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24 四国旅行開始

「ここが能島か……。要塞みたいなところだな。」


能島に上陸した俺たちはその設備に感服していた。

こりゃ九鬼嘉隆も1度はボコボコにされるわ。


「しかし何も連絡せずに来て大丈夫なのでしょうか?」


宗茂が不安げに聞く。


「大丈夫だろ。連中も一国の大名を殺しは……。」


俺がそう言おうとするといきなり近くにいたやつに銃を突きつけられた。

囲まれたかぁ……。

宗茂と親次は言わんこっちゃないって顔してる。


「なんだおめら。」


「お、落ち着け。ワシは宇喜多備前守信家じゃ。村上武吉殿に御用があって来た。」


俺は両手を上げて言う。


「備前の連中は織田の家来だろ!木津川で俺の弟は死んだんだ!」


そう言って1人の海賊が斬りかかってきた。

俺も咄嗟に身構える。


「おやおや、我が殿は交渉をしに来たのです。決して村上殿を滅ぼしに来たのではありませぬ。それにその当時は我らと村上殿はお味方同士だったではありませぬか。」


宗茂が指で刀を止めて笑いながら言う。

バケモノかよこいつは……。


「これは我が家臣が失礼致した。拙者は村上家の棟梁の村上武吉でござる。わざわざ備前より足をお運び頂けるのは嬉しゅうございます。」


そう言って親父くらいの年齢の男がニコニコしながらやってきた。


は?こいつが村上武吉だと?もっと豪快な感じで戦国BA〇S〇〇Aの長曾我部元親みたいな喋り方かと思ったがどちらかと言うと文化人って感じの見た目だ。

そういう趣味があったとは聞いているが意外だな。


「これは武吉殿。お初にお目にかかります、宇喜多備前守信家でござる。こちらは家臣の立花宗茂と志賀親次でごす。」


俺は挨拶して2人を紹介する。

2人も頭を下げた。


「立花に志賀と言うと大友の方ですか。その折は大変でしたでしょう。まあ挨拶はこの程度にしてささ、お入りなされ。」


俺達は能島城に案内された。

城はなんか男臭かった。

武吉はともかく、周りの連中はイメージ通りだ。


武吉は俺たちを部屋に案内すると茶と菓子で持て成してくれた。


「わざわざ宇喜多殿がお越しとは何用ですかな?」


ニコニコしながら武吉は聞いてくる。


「無理も承知でお願い致す。織田領と龍造寺領の間の海峡を守って欲しい。」


「ほう?守るとは?」


顔色ひとつ変えないな。


「我らは謀反人の羽柴を討たねばなりませぬ。それには中国の軍勢が必要不可欠、されど中国の明智と津田は龍造寺の襲来を恐れて動こうとしません。」


「なるほど。つまり我らに織田様の背後を守れと……そう仰られるのですね。」


「左様。無理を承知で頼む。」


「しかし宇喜多殿の備前には塩飽の連中がおりましょう。彼らに任せては?」


「連中は四国の三七様と共に淡路への対処をしておる。それに村上殿程の軍でないとダメなのじゃ。」


「なるほど……。しかし我らは紀伊の雑賀衆のように主君を持たぬ傭兵です。それ相当の報酬は得られるのでしょうね?」


「もちろん織田家より送られよう。どうかお頼み申し上げる。」


まあ信雄が出すかは知らないが気前のいい男だったので出してくれるだろうと勝手に確信して俺は頭を下げた。


「なるほど、承知致しました。早速水軍を派遣致しましょう。」


よしきた!

これで中国の連中も動いてくれるだろう。


俺たちは武吉からお土産を貰って親次と宗茂にそれを持ち帰らせて讃岐の十河城へ入った。


「淡路はまだ落ちませぬか?」


俺は怪訝そうだと思う顔で信孝様に聞いた。


「羽柴の仙石権兵衛は中々の猛将でな……。攻めあぐねておる。」


いや長宗我部がいるだろ!


「長宗我部軍は何故動かぬのです?」


「如三が討ち取られてから兵共が動揺しておる。戦に出してもまともな戦力になるかな。」


やっぱり土佐の出来人の死はデカいか……。


「それではいつまで経っても上様の仇は討てませぬ!私めが尻を叩いて参ります!」


俺は頼りない連中にイライラしながら土佐の岡豊城に到着した。

異様なくらい暗い空気が流れている。

長宗我部領に入った時からこんな感じだったがこれはひどい。


「ああ、これは備前殿。わざわざなんの御用で?」


俺を出迎えた家臣の吉田貞重が言う。

いや元気ないの丸わかりだぞ!


城ですれ違うやつも全員どんよりとしている。

マジで元親死んで半年経ってんだぞ?


「おお、これは信家殿。二条城以来じゃな。」


え?大広間の中央に控える信親は割と普通そうだ。

むしろ元気そうだぞ?


「あの……失礼ながら土佐の他の者はみな悲しそうにしております。なぜ義兄上(嫁の姉ちゃんの旦那)はそのようにお元気そうなので?」


「はっはっは。初めはワシとて父上を失のうて辛かった。されど未来を見なければならぬのじゃが家臣共がなぁ……。」


この人は普通の考えだ。

いやどんだけ長宗我部の家臣は元親に盲信してんだ。


「それでは喝を入れられては?」


「ワシとてそうしたい。されど今は奴らの気持ちを尊重したいのじゃ。」


アホか。まずは目の前の戦に集中しろよ!


「そのように弱腰ではいつまで経っても上様の仇は取れませぬ。早う喝をお入れくだされ。」


俺は怒ってますよ感を出して言う。


「うーむ。しかし久武親直を初めとした家臣たちが腰を上げねばならんのじゃ。」


長宗我部家というのは一領具足という中央集権化やら兵農分離やらから最も離れたシステムなので諸豪族が動かないのは分かる。

しかし久武親直は長宗我部の譜代家臣だろ!


ただこの時点で信家は久武親直が怪しいのは確信していた。


史実で長宗我部を滅亡に追いやった男だ。

何か裏があるな。

俺はそう確信し反久武派の吉良親実の元に向かった。




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