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お知らせとスピンオフ

活動報告でも書いた通り精神的な病気が少し改善するまで執筆活動を休止します。

ご理解の方よろしくお願い致します。


以下字数稼ぎに学校の課題で使った本作の前日談を乗せておきます。



時は天正10年12月

現代ではオリーブオイルの生産地として有名な小豆島を治めるのは2人の若者であった。

2人の名は一ノ瀬蓮と成瀬大輝。2人とも未来から来た高校生だがその知識を使って現地の人間からは愛されていた。


「おい!俺たちに島を出ろとはどういう事だ!」


大輝は甲冑姿の男の胸ぐらを掴んだ。

その男の名前は香川五郎次郎、歳は2人と同じくらいで元々讃岐にて有力だった大名の養子で織田家の家臣だ。


「我ら織田家はこれより中国を攻める。その際にこの島を中継地点として使うのが上様(織田信長)のご命令じゃ。」


「この島は俺たちの島だ!どうして織田の戦争に巻き込まれなきゃいけないんだ!」


大輝はフレンドリーだが単純な性格だ。

対する蓮は能力が高いが自覚がなくそこが皆を引き寄せている。


「香川様、申し訳ありませんがそのご命令には従えません。この島はこの島に住むみんなの島です。それを明け渡すなど絶対に出来ません。」


「そうか、なら仕方あるまい。一月の内に五千の軍勢がこの島に上陸するものと心得よ!」


五郎治郎は笑いながら出て行った。


「蓮……お前!」


大輝は驚いていた。

物事を総合的に見ることの出来る蓮が抵抗するなど思わなかったからだ。


「自分でも驚いている。だがあの男の言い方、どうにも腹が立ってしまう。ここにタイムスリップして2年。もはやこの島の住民は家族みたいなものだ。だから俺は織田軍と戦う!」


「お前からその言葉が聞けて嬉しいよ。」


大輝は蓮の肩を叩きながら外に出た。

外には刀やら槍やら桑やらを持った住民たちが集まっていた。

みすぼらしい格好だがみんな生き生きとしている。


「蓮!大輝!俺らはお前らと一緒に戦うぞ!」


島のリーダーが言うとみんな武器を掲げ声を上げた。


「みんな……!」


大輝は涙ぐみ蓮も嬉しそうだ。


「みんなの命、この俺に託してくれるか!?」


「オオーーッ!」


島民たちの叫び声が島中に響き渡った。


その頃、讃岐の十河城にはこの国の領主で信長の三男の三好信孝と五郎次郎、家臣の岡本太郎右衛門、そして土佐の長宗我部家の家臣で五郎次郎の従兄弟の吉良左京進が集まっていた。


上座に座る信孝が話し始めた。


「小豆島の小僧が我らへの従属を拒否した。よって小豆島を攻める。敵の数はおそらく千にも満たぬ。対する我らは太郎右衛門と五郎次郎に三千と左京進ら長宗我部の軍で小豆島を攻める。」


信孝は続ける。


「小豆島を治めるのはまだ20にも満たぬ小僧と聞く。実際に見てみてどうであった?五郎次郎。」


「容姿端麗で民からは愛されておるようですが片方は単純な男です。もう片方は器量はそれなりにありそうですが紀伊の雑賀、伊賀の百地、丹波の赤井などほどではないと思われます。」


これらの者は少数の兵で織田家の大軍を敗走させた者達である。

もちろん五郎次郎達は蓮と大輝がタイムスリップしたとは知らない。


「なら問題はありませぬな。先陣は我ら長宗我部にお任せあれ。」


左京進が信孝に願い出た。


「良かろう。織田家の者としてしかと働かれよ。」


左京進の率いる長宗我部軍はかつては四国一帯を圧倒していた。

統率に優れ兵個人の戦闘力も極めて高くはっきり言って小豆島の島民達が単純に戦って勝てる相手ではなかった。

しかし蓮も大輝も日本史は高校で選択していないのでそんな事は知らない。


「授業で習ったこと事を思い出してみたがこの時代の武士は単独で戦っていたらしい。なら俺たちは集団で戦えばいいんじゃないか?」


大輝が提案する。


「馬鹿言うな。相手はこちらの5倍だぞ?それよりも罠を仕掛けたりしてゲリラ戦術で戦った方がいい。」


「あー、確かにそうだな。でも初めてこの島に来た時のことを思い出すぜ。」


2年前の夏である。

突如として雷に打たれた大輝と蓮は目が覚めるとこの島の沿岸に流されていた。

島民達はそんな2人を手厚く保護してくれた。

だから蓮は未来の知識を使って料理を振舞ったり便利な道具を作ったりし大輝は子供たちに現代の遊びを教えたりした。

それから1年もすれば蓮の万に通じる才能と大輝の人懐っこさもあって島民達は2人を信用し2人もまた島民達を家族のように信頼した。


「あの時、みんなが俺たちを助けてくれたように俺たちが今度はみんなを助けようぜ。」


蓮が言うと大輝も大きく頷いた。


しかし何故ここまで織田家が小豆島如きに執着するのか、それが蓮には疑問でしょうがなかった。

答えは簡単である。

長宗我部家を試すためなのだ。


五郎次郎の父の長宗我部宮内少輔は最近織田家に従属したばかりであり信長としては五郎次郎を信孝の家臣という名目の人質にしたもののいきなり毛利攻めに使うのには不安があった。

そこで毛利攻めの拠点に使うという理由で試練の場としたのが小豆島だ。

そこで長宗我部がどこまで兵を出しどこまで戦うかを測るつもりだった。

その信長を意を察した宮内少輔は信長の予想の二千をはるかに超える五千の軍勢に加えて一門の本山将監と重臣の大西上野介まで付けてきた


対してただの織田家のテスト会場にされていることを知らない蓮は必死にどう迎え撃つかを考えていた。


(ゲリラ戦と言っても山に隠れて戦うだけじゃそのうち燃やされて終わりだ……。とりあえずみんなが島を退去せずに済むようにしなければ……。)


かと言ってよくある小説の主人公のように軍事や政治に関する知識がない蓮にはどうすることも出来ない。


(やはり人質を取って織田を脅すのがいいのか……。しかしそれだとテロリストみたいだし……。)


ここが大輝も含め2人の悪い所だ。

戦国時代なのだからルールなどはない。

しかし2人は現代の価値観に乗っ取って二年間を過ごしてきた。

戦争という物を経験していない若者に何が出来ようか。

それに気づいた蓮は島の端に住むある老人の元へ向かった。


その老人の名は尾張五郎。

他の人が言うにはかつては中国地方で名のある将だったが安芸の毛利元就に負けてこの島に逃げ込んで来たそうだ。


「五郎爺さん。どうしたら織田に勝てる?」


蓮が聞いた。


「童蓮よ。迷いがあるのでしょう。その迷いを断ち切らなければ戦には勝てませぬ。」


そう言って尾張は島の地図を広げた。


「この島は有難いことに山や森が多くあります。敵が上陸してくれば少数の囮が敵を挑発し森に誘い込み攻撃、その後一段落したら森を燃やし撤退しましょう。」


「森を燃やす!?それに囮って……。」


「勝ちたいのなら犠牲は必要です。あなたが考えるほど戦国の世は甘くありません。」


五郎の言う通りだ。

蓮も渋々同意する。


「それで何をすれば勝ちなんだ?」


「善戦し出来るだけ良い条件で停戦するのです。戦は戦いだけではありませぬ、交渉や調略など全てが戦なのです。」


「なるほど……。ありがとう、その策でやってみるよ。」


「お役に立てたようで、ご武運を。」


「ところで爺さんって昔はなんて名前だったの?」


蓮は帰り際に聞いた。


「戦に勝ったらここにまた来てください。その時にお話しましょう。」


尾張は蓮に笑顔で手を振りながら見送った。


それから数日間、元々足軽として働いてた島民の指導の元兵たちの訓練が始まり蓮と大輝は島の指導者たちと綿密に計画を行った。

攻撃する地点や合図、避難場所まで万全の体制だった。


そして遂にその日が訪れた。

五郎次郎率いる七千の大軍が沿岸に押し寄せた。


「無駄な抵抗をする土民共に現実を教えてやれ!全軍かかれぃ!」


五郎次郎が采配をふると大西上野介率いる千の先陣が動き出した。


「やーい!やーい!織田信長にビビってさっさと降伏した雑魚が!かかってこーいよ!」


大輝の挑発に対し長宗我部兵は顔を真っ赤にした。


「おのれ、ガキが!殺してくれるわ!」


「あの小僧を血祭りに上げろ!」


長宗我部兵達は散々に大輝に暴言を吐き襲いかかった。


(よし!あとは手筈通りに!)


大輝はニヤリと笑うとダッシュで走り出した。

足に自信のある大輝に追いつける兵は誰一人としていなかった。


大輝はバツ印の書いてある岩の前まで来ると大声を上げ岩の裏に隠れた

すると木の上から現れた島民達が石や竹槍を兵に投げまくった。

敵兵達は呻き声を上げながら倒れていく。


その光景を蓮は離れた丘より眺めていた。


「あの長宗我部を手玉に取るとは流石は蓮じゃ!」


長老が言うと周りの者も頷いた。


「まだまだ戦いは終わってない。気を抜けないよ。」


蓮の言った通り油断は出来なかった。

その後、尾張の策通に従って一通り攻撃を終えた島民達は森に火を放ち逃亡した。

蓮と大輝が理科で習った火の燃える方法をありったけに使ったので森は恐ろしい勢いで燃え長宗我部兵達の断末魔は1時間近く島を包んだ。


「中々やるではないか。撤退せよ!」


上野介が撤退の合図を鳴らすと織田軍は全て沿岸部に撤退した。

初日は蓮達の大勝利だった。


「やったぞ!俺たちは死人を出さずに織田軍を破ったんだ!乾杯!」


大輝が杯を掲げるとみんなも杯を上げた。


「流石は蓮と大輝じゃ!我らの英雄じゃ!」


みんな2人を称え賞賛した。


「これで織田もしっぽを巻いて逃げていくな!」


大輝は楽観視していた。


「まだまだだ。もっと敵を痛めつけて勝利を勝ち取るぞ。」


「まあまあお堅いことを言うなよ!さあ、飲もうぜ!」


現代なら酒はアウトだが元々ヤンキー気質の大輝はいつも飲んでいる。

まあ今日くらいは飲んでいいだろうと思った蓮も仕方なく注いでもらった酒を飲んだ。

その日はみんな夜通しで飲み焚き火を炊いて騒ぎまくった。


逆に織田軍は暗いムード……では無かった。


「なぜ誰も焦らないのです!?初戦で敗れたのですぞ!?」


元々織田家の家臣の太郎右衛門は焦っていた。


「ご安心くだされ。焦りは禁物です。」


上野介が言う。


「しかし相手は農民共!しかも一向一揆とも違い戦の経験もほとんど無い連中ですぞ?」


「岡本殿、何故桶狭間の戦いでかの今川義元公が上様に敗北したかお分かりか?」


将監が聞く。


「それは兵が分散しており雨も降っていたからでは?」


「もうひとつあるでは無いか。今川公は酒を飲んで油断していたのよ。」


「まさか!」


五郎次郎の発言で岡本ははっと目を開いた。


「既に当家の者が向かっておる。明日にはこの島、我らの者になっておりましょうぞ。」


そんな事とは知らない蓮達は未だ宴を楽しんでいた。

するとふと林の方を見た大輝が気づく。


「蓮!危ない!」


大輝がそう言うと共に大量の銃弾が島民達を襲った。


「大輝!」


蓮は大輝に駆け寄ったが既に大輝は息絶えていた。


「嘘だろ!嘘だろ大輝!」


蓮は初めて感情を面に出して大声を上げた。

現代で何事も普通に出来てつまらない人生を送っていたのを華やかにしてくれたのは大輝のおかげだ。

この時代でも大輝のコミュ力が無ければ島の人々とも仲良くなれなかっただろう。


「許さない!許さないぞ織田信長ァッ!」


蓮は刀を抜いて長宗我部の奇襲部隊に斬りかかった。

その後1発の銃声が夜空に木霊した。


次の日。


「ほら見た事か。叔父上の策は見事でしたな。」


左京進が笑いながら言う。


「誠に父上は恐ろしいよ。それにしても夜討ちとはあまり気持ちの良いものでは無いな。」


五郎次郎はそう言うが顔は笑っていた。


「このような小さな島の農民共が本当に我らに勝てると思ったのか、誠に馬鹿な奴らです。」


左京進は大量に並べられた首を見て言う。


「しかし良き目をしておったよ。蓮と大輝とか言う奴は。」


織田軍は島民達の首を適当なところに埋めた。

それから二ヶ月後、織田軍が立ち去ったあと、首が埋められた場所に尾張は戻ってきて手を合わせた。


「童蓮、あなたの戦いぶりは見せて頂きましたよ。私もあなたのような若者に出会えていたら厳島で元就に勝つことが出来たでしょうか?」


尾張五郎は懐より種を取りだした。


「これは南蛮の者より頂いた種です。橄欖と言うそうで平和や安らぎの意味があります。童蓮よ、静かに眠りなさい。」


尾張はもう一度手を合わせて島を後にした。

この尾張の植えた種が代々受け継がれて現代の小豆島にオリーブの文化があるとかないとか。


ちなみにこの後織田家や長宗我部家には悲劇が訪れ動乱の中で蓮達と年の変わらない青年が活躍するのだがそれはまた別の話である。


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