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28 ハッピーバレンタイン Mr.佐久間

新作、筆者が長宗我部家を守る話。

私の作者ページから読めるのでよろしくお願いします。

「申し上げます!佐久間隊が黒田隊に翻弄されております!援軍を出しますか?」


柴田勝家の元に多くの報告が入ってきた。

甥であり養子の呆気ない死から1日も経っていないが勝家は平静を保っていた。


「右翼の千を玄蕃の援軍に回せ。先鋒の勝政に総攻撃を命じよ。」


「ははっ!」


それまで遠距離で戦っていた柴田軍が羽柴勢に突撃を始めた。


「柴田などただの老いぼれじゃ!恐るでないわ!」


羽柴本軍の指揮官たる大谷吉継が兵を鼓舞した。

大谷勢は急ごしらえの馬防柵で柴田軍の突撃を受け止めている。


「ええぃ!小癪なガキだ!数で押し切れ!」


柴田軍先鋒の柴田勝政がイライラしながら指示する。

勝豊亡き後、柴田家の後継者は自分だと考えていたこの男は少し天狗になっていた。


「投石じゃ!投石で敵を叩き潰せ!」


勝政が命じると騎馬隊の背後より投石隊が現れた。

彼らの投げる石礫が大谷勢の頭上に降り注ぐ。


「ギャァァァァァァァァ!」


頭に石が直撃し兵達が悲鳴をあげる。


「盾を上に構えよ!鉄砲隊は投石兵を集中的に狙え!それから三成の後詰を要請せよ!」


吉継は伏せながら命じた。


関ヶ原の西側では丹羽、筒井を除いて本格的に戦いが行われていた。

しかし東部南宮山方面は全く進展がなかった。


(どうする……藤吉郎の話に乗るか織田家に忠義を尽くすか……。)


前田利家は悩んでいた。

彼は親友の秀吉より内応の話を持ちかけられていた。

勝利の暁には加賀と越中、さらに越前半国と破格の待遇である。


(このまま織田家にいてもいずれは勝蔵や久太郎達に立場を奪われワシは用済みになろう……。されどここで裏切り藤吉郎が負けたら……。)


彼は顎髭を擦りながら俯いて考えた。

どちらにしろ大博打である。

そんなことも知らない成政は何故か後方の防御を強化していた。


「殿、何故後方の強化を?あれは前田の軍勢ですぞ?」


家臣が聞く。


「ああ、念には念をという奴さ。まあ大丈夫だとは思うが……。」


成政は秀吉が謀反を起こした時点で秀吉と親しい利家を警戒していた。間者を送り込むかすら考えた程だ。


(まさかとは思うがな変な気を起こすなよ。)


成政は旧友に心の中でそう呼びかけた。


その頃姫路城を5万の大軍で包囲した信家の元にも降伏の使者が訪れた。


「兵の助命祈願だと!片腹痛いわ!全員なで斬りじゃ!」


花房を討ち取ったこいつらを俺は絶対に許さない。さっさと降伏してれば良かったのにな。

ってことで全員処刑、比叡山焼き討ちの再来かな。


「殿、やりすぎでは?」


宗茂が怪訝そうな表情を浮かべて言う。


「油断は禁物じゃ。反乱分子は皆殺しにすべし。このまま摂津までかけるぞ!」


黒田職隆ら黒田の家臣は処断したが大谷吉継と藤堂高虎は見つからなかった。

恐らく本戦に行ってるんだろう。

是非ともスカウトしたいが仕方ないね。


「殿、先陣の池田勢がまもなく三木城に到着とのこと。また四国勢が淡路に上陸致しました。」


行長の報告を受けて俺はニヤニヤした。

これで西国は俺のものだ。

さて、播磨は貰うとして但馬も欲しいな。

信長〇〇望のオリジナルストーリーみたいに摂津も頂こうか?

まだ勝ってすらいないが俺は勝った気満々で城兵の首を眺めた。


その頃、丹羽長秀はただ筒井勢と睨み合っていた。


「何故筒井は動かぬ?」


「はて、迷うておるのでしょうな。」


家老の江口正吉が長秀の疑問に答える。


「所詮日和見か。」


長秀は筒井順慶を鼻で笑った。

だが筒井勢が動けないのは日和見などではない。


「殿!しっかりなされよ!殿!」


左近が横たわる順慶を必死に揺さぶる。


「左近……もはやワシは無理じゃ。こうなってしまっては軍は瓦解する。何もするな。」


そう言い残すと順慶は口から血を垂らし目を閉じた。

度重なる戦でストレスが溜まっていたようだ。


「くっ!」


左近が地面に拳を叩き付ける。


「左近!我らはどうすれば良い!?」


順慶の甥の定次が聞く。


「お聞きになられましたでしょう。何もしてはなりませぬ。筒井はひとまず静観致しましょう。。」


左近は渋々順慶の遺言を守るのだった。


その北の佐久間盛政に話を戻すと彼は10歳以上年下の黒田長政に押されていた。

いや、正確には黒田長政の増援に訪れた浅野長政と加藤嘉明の軍勢に押されていた。


「おのれぇ……罠だったとは。」


盛政が悔しげに言う。

長政は一通り佐久間勢を荒らしたあと撤退し盛政を誘き寄せた。

そして盛政の軍勢が一定のところに来たところで増援が一気に側面より盛政の軍勢を包囲していた。

その結果佐久間勢は孤立しじわじわと削られていった。


「貴殿、名のある方とお見受けいたす!我は黒田家家臣、後藤又兵衛基次!」


そう言って立派な馬に乗った大男が盛政の前に現れた。


「ワシはこの軍の大将、佐久間玄蕃尉盛政!よかろう!ワシにいどめぇ!」


そう言うと焦っていた盛政が先に襲いかかった。


「ムン!」


盛政が強烈な一撃を又兵衛に繰り出す。

しかし咄嗟のところで又兵衛はかわし逆に盛政の左腕に槍を突き刺した。


「ぐあっ!」


又兵衛はそのまま槍をえぐり抜き盛政の左腕を切り落とした。


「まだじゃ!まだやれるぞ!」


大量の血を流しながらも盛政は又兵衛に槍を振り下ろす。

又兵衛は難なくそれを避けると盛政の胸に槍を突き刺した。


「ぐがぁぁぁぁぁっ!」


盛政は断末魔を上げながら馬上より転落した。


「佐久間盛政!この後藤又兵衛が討ち取ったりぃ!」


開戦から3時間、又兵衛の声が関ヶ原にこだました。

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