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トワイライトシーカー  作者: otsk
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7話:幼馴染と妹

 すでに見慣れた光景に戻ってきたわけだが、人通りの少ないこの場所だからいいものの、もっと駅前とかに出たら人からどう見えるんだろうか。

 いきなり人が現れたって怪現象だな。もっと、この場で倒れてて、急に意識が戻ったとかならあれは夢であったということにもできるけど、凪の様子を見てる限りではそういうことではないようだし。何しろ、夢にしてははっきり覚えすぎている。

 次はもっと探索するところを増やしていく必要があるな。

 しかし、もうすでに日が暮れてしまい、月が昇っていた。時間もどれだけ過ぎたのかわからない。時計だってしてるわけでもない。携帯はあるけど、時間確認すればよかったな。向こうで時が流れてるかどうかの証明にもなったのに。いや、あくまでもそれはこの世界での時間が流れているということであり、向こうの世界で時間が流れているという証明にはならないか。


「長いこと話し込んじまったみたいだな。思ったより」


 こちらとしては向こうの機嫌を損ねてしまい、すぐに追い返されたぐらいの気分だったけど、現実ではここまで時間が経っていたということだ。

 ただ、問題となるのが日付だ。数時間経ってるだけならともかく、日付を跨いでいたらそれは大問題となる。タイムスリップできるわけでもあるまい。過ぎた時を戻すことは不可能なのだ。


「よかった。日付は飛んだ時のままだな」


 確証の持てないものを調査するのはこれほど怖いものか。

 ただ、今帰って大丈夫だろうか。一度凪のところでワンクッション置いてから帰るという選択肢を取ったほうが、まだいいような気も……。

 やめておこう。勘違いされそう。すでにされてるぐらいだし。だから大丈夫という発想には至らない。ただ、締め出される可能性はある。高校三年生にもなる息子をもう少し信用してやってください。信用ならない?まあ、仕方ないか。

 やっぱり、凪に連絡取っておくか。


「もしもし?凪か?」


『あ、想ちゃん。戻って来れたんだ』


「まあ、一応な。一度お前の家に寄っていいか?」


『今どこにいるの?』


「お前とはぐれた場所」


『別に締め出されたわけじゃないのか』


「されてる可能性はある。一度確認して開いてたらそのまま帰るが、開いてなかったらお前の部屋経由してく」


『人の部屋を通路代わりに使わないでよ~』


「管理がガバガバ過ぎるのが悪い。というわけで頼んだ」


『先にシャワー浴びてるー』


 なんでシャワー浴びる必要があるんだ。意味のわからない返答で電話は切られた。

 あと、一応夢芽にも協力頼むか。最悪鍵は自分で開けられるがあまり証拠は残したくない。

 そもそも締め出されてること前提で話を進めてるのもなんだし、夢芽に連絡するぐらいなら玄関の鍵開けてもらえって話なんだけどな。裏ルートを使いたい年頃なんだよ。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 案の定鍵をかけられてました。鍵っ子ではないので、こうなったらインターホンを鳴らすしかないのだが、夢芽が出てくるならいいけど親が出てくるのが非常に嫌です。

 ちなみに現時刻22時を回ったところ。だいたいこの時間には親父も帰ってきてるので親父が帰ってきた時点で鍵はかかってる。

 その点、隣の早瀬家は寝る直前まで玄関の鍵は開いてます。まあ、俺の逃口になってるんですけどね。黙認してるんだろう。

 家に入る前にもう一度電話するか。


「凪。シャワー出たか」


『入っていいよー』


「どういう意味だ」


『想ちゃんのお好きなように〜』


 あいつは風呂場にも携帯持ち込んでるから現状が分からない。いや、風呂場に向かわず、そのまま凪の部屋へと直行してそのまま俺の部屋へと行けばいい。

 一応人様の家なので、あまりうるさくしないように扉を閉めた。大概一番最後まで起きてるのは凪で、凪の両親は寝るのが早い。もう、ここの鍵は閉めておこう。

 凪の部屋は二階にあるので階段を上る足さえも抜き足差し足だ。なるべく音を立てないようにいかねば。

 完全に空き巣の発想だな。悪いことしてる自覚はあります。すいませんでした。


「凪、入るぞ」


「待ったよ!想ちゃん!」


「そしてさよなら。また明日」


「幼馴染をスルーして窓から出て行かないで!」


「せめてパジャマを着なさい。風邪ひくぞ」


「まだ湯上りで熱を逃がしてるんだよ」


「熱が逃げるから急激に体温が下がって風邪引きやすくなるんだよ」


 絶対狙ってたかなんか分からんが、下着姿でベッドの上に横たわっていた。誘いには乗らん。


「このままカーテン開けるぞ」


「幼馴染の体を外に晒していくの⁉︎」


「だったらパジャマを着ろや!ていうか、真向かいはうちの家の壁に当たるから晒されることはない!」


「想ちゃんに」


「今晒してるのはなんだ」


「予行練習」


「本番はこない」


「またまた〜成長してるんだから」


「疲れてるから帰らせてもらう。あと、カーテン開けると多分夢芽のやつがいると思う」


 あいつは監視役だからな。下手に俺が行為に及ばないようになのか、凪が行きすぎたことをしないようになのか。凪の部屋から伝って行くと連絡した時点でおそらく俺の部屋で待機してるだろう。

 ……もしかしたら、俺のベッド占領されてる気がするが。


「夢芽ちゃんが想ちゃんのベッド使ってるなら想ちゃんは私のベッドで一緒に寝よ!」


「お前床な」


「それが幼馴染に対する仕打ち⁉︎」


「お前がちゃんとパジャマを着たら考えてやる」


「もう〜想ちゃんいじわる……」


 しかし、もう少し恥じらいを持ってほしいんだがこの幼馴染。俺なんかほっといても誰も取っていかないと思うし、別にアピールすることなんてないんだが。

 ……あれ?

 もしかして、夢芽が向こうで寝てたら俺は夢芽と寝るか、凪と寝るかの二択なのか?


「ちゃんとパジャマ着たよ!」


「じゃあ帰るな」


「考えるって言った!」


「考えた。考えた上で帰るという選択肢を取る」


「想ちゃんに犯されたって夢芽ちゃんに言いつけてやるー」


「そんなバレバレの嘘はすぐに分かるから。また話するから明日な」


「ぶぅー。とりゃ!」


「……なんだよ」


 凪は俺の手を取って自分の頭に乗せた。


「撫でてー」


「はいはい。おやすみ。ちゃんと宿題やっとけよ」


「あ、忘れてた!想ちゃん見せて!」


「俺は明日学校でやる」


「この天才児め」


 アホの子だが、根は真面目でいい子なので素直に机に向かっていった。そのまま寝落ちしないといいが。

 ここを経由するとある意味想定内だが時間を食うので出来る限りは使いたくない。

 凪の部屋の窓から出て、屋根伝いに俺の部屋の前までたどり着く。今更思ったが、このルート夏場使えねえな。屋根瓦が熱くて足裏死にそう。

 慎重に行きながら窓の鍵が開いてることを確認して中へと戻ってきた。ただ、窓の下が俺の部屋はベッドなのでサッシから足を下ろす前に下を確認した。


「やっぱりいたか……」


 思ったが別に俺が俺の部屋のベッドを使う必要はない。そこが占領されてるのなら、そいつのベッドを使えばいいだけだ。

 うまいこと跨ごうとしたが、ベッドから降りた直後に腕を掴まれた。

 怖えよ。怪奇現象だよ。あっちの世界へ飛ばされた時以上に怖いわ。


「お兄ちゃん……何か言うことはないかな……」


「ありがとうございます夢芽様。そしておやすみなさい」


「はいおやすみなさい。……とはならないよ」


「あの、声のトーン落として喋らないで」


「あまり声出しすぎてもうるさいかと思って」


 なんに対しての配慮だ。


「夢芽にも何してたか教えてくれたら解放してあげる」


「……別に凪とは何もしてないぞ?」


「え、なんだ。つまらない。じゃあ、おやすみ」


「お前は起きてるなら自分のベッドへ行って寝てくれ。なんで俺のベッドを使う」


「私の部屋寒いんだよ。お兄ちゃんの部屋ちょうどいい感じの温度だから……ね?」


 いや、ね?じゃなく。

 もう運び出そう。


「ご退出願いまーす」


「……いいの?そんなことして」


「あん?」


「ここで大声出せばお兄ちゃん大目玉……」


「には多分ならんだろうなあ。どうせ、鍵閉めたところで凪のところから帰ってくるのはわかってるだろ」


「妹を襲ったって……」


「ない事実を言いふらすのはやめてくれませんかね?妹様よ」


「じゃあ、今日は妹の言うことを聞いてよお兄ちゃん」


「……なんだ?ベッドを開け渡せばいいのか?」


「お兄ちゃんが今日の私の抱き枕」


「……持ってきてやるから」


「お兄ちゃんじゃなきゃ意味がないの!あと下に布団敷いて寝るのもなし!一緒にベッドで寝ること!」


「……はいはい。妹様」


 こいつもこいつで何に対抗心燃やしてるのか、監視などとは言ったが、俺に対してベタベタ甘えてくるのだ。身内びいきになってしまうが、そんな妹はとても可愛いし、今回のように結構お世話になることも多いので、こういった要望も時折応えている。妹は兄離れしてくれるんでしょうか。お兄ちゃんは1人で何もできないやつじゃないから、君が世話をしなくとも大丈夫だよ。

 結局、どっちの選択肢を取るのであれ、どちらかにはこのように抱き枕にされてたのだろう。男冥利には尽きる話だが、この2人の将来が心配で仕方ない。

 今日起きたことをまとめておきたかったが、こうも抱きつかれては引き剥がして作業することもままならない。また明日だな……。

 慣れないことが起きてるからか体は正直なようですぐに睡魔に身を任せていた。






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