第34話〜イレギュラー
…………。
管理者のために創り出された空間で、ベイオルフは忙しそうに動き回る部下たちを尻目にその大元となる案件を片付けていた。
普段の言動から誤解されやすいのだが、ベイオルフは仕事に対して不真面目なわけでも適当なわけでもない。
一つの世界の管理者総括に選ばれるくらいには優秀なのだ。
遊び心を加えることさえ無ければ、上司としての評価はもっと高いものになるだろう。
しかし遊び心と探究心をこよなく愛するベイオルフは常に部下を含めた周囲を振り回していた。
『ベイオルフ様』
部下の1人がベイオルフ専用の執務室にやってきた。
管理者ではない。
そのさらに下の管理者の補佐のための部下だ。
「おや、どうしたのかな?」
『今回の件ですが、チュートリアル最上位者たちの記録の閲覧許可をいただけませんか?』
「構わないとも」
ベイオルフは簡単に許可を出した。
本来ならば最上位者たちの記録は別世界の記録も内包しているため、部下はもちろん階位の低い管理者も閲覧することはできない。
ただの部下に閲覧許可を出したとなれば問題となるのだが…。
「今回のようなケースはだいぶ珍しいからね。実に興味深いことだ」
『……彼はいったい何者なのですか?』
部下は新たに創り出された世界に送り込まれた魂たちのサポーターだった。
ならば規則上問題はない。
「変則者だよ」
『イレギュラー、ですか?』
部下の疑問に、ベイオルフは悪戯っぽく微笑みながら答えた。
「そうだ。変わり者を集めた中でも特に異質なものたち。それがイレギュラーだ」
最初からあの世界に送った者たちは対等ではない。
機会は平等でも、その質が異なる以上対等などありえない。
個体差や性差、生まれや育ちでどうしたって変化は出る。
そこに無理やり同じ数値を当てはめたところで、つまらない結果にしかならないのだ。
だからこそ、ベイオルフは各方面、各分野、有用かどうか関係なく突き抜けた魂を集めた。
上位に入った者たちはその中でも特に変わり種、変則的な者たちである。
故に変則者。
「予選落ちしたイレギュラーもいたが、まぁ彼らの真価はよーいどんで始まるゲームなんかでは測れない。実に楽しませてくれる存在だよ」
ベイオルフは愉快で仕方がない様子で、子どものように笑っていた。
「この世界の時間で1ヶ月後に一度こちらから接触を図る。その時君に働いてもらうから今は備えておくといい」




