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23 西海の熊さん

えっ!テストまであと1週間足らず?

なのに作品の残りストックはあと5本だけ〜!?

という事で毎日更新が出来なくなる可能性があります。

ごめんなさい。

明智秀満や津田信澄の予想、それに秀吉の意に反して龍造寺軍は大挙して島津領へ侵攻していた。


「父上!敵は目の前に迫っておりますぞ!何故出られぬのです!」


佐土原城にて島津家久の子の豊久はぼーっとしている父の家久に怒鳴りかかった。


「ああ……左様じゃな。」


「いい加減にして下され!このままでは日向は肥前のアナグマごときに奪われますぞ!」


「蝙蝠じゃ……蝙蝠がワシを……。」


家久の意味不明な発言が豊久には理解出来なかった。

では稀代の英雄である家久が何故こうも腑抜けてしまったのか説明しよう。


先の戸次川の戦いの前に長宗我部如三はとある怪しげな薬を南蛮人より入手していた。

それを矢に塗って射れば敵は幻覚が見え頭がおかしくなると。

そこで戸次川にて家久が信孝や信親の脅威にならないように乱波に命じて吹き矢で狙撃していたのだ。


その時の家久はかすり傷か何かだと思って気にしていなかったが1週間もすると体が痺れ今となっては何が起きているのか自分でもわかって居ない。


「おのれぇ……、このままでは……。」



豊久は見るに堪えない父を後にし壁に拳を叩きつけた。

だが豊久にできることは何も出来なかった。

龍造寺軍の侵攻に今まで島津に仕えていた豪族はどんどんと降伏し肥後では相良や阿蘇などといった有力国人も降伏していた。


「クマめ……。こちらには公方様がおわすのじゃぞ!」


将軍というブランドに取りつかれた義久もまたかつての姿を失っていた。


「いい加減にせんか!龍造寺は足利など興味は無い!やつは九州を欲しておるのじゃ!」


義弘が義久の胸ぐらを掴む。


「ではなぜ公方様を送り込んだのじゃぁ!」


「初めからそれが策だったのじゃ!足利は奴らの播いた餌に過ぎん!」


「なんじゃと!公方様を餌などと無礼千万!弟とはいえ容赦せぬぞ!」


「目を覚ませ兄者!このままだと肥後と日向は愚か薩摩まで取られちまうぞ!」


「有り得ぬ!公方様がおわす限り島津は負けぬわァ!」


「その公方が邪魔なのじゃ!忠長よ、足利を斬って参れ!」


「合点承知!」


義弘は従兄弟の忠長に命じた。

忠長は直ぐに数人の家臣と共に出て行った。


「勝手なことをするなぁ!公方様を斬るな!」


「黙りやがれ!」


ついに堪忍袋の緒が切れた義弘は義久に強烈なグーパンを喰らわせた。

義久は気を失い崩れ落ちる。


「誰ぞ兄者を休ませてやれ!ワシがこの城に籠城し指揮を取る!」


こうして島津の指揮権は義弘ら武断派に握られた。

忠長らは足利義昭とその一行を討ち取りここに足利幕府は完全に滅亡した。


この仕打ちに最も驚いたのは歳久である。


「誰かある!すぐに兄上をお止めしなければならぬ!」


「恐れながら、もはや島津に龍造寺と争う力は残っておりませぬ!」


家臣の鎌田政金が言う。


「やはりそうか……。これは龍造寺に降伏するしかないようじゃな。」


「しかしお2人を説得出来ますでしょうか?」


「兄上(義弘のほう)の派閥の中核を担う忠長を落とす。さすれば兄上も折れるだろう。」


早速歳久は忠長を呼び寄せた。


「これは又六郎様、なんの御用で?」


「なぜお主を呼んだかくらい分かるであろう。島津のこれからじゃ。」


「無論龍造寺を叩き潰し……。」


「その余力がどこにある?当主が幽閉され次男が現職の将軍を殺し四男は頭がおかしくなったのだぞ?」


「しかし我ら薩摩の兵は天下一でござる。このまま易々と負けは致しませぬ。」


歳久はため息が出た。


「その根性論が間違っておるのじゃ!我らに残された道はひとつ、出来るだけ良い条件で龍造寺に降伏することじゃ!」


「何を申されます!島津は代々続く守護大名!成り上がりものの龍造寺になど……。」


「ではその守護を支配する将軍を殺したのは誰じゃ!?お主らは自分で島津の正当性を潰したのだぞ!」


歳久にキレられて忠長は少ししゅんとしたあと表情を変えた。


「申し訳ありませぬ……。私めが安直でございました。この責任を負いこの場で腹を……。」


「腹は斬らんで良いから行動で示せ。何としても兄上を説き伏せてこい。」


こうして忠長は義弘を説得したのだがもちろん義弘は納得しなかった。

そこで歳久自らも3回に渡り説得し何とか義弘も同意した。


「山城守、島津が降伏したいと申しておるぞ。」


種実が言うと隆信は腰を抜かした。


「なに!?あの脳筋共が降伏だと……。全く信じられん。誰が言い始めたんじゃ?」


「三男坊の歳久らしい。島津では珍しい文治派よ。」


「ならそいつに島津は任せるか。で、主戦派はどいつだ?」


「次男の義弘じゃ。足利を斬ってまで我らと戦おうとしたらしい。」


それを聞いて隆信は吹き出した。


「ほんとに頭の回らない連中だな。家久が出てこなくて助かったぜ。」


「処分はどうする?」


「歳久の働きに免じて薩摩は残してやる。しかしそれはあくまで歳久に与えるものじゃ。義久と義弘は切腹、家久は出家せよ。」


この条件に義久と義弘は家名を残せるなら致し方なしとしてこの条件を受け入れ桜島を眺めながら自害した。

家久は毒が回って体が動けなくなりそのまま薩摩に向かう道中で病死した。


こうして島津家は4カ国の大大名から薩摩一国の大名に再度転げ落ちた。

この処遇は豊臣秀吉の九州征伐より厳しいものだった。

島津は脳筋運動部、歳久くんは成績も良い優等生で足利義昭は部長の義久くんを誑かす美人マネージャー。


島津ファンの皆さんごめんなさいね。

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