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26 認められた夜襲

関ヶ原に両軍が布陣した頃、龍野城には続々と軍勢が集まっていた。


「はっはっはっ!全登よ、外出禁止と言った割にはすぐに外に出れたな。」


俺は全登を煽る。


「全く……。しかし5万も集まりましたか。」


「村上水軍を回しておいたおかげで明智達も全軍を動員しておる。それに四国からも三七様と義兄上が2万は出すそうだ。」


我ながら見事だ。羽柴の方は俺を撃退したと油断しているようだが全部これが狙いだったのだよ!


「宇喜多殿、以前は兵を出せず申し訳なかった。」


明智秀満が謝ってきた。


「いやいや、気になされるな。日向守殿が亡くなられて大変な時に2万も出して頂き感謝いたす。」


「全ては羽柴が元凶。あれを討つためなら我々は命を賭してでも戦いましょう。」


よく言った!やばくなったら頼むぞ。


「とは言え我らは別に秀吉を討つのではあらぬぞ。あくまで占領地の奪還が目的じゃ。」


自分より40近くも年上のやつを諌めるってなんだよ……。


「備前様、お初にお目にかかります。池田三左衛門輝政でございます。」


あっ!のちのち因縁の相手になる池田輝政くんだ!

いやこいつの息子の事なんだけどね。


「おお、池田殿。御家が大変な時に兵を出していただき恐悦至極じゃ。」


「いえいえ、此度は津田様が来ておられませぬ。それゆえ大将は備前様でよろしいですな?」


「ワシで良いなら引き受けよう。されどまだ13ですぞ。」


マジで初陣からこんな早いの吉川元春くらいしか聞いた事ないわ。


「大将は年齢ではなく能力です。備前様にはその能力が在られます。」


そう言って忠家殿くらいの年齢のおじさんが入ってきた。


「磯野殿、まずは自己紹介をされては?」


輝政が言う。

ん?磯野!?


「これは失礼致しました。磯野丹波守でござる。此度は養子信澄の代わりに参陣致しました。」


磯野員昌ってあの織田軍を姉川の戦いでボコボコにした奴だろ?確か降伏して破格の待遇を受けたけど、のちのち信長に追放されるけどこの世界では信澄の所にいるんだな。


「津田殿はやはり?」


「ええ、精神的に病んでおられます。」


みんな病みすぎだろ……。

LINE民やってる中学生かよ……。


「仕方あるまい。 では集まったようなので姫路に向かいましょう。」


リベンジマッチの始まりだ。

覚悟しろ秀吉。


中央が荒れているころ滝川一益は会津から撤退し西に進んでいた。芦名家を降し滝川家は与力を含めれば200万石近くにまでになり北条氏を凌ぐ勢いだった。


「父上……なぜ西に行く必要が?」


「一忠、分かっておらぬな。秀吉が少ない兵で権六と戦おうとするか?」


「仕方ないと考えているのでは?」


「たわけめ。おそらく調略でも何でもするぞ、あの男は。」


「例えば……?」


「考えてみよ。」


「徳川とか……?」


一忠が恐る恐る聞く。


「恐らく日和見では無いな。あの狸は領土拡張を狙っておる。」


「しかし周りは織田領です。それは厳しいのでは?」


「羽柴との挟撃ならどうじゃ?」


一益の発言に一忠の顔がひきつった。


「少なくとも家康は少なからず上様に恨みを持っておった。さて、恩義か怨恨かどちらを取るか見ものじゃな。」


そう笑いながら言う一益に一忠は不気味さすら感じた。


そしてその日の夜、関ヶ原。


「左近殿、敵陣はあの辺りでしょうか?」


銃を持った三成が聞く。


「ええ、この辺りは柴田勝豊の陣でしょうな。」


三成の質問に答えたのは筒井家の重臣の島左近だ。

このコンビを見た信家は興奮するだろうが少なくとも現時点では主従関係ではない。


「鬼柴田の跡継ぎですか。始末しておけば後々楽になりそうですな。」


「ご名答。勝家はもう若くありませぬ。次世代の将には死んで頂くのが1番です。」


冷酷だが合理的な人間だと三成は感じた。


「とりあえずやつを誘き出します。私の手のものが既に入り込んでいるのでそろそろ頃合かと。」


その頃左近の家臣が勝豊の陣に入ってきた。


「申し上げます!柴田様より至急話があるとの事!」


それを聞いた勝豊はすぐに向かった。

明日のことで激励でもしてくれるのだろうと期待しながら。

しかし彼を待っていたのは激励でも勝家でもない。

三成の構える銃だ。


ダァンッ!と銃声が夜の関ヶ原に響き勝豊の心臓を貫いた。


「今だ!撃ちまくれ!」


左近が命じると根来衆の集中砲火が柴田軍を襲った。

銃撃は5分ほど続き交戦しようとした柴田軍は尽く撃たれた。


「そろそろ頃合いじゃ。撤退するぞ!」


左近の合図と共に奇襲部隊は撤退した。

勝豊死すという報告はすぐに勝家に届けられた。


「そうか……敵の夜襲に……。」


「殿は柴田様から呼ばれたと聞いて嬉しそうに……。」


勝豊の家臣が泣きながら報告する。


「分かった……。ご苦労。」


勝家は勝豊に申し訳ないことをしたと思った。

確かに才能はもう一人の養子である勝政や同年代の盛政や秀政などに劣っていた。

だからこそ奮い立たせようとして冷たく当たっていたのだがこの結末を生んでしまった。


(見ておれ勝豊……。そなたの死は無駄にはせぬぞ。)


勝家は拳を握りしめ空を眺めながら小さな声で言った。

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