3 無双出来んじゃね?
次の日。
いよいよ攻撃の日だ。
具足をつけた俺のところに明石がやってきた。
「八郎様……。ご立派になられて嬉しゅうございます。」
「当たり前だろう。お主にみっちりと鍛えられたからのう。」
「ははは、左様でございますか!ではどれほど鍛えられたか拝見するのを楽しみにしておりますぞ。」
他の家臣たちも皆応援の言葉を送ってくれた。
詮家でさえ
「お前は宇喜多の当主だ。死ぬなよ。」
って言ってくれた。
もしかしてツンデレ系ですか?
三種の肴を食って三献を行うと俺は兵士たちの前に立った。
「皆の者!宇喜多の武勇を上方に見せつけ中国最強の名を手に入れようぞ!」
俺がそう言うと兵士たちも湧き上がった。
「出陣!」
俺は馬に跨り今まで出したこともないくらい大きな声で叫んだ。
その頃吉田郡山城内では
「吉川の叔父上も小早川の叔父上も来ぬか。」
城主の輝元は悲しげに言う。
「残念ながら……。我らが敵を食い止めます故に殿はお逃げくださいませ。」
老臣の福原貞俊が進言する。
「それは出来ぬ。家臣を置いて当主がさっさと逃げるなど末代までの恥じゃ。」
「いえ、殿が生きてさえいれば必ずや挽回の機会は訪れまする。」
「ううっ……すまぬ。」
「申し上げます!敵の攻撃が始まりました!」
涙を浮かべる輝元の元に使者が訪れた。
「ほれ!泣いている時間はありませぬ!早うお逃げなされ。」
福原はそう言うと刀を抜き出ていった。
吉田郡山城大手門の宇喜多軍。
え?戦国の武士って弱くね?
確かに俺は学生時代に剣道と柔道やってたし筋トレもしてたけどマジでみんなちっさいし弱くね?
どうやら現代の体力がそのまま受け継がれてるらしい。
敵は殴れば気絶するし蹴れば吹っ飛ぶし刀で防ごうものなら一刀両断にできる。
あれ?もしかしてこの世界の俺って、リアル戦国無双じゃね?
あっさり大手門を突破した俺たちはそのまま曲輪を制圧していった。
「そこの小僧!中々良さそうな兜を付けておるな!名をなんと申す!」
三の丸に来たくらいで明らかに他の奴とは雰囲気の違う武将が怒鳴り掛けてきた。
「備前宇喜多家当主、宇喜多八郎だ!お主はなんと申す!」
「我は小早川左衛門佐が養子、小早川元総である!」
小早川隆景の養子ってことはもしかして小早川秀包か?
「かの小早川左衛門佐の養子とは良き敵に出会えた!その首頂くとしよう!」
「八郎様、あの者今までの雑兵とは雰囲気が違いまする。気をつけなされ。」
「分かってる。もし危なくなったら撃ち殺せ。」
合戦の作法で横入りはタブーだが俺はなんて言ったってあの宇喜多直家の子だ。何をしてでも討ち取る。
「よかろう!では始めようぞ!」
そう言うと元総は早速斬りかかってきた。
早いッ!しかも動きも身軽だ。
咄嗟のところで俺は躱した。
「小癪な!」
元総は外してもすぐに斬り付けてくる。
「はよ死ね!」
俺も負けじと斬り付ける。
「ムッ!」
元総の腹に刀がカスった。
「あんたをここで死なすのは勿体ないが仕方ない!」
元総がよろめいた瞬間、俺は奴の首を斬り落とした。
「若殿!若!」
小早川の家臣たちが焦ってこっちに斬りかかってくる。
「八郎様!」
すぐに駆けつけた全登が全員始末してくれた。
おいおい、こいつ強すぎだろ。
「すまぬ、全登。しかしまだまだ油断は出来ぬな。」
「失敗から学べばよろしいのです。それに敵の一門の首を取れたのです。このまま進みましょう。」
俺は頷くとまた走り出した。
「フフフフ、二ノ丸からも火の手が上がっております。流石は八郎殿でござる。」
織田本陣から城を眺める光秀はニヤニヤ笑っていた。
「義父上、八郎殿はまだ12と聞いております。その歳でそのような事が可能なのでしょうか。」
信澄が聞く。
「戦の才能に歳など関係ありませぬ。もし毛利と内通しておるなどとお考えになるのはお止めなされ。」
「左様でございますな。信澄が安直でございました。」
「フフフフ、それにしても今回の戦。勝利した暁には婿殿は加増されましょうな。」
「それは嬉しゅうございますが猿めが腹を立てましょうな。」
「上様はたいそう羽柴殿にお怒りですからなぁ。恐らく秀勝様を本家に戻せと仰られるでしょう。」
「猿も終わりですな。あとは与一郎が気がかりですが。」
「藤孝殿が抑えてくださるでしょう。フフフフ。」
そんな風に2人が談笑している頃には八郎は二ノ丸を制圧していた。
「なかなか疲れるな。すこし休みたい。」
「何を弱気なことを。もうまもなく本丸ですぞ!」
ここに来て全登のテンションが上がりだした。
俺よりこいつの方がリアル無双じゃねえか。
「ぎゃあァァァァァァァァ」
そう思ってると兵の悲鳴が聞こえてきた。
「なんだ!?」
俺と全登が先へ進むと明らかにラリってるであろうジジイが雑兵共の首を掴みながらこっちにやって来た。