は違ったが」


「確かに魔法は魔族だけが持つ能力ですが、それでも魔族の放つ魔法は氷の槍や火球といった魔術でも再現出来るものが多いですからね。ただ、高い身体能力を生かした戦闘を得意とする魔族も多いので一概には言えませんが。それでも魔法を主な攻撃手段にする魔族の種族でも、この様な威力のある波動を放つ魔法なんて見た事がありませんよ」


 そういえば、この世界では人間族の使う魔術の方が魔法よりも強力だったりするって誰か言ってたな。


「ま、俺の魔法は正直反則技に近いからな」


 そんな俺の言葉にザーランは苦笑いしていた。


「ヨシッ、それじゃあ尋問するとしようか。なぁパイル」


「ハイ、承知しました。お任せ下さい!」


 そんなわけで、「侯爵様、拷問……もとい、尋問の時間です」





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