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32 安土会議

会議前日、安土城にて最大級のもてなしを受けた俺はその足で津田信澄の元に向かった。


「おお、宰相殿。」


先に信澄が頭を下げてくる。

1年前なら逆だったのに。


「いやぁ夜分遅くに申し訳ない。明日のことで話すことがあってな。」


「明日のことですか。宰相殿は誰を推されるので?」


「うむ。ワシは三法師様を推そうと考えておる。」


三法師とは信忠の子で信長の孫である。

つまり史実の秀吉とやってることは全く一緒だ。


「しかし若すぎるのでは?」


「だから後見でお2人に入っていただくのよ。」


「なるほど、確かに叔父上は信忠様に家督を譲られておられるゆえ家督の継承権は三法師様にあられますな。」


理解が早くて良かった。

信澄が言えば残りの3人も納得するだろう。

あとは丹羽長秀も説得しておきたいんだけど史実を考えたらあの人あと1年くらいで死ぬんだよね。

となるとやっぱり蒲生氏郷か。

という事で彼の元へ行ってみた。


「これは宰相様、わざわざ来て頂けるとはかたじけない。」


姿勢はきちんとしてるし目つきは悪いが凛々しい顔立ちの氏郷はまるで家臣が主君にするような挨拶をした。


「ああ、ご丁寧な挨拶痛みいる。先の戦では2倍の羽柴軍相手に善戦されたようですな。」


「相手が大したことがなかっただけです。もし黒田官兵衛辺りなら瞬く間に壊滅していたでしょう。」


ん、そう言えば黒田官兵衛って今回の戦いでなんかしたっけ?


「いやいや、貴殿なら黒田でも良く戦えたであろう。誇りに思われると良い。」


「有り難きお言葉。ところで明日の会議では誰を推されるので?」


「無論、亡き信忠様がご嫡男、三法師様でござる。」


「三法師様!なるほど、そのお考えがありましたか。さすがは宰相様でございますな。」


「では蒲生殿もご賛成して頂けるかな?」


「もちろんでございます。この忠三郎めにお任せくだされ。」


よし、蒲生氏郷もこっち側に引き入れた。こうなったら誰がどう言おうと俺の勝ちだ。


そして会議当日。


「なぁ、皆の者。此度はワシが家督を継ぐのが相応しいであろう?」


信雄が諸将の肩を組みながら聞くが誰もうんともすんとも言わない。

信孝は無言だ。


「では会議を始めます。まずは皆様のご意見をお聞きしたい。」


進行役の前田玄以が始めた。


「では佐々殿から。」


「いやぁ、やはり三七様ではないでしょうか?律儀で四国をようまとめておられまする。」


信雄はムッとしてるが信孝は表情を変えない。

ポーカーフェイスか。


「それは佐々殿ご本人のお考えかな?本当は柴田殿に指示されてそう仰られておる訳ではあるまいな?」


俺が聞く。


「いやいや、ワシは自分の考えを申しておるだけよ。まあ親父殿も同じ考えかもしれぬが。」


「俺も同意見じゃ。」


長可も続く。

やはり武断派は信孝か。


「逆に宰相様はどなたを?」


玄以が聞いてきた。


「三法師様を。」


氏郷と信澄以外はエッ?って顔してる。

俺はそれを気にせず話を続ける。


「上様はかつて信忠様に家督を譲られました。つまり今回の話は信忠様の後継を決める話。それならば三法師様が跡を継がれるのは当たり前では?」


俺がそう聞くと2人とも悔しそうな顔だ。


「私も賛成です。」

「ワシも同じく。」


信澄と氏郷が続いた。


「うーむ、確かに一理あるな。ここは三法師様にしておきますか。」


佐々はすぐこっちに鞍替えしもう多数決でこっちの勝ちだ。


「森殿はよろしいのか?」


俺が聞く。


「俺にはどちらも選べませぬ。選択権を棄権致します。」


「では皆様、三法師様ということでよろしいな?」


「構わぬがお二人共よろしいですな?」


長秀が二人を見て聞く。


「よかろう。されど後見人は誰が?」


信孝が聞く。

信雄は顔を真っ赤にして今にも吹き出しそうだ。


「お2人にお頼み申し上げる。では私は三法師様に挨拶してまいります。」


俺は一礼するとすぐに三法師の元に向かった。


「ほれ、三法師様。お土産を持ってまいりましたぞ。」


俺はそう言って木の板で作った弾が出るピストルのおもちゃを上げた。

昔から手が器用だったのでこういうのは作っていたがこれが三法師に大ウケ。

これで合戦ごっこがしたいからもっと作ってとお願いされてしまった。


「三法師様、皆様がお集まりです。」


近臣がそう言うと三法師は俺の服の袖を引っ張って


「信家殿、連れて行ってくれ。」


というので俺は三法師の手を繋ぎながら一緒に大広間に入った。

そのまま三法師が連れていくので上座に座ったのだがそれを見た時の信雄と信孝の顔といえばそれはもう面白かった。


「こちらが織田家のご世継ぎの三法師様である!」


俺が言うと広間に集まった諸侯が一斉に頭を下げた。

あー気持ちいい。

まさに完全勝利だ。


その日の夜。


「ええぃ!あのよそ者め織田家を乗っ取るつもりじゃ!」


信孝は激怒した。


「あれは横暴じゃ。ここは宇喜多を討伐すべし!」


信雄も続く。


「よろしいのですか?」


長秀が聞く。

正直今の宇喜多に織田が勝てる見込みは薄いのだがこいつらは何故それを分からないと内心苦笑していた。


「やると言ったらやるぞ。諸侯の戦の疲れが取れたら難癖をつけて叩きのめす!」


信雄が力強く言うと信孝も頷いた。

初めて仲の悪いこの2人は同じことをことを考えたのだった。

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