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第33話〜最後の手段

…………。


何かが身体から削り取られた。


いや、喰い千切られた。


寒気にも似た喪失感そうしつかんと共にそう感じた。


一瞬、記憶が飛んでしまったが、直前にあったことはすぐに思い出せた。


ぬるりとした動きで、距離を詰められ、喰われた・・・・


何をされたのかは分からないが、何かをされたことは確かだ。


目の前の男の口は俺の体に届かなかったが、それでも確実に攻撃は当たった。


肉体とは別の、俺の中の何かにぽっかり穴が開いたような錯覚がする。


「ごちそうさま、です。じゃあ、質問に答える、よ?」


この男は得体が知れない。


異常なんて言葉で簡単に言い表わすことなんてできない。


どうすればいい?


情報を引き出す以外の選択肢はない。


しかしなぜかそれは愚行ぐこうに感じる。


駄目だ、思考の乱れが治らない。


「僕には、【盗神の加護】がある、から。どんな場所、でも、出入り口、が、あるのならば、入れる、んだ」


「!」


【盗神の加護】だって?


確か特典ボーナスの【加護】の欄にあった選択肢だ。


迷宮ダンジョン探索を見据えた上で、選ぶかどうか最後まで残っていた選択肢の一つ。


チュートリアル最上位者しか選ぶことができない特典ボーナスの項目にあるだけあって、そこにあった選択肢は破格なものばかりだった。


まさかこいつは、チュートリアル参加者なのか?


いや、この世界にも加護を持つ者はいる。


可能性は高いが、決まった訳じゃない。


「もう、質問はない、かな」


「っ!」


目の前の男に対してできるのは質問して情報を得ることだけ。


しかしそれにもデメリットが存在した。


時間稼ぎをしたところで無駄。


時間稼ぎは仲間や事前準備があってこそ意味がある。


万が一の偶然や奇跡を待ったところで現実的ではない。


つまり。


「ゲームオーバー、か。まだチュートリアル終わって始まったばかりなのに」


相手の武器はナイフ一本。


こちらにはナイフに剣もある。


しかし勝ち目はない。


首筋をチリチリと焦がすような危機感は一向に去らない。


何度視てもあれ以上の情報は得られない。


退路は絶たれて、一対一。


この場合、もう取れる選択肢は…。


…………。


1、ナイフで攻撃する。


2、剣で攻撃する。


3、体術で攻撃する。


4、質問する。


5、万が一に賭けて時間稼ぎ。


6、自害する。


…………。


なんだ、意外とやれることはあるじゃないか。


「はは……」


「?何か、おかしい、かい?」


「ふぅ、なんだ。そっちから質問してきたってことは対価に見逃してもらえるか?」


「あはは、はは。それは、無理」


「だろうな」


なんやかん殺されないのは、この男が圧倒的に俺よりも強者だから。


そして先ほどから繰り返し言われる対価というものの存在。


推測しかできないし、確証はない。


だから俺は選択肢を選ぶ。


…………。


俺はナイフを取り出す。


それを見て攻撃に備えようと動いた男の目の前で、俺は持っていたナイフを心臓に突き刺した。


6、自害する。


それが俺にできる選択だ。


呆気にとられたように無言の男の目の前で俺は受け身もとらず前屈みに倒れる。


床にナイフの柄が当たって刃がさらに奥まで押し込まれる。


肉厚のナイフが俺の心臓を完全に貫いた。


おそらく刃は貫通して背中から出ていることだろう。


喀血かっけつする。


薄れゆく意識の中、俺は…

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