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大異世界岡山  作者: 壱角 一馬
3/4

負債と権利どっちがデカい?

「ああ……眠っていたのか?」


 真っ暗な部屋の中で目覚めた。

 自分の部屋じゃない。記憶を辿ると……ロクでも無い映像が再生され、右腕の感触ど膝に乗ったカタログの衝撃を思い出してニヤける。


「母さん、階段はまだ登れなかったよ……」


 しかし、あの子。エルフのリオ。あの子の暴走はヤバい。あんな暴走を公衆の面前でやられた挙げ句、大人の階段を登っちゃったら、オレどうしたら良いの?

 笑えばいいの?

 無理だろ……。

 とりあえず「衣装作って」は禁句としておこう。


「で、そのリオは?」


 隣から明かりが漏れている。織り機とミシンのある部屋からだ。


「てことは、あの子作業中かな?」


 あのテンションだったんだから、そりゃまあ速攻衣装作りに入るわな。

 作業の邪魔にならない様にゆっくりドアを開ける。


「あれ……?」


 作業中だろうと思っていたんだが、工房内は静かだった。

 織り機もミシンも全く動いていない。

 だったらリオはどこへ……?

 工房内を探していると、奥の扉から……。


シャアアアァァァァァ〜……


「コッ、コレは……。シャワーですかな?」


 暴走エロフとの過剰なスキンシップにシャワー音が混ざり合い脳内がヤバげさを増す。


「いやいやいやいや!せ、拙者、こっコレでも紳士です(ゆえ)!!変態といえど紳士です(ゆえ)!!」


 ステレオタイプのオタクを演じてみても動揺は治まらない。

 見たい……!千載一遇のチャンス!?

 だか拙者紳士です(ゆえ)!!


ーーーーーーーーーーガチャ


「あ、起きたんですね?」


 ああ……オレの「紳士」な部分が出ちゃったな………。

 結局、固まったまま(いろんな意味で)動けないうちにサービスタイムが終了したらしい……。


「ああ……ゴメンな勝手に寝ちゃって」

「いえいえ。おかげで完成しましたから」

「ハイ?」


 え?オレ何時間寝てたの?


「時間ですか?え〜と、まだ夜は明けてないですよ?」


 洞窟内だからよく分からんが、まだ日は出てないらしい。

 昨日の帰宅時間から考えたら、4〜5時間で完成したのか。


「作業早いんだな」

「そうですか?まあとりあえず見てくださいよ。ワタシ全力で作っちゃったんですよ!」


 リオが完成した()()()()の衣装を広げて見せてくれる。


「おお……!」


 その衣装は振り袖型の着物にニッカポッカ。どちらも金色の布が使われている。

 その金色の布に、右腕には火炎。左腕には水龍、右脚には緑の風、左脚には切り立つ岩々が刺繍されている。

 腰には少し長めで幅広の白帯が巻かれている。

 後ろを見ると。

「着物なのにフードが付いてる?」

「そうなんです!これがあれば頭も守れますよ」

「なんか、周りが見え難そうなんだけど……」

「そこは抜かり無しです!まずは着てみて下さいよ!」

「あ、ああ……」


 リオに押されて試着室へ。

 こういうの着るのって、学生時代に剣道着を着て以来かな……。

 てか、着ようとして気付いたんだが……。


「裏地すげぇ……」


 裏地マシパネェ。

 細かい魔法陣やら紋様やら文字やら式やらがビッシリだわ。


「表だけじゃないんだな……」


 こんだけ刺繍されてたらさぞかし重い、と思ったが着てみたら案外軽い。と言うか、完全に着たら重さを感じなくなった。


「なんだこれ?」


 服自体の重さを感じ無いんじゃなくて、オレの筋力が上がってるって感じか?


「この服……凄いな……」

「でしょ?ありがとうございます!」


 リオが嬉しそうに微笑む。

 カワイイ……。

 流石エルフ。いや、リオがカワイイだろうな。暴走するとヤバいけど。

 

「まずは裏地なんですケド!刺突、衝撃、溶解、火炎、凍結などなどいろんな耐性を付与してあります!」


 あ、暴走モード気味だ。


「で、右腕には火属性が付与してあります。火属性魔法を撃つ事も付与する事も出来ます!」

「で!で!反対の左腕は水属性で、水属性魔法、付与だけじゃなく回復魔法もかけれます!!」


 あ、魔法あるんだな、この世界。


「右脚は風属性魔法を放てます!コレ使い方次第では高い所から落ちても地面にゆっくり降りれるハズです!」

「左脚は土属性!土属性魔法を撃てます。(ダンジョン)内では土属性はかなり有用だと思いますよ!」


 あ〜暴走気味でもリオはカワイイ。が、コレ以上暴走されるのも困るのでリアルな話で現世に帰って来てもらおう。


「あ、あのさリオ。すげぇいい服ありがとな。で、支払いなんだけど」

「あ、ハイ!支払いですね?職人たる者お代も頂けない様な仕事はするな、自信をもってやった仕事の報酬は必ずもらえ、っていつもの師匠に言われてました」

「そ、そうか。現実を見てる良い師匠だな」

「ハイ!」


 リオが一枚の紙を渡してくる。


「なになに。火炎刺繍3,000円、水龍刺繍3,000円、流麗な風刺繍3,000円、屹立する岩々の刺繍が

3,000円……」


 さらに裏地の各種刺繍へと項目は移り……。


()めて……25,670円?」

「ハイ!張り切って刺繍増し増しでしましたから!」


 ヤバい。手持ちじゃ足らんぞ……。


「あの……リオさんや?」

「ハイ……?」

「ここらでお金がおろせるATMとか……無い?」

「えーてぃーえむ?」


 あ、無さそう。てかATMって物が無さそう。

 どうしよう……?


「あの……もしかしてお金足らなかったりします?」


 明らかにトーンダウンしたリオ。こんなにしょんぼりさせたかった訳じゃないんだよ……。


「ご、ごめんなさい!」

「えっ!?」


 なぜ謝る?悪いのは銭が払えそうにないオレだろ?


「ワタシ、縫製や刺繍の事になると、ちょっと……ほんのちょっとだけ周りが見えなくなると言いますか……」


 あれ、ちょっとなんだ?


「それで以前にも、ちょっとやり過ぎちゃいまして……」

「完成したら凄い額になってた、と?」

「ハイ……」


 確かにリオが確認しなかったのは事実だ。

 が、オレも確認しなかった……と言うか出来る余裕が無かったと言うか……。


「あ〜、オレは払うよ」

「えッ!?」

「あ、今すぐ全額は無理だけど……分割でお願いします……ダメかな?」

「いえ!構いません!大丈夫です!」

「じゃあそれで頼むよ」


 こんなに可愛い娘を泣かせるのはしのびないしな。

 円が使えるならもしかしたらどこかにATMとかあるかも知れんし。

 夢だかどうだか分からんが、折角の異世界(?)なんだから冒険者ギルドで冒険者→(ダンジョン)でモンスター退治→一攫千金!!ってなテンプレもやってみたいしな。

 オレの良いトコロ「好奇心旺盛」が出ちゃったな。


 で、リオへの支払いだけど。手持ち全額払うと先立つ物も無くなってしまう。それだと手詰まり起こしそうだから、2000円を手付に払っておくか。


「リオ。とりあえず手付にコレ渡しとくよ」

「えっ?大丈夫ですか、最初にこんなに頂いて?」

「大丈夫、大丈夫。これから稼ぐのに必要な軍資金はちゃんと残してるから。」

「これから……あの、稼ぐって?」

「ここ(ダンジョン)なんでしょ?だったらそこで……」

「確かに冒険者なら一攫千金もあり得ますが……あ、え〜とお名前まだうかがって無かったですね」

「オレは後藤隆だ」

「ゴトータカシさん……」

「ん?どした?」

「いえいえ!ちょっと珍しいお名前だったので。ゴトーさんですね。私はリオって呼んでください」

「リオ…ってもうさっきからそう呼んでる様な…?」


 なぜかリオがちょい嬉しそうだ。


「で、ゴトーさん。」

「はい。なんでしょう」


 リオが改まって話始める。


「今回の事はワタシにも落ち度のあること。ゴトーさんにだけ割を被せる訳にはいきません。」

「いやいやリオは悪くな……」

「ので!」


 リオが被り気味に続ける。


「ウチの部屋をお貸しします。家賃は要りません。家の裏から入れる部屋の鍵をお渡ししますので、昼でも夜でも問題無く入れます」

「昼でも……夜でも……」


 マジか!?エロフの家に!?昼でも!夜でもぉぉ!!そんな権利いくら出したら頂けるのぉ!?てか、今オレその権利頂けちゃう!?いいの?貰っちゃって??


「いやいや、そんなにしてもらったら悪いし……」

「じゃあ、未払いのお客様の監視って事でどうですか?」

「あ……う……じゃあそれで、お願いします」


 ヤッハァァァァァーー!!


 もう夢でも何でも良いや!夢の異世界エロフ同居生活!!マジパネェっすわ!!


 母さん、オレ近々大人の階段登るかもしれません!

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