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4 宇喜多流合戦術

「我は毛利家家老、福原貞俊!小僧……その首置いてけやァァァっ!」


そう言うと福原は俺に斬りかかって来た。

こいつバケモンか何かか?

元総よりも圧倒的に早い。

しかも一撃はあまりにも強烈で俺はよろけてしまった。


「全登、撃て!」


俺は必死に刀で攻撃を流しながら全登に命じた。


「承知致しました!鉄砲隊前へ!」


全登が命じると廊下に鉄砲隊がびっしりと並んだ。

ちょっと待って?これ俺に当たんじゃね?


「待て、全登!やっぱ撃たないで!」


そう言った傍から鉄砲隊の連中は引き金を引きやがった。


パァンッ!


銃声が廊下に響いた。


あれ?痛くないぞ。


「うっ……卑怯者め……。」


そう言うと前の福原が倒れた。


「おいおい、俺に当たるところだっただろ。」


「申し訳ありませぬ。されど宇喜多の鉄砲隊はそこらの素人集団とは違います。正確に敵を撃ち抜くことが出来ますぞ。」


「親父の暗殺のためだろう。まあこれが片付いた故に良しとしよう。さっさと本丸へ向かうぞ!」


そう言うと俺たちは本丸に突入した。

あれ?誰もいないじゃん。


「なんだ、もぬけの殻か。」


「輝元めは逃げたようですな。まだそう遠くへは行って居ないはずです。探しましょう、八郎様。」


全登の進言に従い俺たちは辺りを探すことにした。

それにしても体中、返り血だらけだ。

現代の人間なら気絶するレベルだがここは戦国だ。

この程度でビビる訳にはいかない。

すると珍しいものを見つけた。


「おっ、ボーガンじゃないか。かような物があるとはな。」


ボーガン、弩はこの時代はコスパが悪くて普及していないがこういう狭いところで使うならうってつけの代物だ。

早速、拾ってみた。


「弩ですか。大量に使用するのは難しいですが持って帰るくらいなら良いのでは?」


全登が言う。


「ああ、せっかくだし貰っていこう。」


俺は弩を構えて下に降りて行った。

お、女がいるぞ。

ここに居るってことは輝元の縁者に違いない。


「おい!輝元はどこだ!」


俺は弩を女に突きつけて聞いた。


「言えませぬ……言えませぬ……。」


「黙れ!これでもか!」


俺は脇差を女の足に突き刺した。

悲鳴と断末魔が辺りに響く。

映画でステ〇サムとかスタ〇ーンとかもこんな感じで拷問してたし多分これが正解だろ。


「殿は……殿は……敵の雑兵に紛れてお逃げになられました!」


え?つまりウチの兵士に毛利輝元が居るってこと?


「全登!すぐに兵を二ノ丸と三ノ丸に集めろ!不審な動きをする奴がいたらとっ捕まえろ!」


「ははっ!直ちに。」


とは言え俺の兵は城外も含めれば一万五千、織田全軍に至っては八万近いぞ?


「お殿様、もしかしてあいつじゃねえか?」


近くにいた雑兵が指を指して言った。


「何故そう思う?」


「あれはワシの死んだ親父の具足に似てるのです。鹵獲した具足を使ってるに違いねぇ。」


「よくぞ申してくれた!後で褒美を遣わすぞ!」


俺は急いでその怪しい兵に弩を向け言った。


「そこの者!動くな!」


「な、何用でございますか……?」


「その具足はあそこにいる者の父親の物だ。それをどこで手に入れた?」


「た、ただ似ているだけでございましょう。」


「先程から聞いておればお主、備前の訛りではないな?」


「そ、それは生まれが安芸なだけでして……」


「怪しいな、備前のどこに住んでおる?」


そう言うと怪しい兵士は黙り込んだ。

輝元みたいなお坊ちゃまが備前の事なんて知るわけないわな。


「ええい、見抜かれては仕方ない!貴様を冥土の土産にしてくれるわ!」


そう言うと正体を現した毛利輝元は刀を向いてこっちに向かってきた。

俺はビビることも無く引き金を引いた。


「うっ……なんじゃこりゃァァァァァァァ!」


矢が刺さった腹を見て輝元は叫びながら崩れ落ちた。

何ともあっさりした最期だった。

史実では同僚になり運命を共にしたであろう男に同情しながらも俺は首を切り落した。


「毛利輝元が首、この宇喜多八郎が討ち取ったぞ!」


そう言うと周りの兵士たちが勝鬨を上げた。


「おおお!誠に見事じゃ。これが初陣とは思えぬぞ!」


秀勝様は俺が持ってきた首を見て大いに喜んでくれた。


「フフフフ。やはり宇喜多殿に先陣を任せて正解でしたな。ねえ、婿殿。」


「ええ、誠に見事な活躍でありますな。」


明智殿と信澄様も褒めてくれた。


「あれ?羽柴殿は?」


「猿なら小早川を討ちに長門へと向かいましたぞ。」


丹羽殿が説明してくれた。


「長門が落ちるのは時間の問題でしょうな。後は吉川だけですが……。」


秀勝が不安気に言う。


「フフフフ、ご安心なされませ。もう間もなく片が着きましょう。」


明智殿がそう言ってすぐに本陣に1人の男が入ってきた。


「池田殿よりご報告です。吉川元春を始め一門衆や家老は城兵の助命を条件に切腹致しました。」


「フフフフ。如何でしたか、久太郎殿。私が預けた策は。」


久太郎、ああこいつが堀秀政か。

この世界では若狭の大名だっけ?


「日向守様もお人が悪うございます。されどこちらの犠牲は少なく済みました。」


へえ、何したんだろ?


「義父上……一体何を?」


俺が思ってた事を信澄様が口にしてくれた。


「内通者に毒を流しただけですよ。攻めるのが難しい相手は内側から壊す。兵法の基本です。」


うわぁ、親父が好きそうなやり方だな。


「八郎殿のお父上などはそのような事はお得意でしょう。八郎殿もそちらの方も極めるとよろしいでしょう。」


丹羽殿がそう言ってきた。


「ははは、そうでございますな。上様のお為になるならば、この八郎はどのような策を使ってでも上様をお支え致しましょう。」


それにしても戦が終わってから諸将の態度や言葉遣いが前より丁寧になった気がする。

なんでだ?


その日の夜、家臣たちはみんな俺の初陣での功績を聞いて喜んでくれた。

忠家殿や岡は号泣するし詮家も褒めてくれた。

夜までみんな飲んだくれて目覚めた時にはクソみたいに頭が痛かった。

てかまだ元服もしてないガキに酒飲ませんなよ……。


そう思う俺のところに明智殿がやって来た。


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