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第131話 動き出す

※一部表現を修正しました。

 第一王女シェレル・ガールド・グランドロスをガットランド王国(この国)の新たな女王として即位してもらいつつも、幼いシェレルではまだ政治に関して真面な政治を行うことは無理だろうから、彼女の叔父であるローデンサス・アーガイル・グランドロスを摂政に就かせる。

 まぁ、ローデンサスが(まつりごと)をどれくらい出来るのかは知らんけど、王族である以上はそれなりに何とかするだろう。


 そんなワケで、まずは【人間中心主義】の終わりを宣言させるのだが、それに民衆がどんな反応をするかが問題か。


 取り敢えず、残った王族の中から「ガーネリアス教や人間中心主義に熱心な者」と「人間中心主義にあまり関心のない者」をローデンサスに分けさせた。

 身内贔屓が出る可能性もあるだろうから、グレアモルドとパイルに質疑をさせてシーニャにその真意を探らせる。


 王族としては裏切った騎士と獣人種族から嫌疑をかけられるのだから、それこそ憎悪に近い形相をする輩もいるし、逆にやたらと愛想良く口八丁で「自分は亜人種族の味方だ」と喋り捲るヤツもいるが、だいたいそういう連中は揃ってシーニャに見破られて別室にご案内だ。


 ラウンジにいた三十人ほどの王族の中から「人間中心主義にあまり関心のない者」として残ったのは九人。


「意外と多かったな」


 残った王族を見てグレッグが言う。


「ああ、俺もニ、三人いるかどうか程度に思ってたんだけどな。こんなにいるとは思わなかったよ」


「この中でガットランド生まれの者は六名。十二歳に満たない子供二人は別として、他はローデンサス様同様にユーゲンスト侯国出身の者でした。他の三名はその婚姻関係にある者です」


 王族に質疑をしたグレアモルドが残った者の素性を説明してくれたが……。やはりガットランド(この国)の出身ではなかったか。

 元々亜人種族差別のない国の出身者と、その伴侶。当然の事ながら、伴侶も亜人種族に対して差別意識が薄くなければ、私生活だって上手くいかないだろうからな。


「ふむ。こうなるとやっぱり民衆の方が問題になりそうだな」


 顎に手を当ててグレッグが溜め息交じりに言葉を吐きつつ、更に続けた。


「とは言え、国王も教王も死神によって処刑された今、亜人種族に対する差別や迫害はそうそう起こらんだろう」


「本当にそう思うか?」


「ああ。考えてもみろ。国王は兎も角として、ガーネリアス教や人間中心主義の絶対的な権力者であって、聖術の最上級職である教王が死神に殺されたんだぜ? もしもその死神に目をつけられたりでもしたら……なんて考えたら、何も出来やしないんじゃないか?」


「そりゃあ、まぁ、そうかもしれんが……」


「勿論、シェレル(彼女)が王位を継承した事を宣言した上で、更に亜人種族に対する迫害を禁止する条項を発布させる。それで、その条項に反した時の罰則も相当厳しいものにするんだ」


「ああ、それは勿論そうするつもりだが、あまり亜人種族を優遇し過ぎると却って亜人種族に対する憎しみが生まれちまう。そうなったら却って逆効果になりかねん」


「そこを上手くあしらうのが政治ってもんだ」


「簡単に言ってくれるな」


 ケラケラと笑うグレッグの性格をほんの少し羨ましく思うよ。まったく。


「さて、それで――だ。王城はぶっ壊れちまってるが、新王政府が政務を行う場として、どこか良い所はあるだろうか?」


「それならば、この小離宮がよろしいかと存じます」


 ローデンサスによれば、この小離宮は元々王妃のプライベートの場として建てられた物だそうだが、今現在は一部の大臣と法務官に使われているらしく、王妃の部屋を新女王の間とすれば暫くの間は凌げるだろうとの事だ。その他の役職は破壊を免れた城の一部を執務室に充てる。

 

 王都の警備については、王室とはやや距離を置き、ユーゲンスト侯国やカラム侯国などの亜人種族差別の無い国と密かに関わっていた貴族に依頼をすると言うのがグレアモルドの案だ。

 自身の主であるガルメリア侯爵もその一人で、王室に対しては一見して忠誠を見せてはいるが、その実はユーゲンスト侯国と親密な関係にあるので熱心なガーネリアス教徒ではないのだそう。


「すぐさまガルメリア卿にお伝えし、心当たりのある貴族にお声をかけていただくよう進言して参ります」


「ああ、頼んだ」


 幸い、王城に滞在していたガルメリア侯爵は直轄騎士団の第一分隊と共に<王都警備>の名目で市井に出ていたそうで、王城にいたのはグレアモルド率いる第三分隊と第二分隊の一部だったとの事。

 第三分隊は他国出身の者が多いが、第一分隊はこの国の出身者が殆ど。ただ、それでもガルメリア侯爵領の生まれ、且つ、ガルメリア侯爵への絶対的な忠誠心を持つ者で構成されているので心配は無いとの事だが……まぁ、グレアモルドを信じるしかないか。

 

 斯くして、新王政府樹立に向けて動き始めたワケだが――。

 今更ながら、ホントに上手くいくのか心配になってきたわ……。



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