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9 信長ブチ切れ事件

誤字報告で信雄ではなく信意と指摘があったのですが信雄の方が分かりやすいので本作では信雄で統一します

俺は顔を上げた。

太った腹にたぬきみたいな顔。紛れもなくこいつは家康だ。


「うっ……宇喜多備前守信家でございます。こちらの方から先に挨拶すべきところを申し訳ありませぬ。」


「いえいえ、貴殿は上様の義理の子。こちらの方から挨拶しなければならぬゆえ、お気になされるな。」


よく平気な顔して挨拶出来るな!お前のせいで俺は八丈島に流されるんだぞ!


「はは、そうですか。ところでもうすぐ宴は始まるのに北条殿のお姿が見当たりませぬが?」


北条家当主の氏政と嫡子の氏直の席は何故かずっと空いている。


「ああ、北条殿はお帰りになられました。上様と考えの違いが出たようで。」


えっ?それめっちゃ失礼じゃないの?


「何かあったのですか?」


俺が聞くと家康殿は説明してくれた。

その説明によるとこうだ。

3時間前、二条城。


「此度は都にお招き頂き有り難き幸せにございます。」


そう言って北条氏政と氏直は信長に平伏する。


「うむ。ところで関東の反抗勢力の鎮圧が進んでおらぬと聞くが?」


「そのような事はございませぬ。あと僅かでござる。」


「いや、上野の滝川一益よりこの書状が届いた。どう申し開く?」


信長が氏政に書状を投げつけた。

そこには氏政らが上野や信濃などで一揆を扇動していると書き記してあった。

氏政の額から大量の汗が出はじめる。


「相模と伊豆以外は召し上げじゃ。異論があるならさっさと帰って戦の支度をするが良い。」


「ふん!良かろう。小田原でキサマの野望を打ち砕いてくれる。」


そう言って北条親子は部屋から出ていった。


「と、こういう感じなのです。」


あーやっぱ北条は潰すつもりだったんだ。


「北条殿も哀れですな。ということは北条討伐の先陣は徳川殿が?」


「まあそうなるでしょうな。ワシとしては北条と織田には仲良くして頂きたかったのですが。」


北条と徳川って縁組してたもんな。


「残念ですな。まあ今宵はそのような事は忘れましょうぞ。」


「そうですな、では失礼致します。」


家康殿は頭を下げ自分の席に戻って行った。

なるほど、この男は見た目は優しそうだ。

多分私生活は普通のおっさんなんだろう。

みんなそうだけどね。


数分後、親父が入ってきて宴が始まった。

俺の前にも羽柴殿が用意したであろう本膳料理が運ばれてきた。


まあ思ってたけど野菜が多いなぁ。備前では生野菜に自作のドレッシングばっか使ってたからそんなに茹でた奴とかは食べてない。

でもそう思ったのは俺だけじゃなかった。


「サル!なんじゃこの野菜の量は!」


親父の怒鳴り声が会場に響くと賑やかな会場が一瞬にして凍りついた。


「 如三、お主もそう思うであろう?」


親父は如三殿の方を向いて言った。


「なんというか味付けが貧乏くさいですな。見たところ肉や魚もあまりございませぬし。おそらくは羽柴殿の思い出の味を再現したのでしょう。これはこれでおもしろき味ですが……。」


「ワシは饗す料理を出せと言ったのだ!お主の思い出など知らぬわ!」


そう言うと親父は羽柴殿を蹴りつけた。

まあキレるわそりゃ。


「さっさと出ていけ!五郎左と久太郎!お主ら新しく献立を用意致せ!」


「ははっ!」


2人が頭を下げ準備を始める中、羽柴殿は背中を丸め出て行った。


あーあ可哀想に。


「父上、流石に怒りすぎでは?」


信忠様が引きつった顔で言う。


「いや、奴は織田家の顔に泥を塗った。これくらい当たり前じゃ。」


とりあえずメインだけ食っておこう。

そう思って俺は鴨とか鯛だけ食べ始めた。


「味濃すぎだろ!」


思わず声に出してしまった。

そのくらい味が濃い。

親父も味濃いめが好きらしいけどこれはダメだったんだろうな。

田舎の農民生まれの羽柴殿が都風の薄い味付けを好まないのは分かってるけど擁護のしようがないなほんと。


「各々方、せっかくの宴の場でサルめが不手際を披露してしまい申し訳ない。飯が出来るまで時間がかかるだろうから北条攻めと九州攻めの話をしよう。」


は?どこからその話が出てくんの。


「北条討伐は徳川殿と上野の滝川を先鋒として北陸の柴田、東山道の信忠、そして東海道よりワシが信雄と五郎左とサルを率いて出陣する。」


まあ史実と変わんねーな。


「九州は信孝と秀勝がそれぞれ中国四国の兵を率いて向かえ。敵を舐めるなよ。」


「ははー!」


諸将が一斉に頭を下げた。


俺は多分秀勝様の旗下だな。

多分九州攻めの先陣は明智殿だろう。

楽に進むといいけど四国勢は不安でしかない。

あの戸次川が起こりそうだからだ。

色々な創作物中で割と史実同様に信親殿は死にまくってる。

フラグを回収しなきゃいいけど……。


その後料理が運ばれてきた。

流石は米五郎左と名人久太郎だ。

ベストな味付けでみんな満足していた。

多分諸将によって味付けを変えたのだろう。


その後俺は親父や徳川殿からお土産を沢山貰いルンルンで岡山城に帰ってきた。


あれ?俺家康と仲良くしてる!?

これもしかしてこの後も上手くいくのでは?

そう期待する俺の知らないところではある陰謀が始まろうとしていた……、いや始まっていた……。


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