21 川中島決着!
川中島編はかなり中身が薄いですね()
本作は転生した信家とそのまわりで起きる史実とは違う歴史が主軸なので信家が出てこない回はそれなりにあると思います。
あとバッドエンドかハッピーエンドか悩んでます。
「殿!玄蕃殿の部隊が川を渡り北条綱成の軍を攻撃しております!」
「なにぃ!諦めの悪い男だ!奴ごと地黄八幡を粉砕してやれぃ!」
血管が浮き出るほどにキレた長可も自ら軍の先頭に立ち突撃した。
「権六も悪い奴じゃ。玄蕃が抜け駆けするのを分かっていて勝蔵殿に先陣を任せたか。」
金森長近は笑いながらそれを見ていた。
養子の可重は不思議そうに尋ねた。
「どういうことです?」
「亡き上様と同じ考えじゃ。好敵手同士の対立を煽り競うように戦わせる。そうすれば相手より手柄をあげようと双方共に奮迅しよく働くということじゃ。」
「なるほど……。さすがは柴田様ですな。」
可重は感心しながら戦場を眺めた。
対岸の北条本陣では。
「申し上げます!敵が上総介(綱成)様の部隊に攻撃しております。」
「来たか……。地黄八幡の力、見せてもらおうぞ。」
「源三様、我らもそろそろ。」
隣に控える木曾義昌が氏照に聞く。
「ああ、敵に突撃し掻き乱して参れ。」
木曾義昌は武田信玄の一門であり強力な騎馬隊を有している。
これに氏照は期待していた。
「地黄八幡はどこじゃァ!ワシは柴田軍先駆けの佐久間玄蕃允盛政!勝負致せ!」
「黙れェ!俺が織田軍先駆け、森武蔵守長可!不届き者の玄蕃に代わり俺が相手してやらァ!」
長可と盛政はお互いにマウントを取り合いながら北条軍と戦っていた。
「どっちがどっちかわからんなぁ。2匹まとめて始末するか。」
地黄八幡こと北条綱成はその2人の声を耳をほじりながら聞いていた。
「父上、お年なのですからあまりご無理はなさらぬ方が。」
息子の康成が心配そうに言う。
そもそも綱成は隠居しており70歳ととんでもない高齢だ。
「無理もクソも何もしとらんわ。あのクソガキが来てくれって言うからわざわざ来たら鬼柴田じゃなくてよく分からんガキに攻撃されてるがな。」
「殿のことをクソガキと言うのは……。」
「クソガキはクソガキだろ。そもそも黙って織田に従っておけば俺は静かな隠居生活を送れたのにな。」
はぁ、昔の父上は偉大なお方だったのに……。
先代の氏康様が亡くなられてからは女遊びと酒ばかり好まれて困ったものだ。
「しかしうるさいガキ共だ、黙らせてくるか。」
「え?」
康成はキョトンとしていた。
「弓持ってこい。」
綱成は弓を受け取ると机の上に登った。
「尾張のガキ共に坂東武者の戦い方を教えてやるよ。」
綱成はそう言うと弓を引いた。
「ギェッ!」
矢は兵の間をすり抜け長可の肩に当たった。
「ふふふふふふ、はっはっはっ!この程度か地蔵八幡!俺はもっと強いぞ!」
矢が当たった長可は逆に勢いが増し、更にそれを見た盛政まで暴れ始めた。
「父上……あれでは火に油を注いだだけでは……?」
暴走する二人を見て康成は冷や汗を流した。
「あんなの二人相手にしてたら命がいくらあっても足りんな。玉縄に帰るぞ。」
「えっ?」
「玉縄に帰るって言ってるだろ。見てみろ、うちの軍と向こうの軍では勢いが違いすぎる。これじゃあジリ貧だ。。」
綱成の鶴の一声で撤退し始める綱成勢に対して木曽勢は佐々勢に突撃しようとしていた。
「来たな、裏切り者め。鉄砲隊構え。」
成政は突撃する木曽勢を見て平気な顔で待ち構えた。
「よし!撃て!」
成政が声を上げると同時に大量の鉄砲が火を吹いた。
成政は滝川一益や明智光秀に匹敵する鉄砲の名手だ。その配下のものたちも同様である。
敵の指揮官を的確に狙撃していく。
成政が善戦している頃、利家率いる長槍隊も木曽勢を叩き潰していた。
「内蔵助に負けてられぬぞ!叩き潰せ!」
前田勢の槍衾に木曽勢は手を出せなかった。
北条軍は綱成率いる精鋭の撤退などもあり織田軍に一切手を出せなかった。
「なぜ綱成は撤退したのだ!ふざけるな!」
氏照は撤退する味方を見て椅子を蹴った。
「木曽勢も苦戦しております……。このままではお味方総崩れかと!」
家臣が言う。
「たわけが!ここで撤退すれば兄上と氏直殿がなんと仰られる!」
「申し上げます!大道寺、松田両隊が撤退しております!ここは兵を引かれるべきです!」
別の家臣も言う。
「ええぃ!黙れ黙れ!我らは負けておらぬぞ!」
そうキレる氏照の目に2人の突っ込んでくる騎馬武者が見えた。
「地蔵八幡は取り逃したが氏政と弟で満足してやらァ!覚悟しろ!」
「黙れ、勝蔵!ワシがやつの首を取ってやるわ!」
「陸奥守様をお守りせよ!あの二人を通すな!」
「ええぃ!逃げるぞ!」
氏照は家臣に守られながら逃亡した。
大将が逃げた北条軍は頭を失った獣のように崩壊し残った兵は長可と盛政に討ち取られた。
「氏照は取り逃したか……。」
2人が討ち取った大量の首を見て勝家は静かに言った。」
「申し訳ありませぬ。かくなる上は腹を召しまする!」
盛政が言う。
「いやいや、さすがにそれはやりすぎじゃな。」
成政がツッコむ。
「しかしこれで北条方は信濃より兵を引くだろう。講和の使者が来るまでワシが勝蔵と玄蕃を率いて信濃を取り返そう。」
「うむ。任せたぞ、長近。」
勝家が長近の方を見て言う。
「此度はみなよく働いてくれた。三介様もきっとお喜びだろう。」
勝家は諸将の働きを労った。
その頃、大垣城を包囲する秀吉の元に吉継が訪れた。
「殿、良き知らせと悪き知らせがございます。」
「なんじゃ、悪い方から聞こう。」
「龍野が奪われました。」
「家政は何をしておった!攻め手は誰だ?明智も津田もまともに戦える状況ではないじゃろ。」
「宇喜多です。」
「あの小僧か……。備前を攻めた時に直家共々斬っておけばよかったわ!それで良き報告とは?」
「宇喜多はそのまま姫路を攻めたのですがそこで家老の花房正幸を討ち取り秀勝を捕らえました。」
秀吉の顔色が変わった。
「なに!秀勝を捕らえたじゃと?今はどこにおる?」
「佐和山城の牢に入れております。織田との良い交渉材料になるかと。」
「よし!秀勝を連れてこい。これで大垣城も終いじゃ!」
秀吉はガッツポーズをした。




