27 戦場のハッピーバレンタイン
関ヶ原編は妙に手抜きです
天正12年2月14日
現代ならバレンタインの日付の日、関ヶ原には濃霧が漂っていた。
その中で織田軍と羽柴軍から500ほどの一団が出てきた。
「天下分け目の戦か。この先陣を黒田が頂けるとはありがたいな。」
この軍の指揮官の黒田長政は嬉しそうだった。
「腕がなりますな。相手は鬼玄蕃ですか?」
家臣の後藤又兵衛も自信満々に聞く。
「そのようだな。よし、鉄砲隊構え!」
長政が刀を上げ鉄砲隊が銃を構えた。
「よし、外すなよ。撃てぃ!」
長政が刀を振り下ろすと同時に鉄砲の銃撃が睨み合う佐久間盛政の部隊に襲いかかった。
攻撃をまだかまだかと待ち望んでいた佐久間軍から奇声が響く。
「よし!ワシの所に来たか!織田軍の先駆けはやはりワシが相応しい!撃ち返せぇ!」
佐久間軍も強烈な銃撃を黒田軍に浴びせる。
「鉄砲隊、怯むな!弓隊も援護せよ!又兵衛は槍隊と共に突撃準備!」
長政は的確に指示を飛ばしていた。
対する盛政は
「敵の数は大したことない!全軍を持って叩き潰せい!」
全軍突撃を命じたのだ。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
血気盛んな佐久間軍は待ってましたと言わんばかりに進み始める。
その声を聞いた蒲生氏郷の元にも交戦開始の報告が舞い込んできた。
盛政の全軍突撃を聞いた氏郷は彼らしいと笑った。
「我々も始めるとしよう。相手は尾藤隊だったかな?」
家臣の蒲生郷安に聞く。
「仰る通りでございます。しかし誠に気をつけるべきは松尾山の細川忠興かと……。」
「与一郎か……。」
氏郷は旧友が布陣する松尾山を眺めた。
「鉄砲隊に攻撃を命じよ。されど槍隊は半分だけじゃ。主力は松尾山に備えよ。」
「ははっ!」
蒲生氏郷の分析では尾藤や戸田など大したことはないとしていた。
そしてその分析は当たっている。
「突撃じゃぁ!全軍突撃じゃ!」
尾藤は氏郷軍の銃撃を知るやいなや全軍を突撃させた。
数では同じ程だが直臣ばかりで構成された蒲生軍と与力ばかりの尾藤軍ではレベルが違うのは誰の目を見ても明らかであった。
そしてそれが分からない秀吉でもない。
「戸田!貴様は堀秀政の相手だろ?」
尾藤の陣に戸田勝隆がやってきた。
「そなたの援軍をやれとの命令じゃ。堀は細川殿が当たる。」
「心配無用じゃ!ほれ見てみよ。今は我らが押しておる!」
どう考えてもウチが援軍出してるからだろと苦笑いしながらも戸田は嫌味を言わず
「そうは申しても用心に越したことはない。手柄は全てそなたにやる」
手柄をくれるなら断る理由はない。
「なら仕方あるまいな。よう働け。」
尾藤は偉そうに言うと自分の席にどっかりと構えた。
対する氏郷は明らかに敵の兵力が増えてきていると感じていた。
「恐らく2倍か……。側面の部隊は動くな。槍衾で攻撃を受け流せ。」
蒲生軍は信長と同じく長槍部隊を組織していた。
この部隊は攻撃力、防御力共に優れその部隊で敵を抑え背後より弓で射るという戦術を使っていた。
(あとは久太郎殿が細川を抑えてくれれば……。)
氏郷の期待通り秀政は松尾山を駆け下りて果敢に攻撃を繰り出す細川軍を相手に半分の兵力ながらよく戦っていた。
「ぇぇい!我らは相手より高地から2倍の兵で攻撃しておるのだろう!何故ここまで苦戦しておる!」
忠興は椅子を蹴りつけた。
「殿、某にお任せくだされ!」
そう言って出てきたのは稲富佑直だ。
射撃の名手で彼の率いる鉄砲隊は精鋭中の精鋭である。
「何か策でもあるのか?」
忠興は強烈な眼光で稲富を見下ろしながら聞く。
「敵は名人久太郎の指揮であそこまで善戦しております。名人久太郎さえ討ち取れば我らの勝ちでございます!」
「なるほど……狙撃か。よし!やって参れ!」
こうして稲富率いる狙撃部隊が秀政を狙って動き出した。
そして織田家の若手四天王の最後の一人、森長可は羽柴秀長軍の先鋒の藤堂高虎と五分五分と言った所だった。
「森軍は突撃主体であまり鉄砲を使ってこないな。」
高虎は戦いながら長可を分析していた。
そして高虎は戦い方を決めた。
「全軍敵と距離を取れ!誘き出して射撃で制圧する!」
高虎は自分の分析が正しいことを信じた。




