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トワイライトシーカー  作者: otsk
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38話:いつか終わるこの世界

 後数日で世界が終わります。

 なんて言ったところで誰も信じやしないだろう。きっと、直前まで来たところで変わらず明日が来ると信じてやまない。

 それを素直に信じてる俺も俺かもしれないけど。

 誰に言えば信じてもらえる?

 いや、誰にも信じてもらえなくていいか。どうせ、こんな狭い世界でしか生きていけれないのだから。気にしたこともなかったが、きっとこの街より外へは出られないのだろう。出られたところで生きていく術などないのかもしれない。

 なくなってしまう世界を憂いてもどうしようもない。

 思ったよりも早く終わったことを受け、俺は一度学校に戻ることにした。

 まだ、部活をやってる人たちの声がする。

 しかし、俺は夢芽以外の部活をやってる奴の顔をしっかり見たのだろうか。あくまで、いるという勝手な認識から配置されてるだけの存在ではなかろうか。

 まだいるかどうか電話してみるか。


『もしもし』


「遊、まだ学校にいるか?」


『まあ、そろそろ帰ろうと思ってたところだがなんだ?忘れもんか?』


「いや、部室にいるなら寄ってこうかと思ってさ」


『じゃあ、待ってるわ。すぐ来るのか?』


「ああ。もう玄関まで来てっから」


『あい、早く来いよ』


 電話を切った。

 きっと、遊のやつはこの世界の人間だろう。

 仙石は二つの世界を維持してることになる。しかし、仙石は俺と同じ世界の人間だと言っていた。

 なら、仙石も神隠しにあってるということではないのだろうか。

 あいつの思惑がイマイチ分からない。もしかしたら、俺と同時期か少し前にここにたどり着いて、あらかた調べ倒したのだろうか。

 ならば、なぜ帰らずにここに留まっているのか。


「人のこと考えてもしょうがない、か……」


 とりあえずミス研に行くとするか。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「そーーーうーーーーちゃーーーん!!!!」


 何度も同じ手に乗るか。

 扉を開けると同時に突っ込んで来るやつがいたので、扉だけ開けて俺は避けておいた。

 案の定ブレーキが効かず壁に追突していた。


「さて帰るか」


「いや、せめて回収してけよ」


「今にも復活するからほっとけ」


「幼馴染の愛を避けるな!」


「そんな重い愛は受け止められない」


 痛みしか発生しなさそうだし。しかし、元気だなこいつ。本当に同じように保健室で仮眠取ってたやつなのだろうか。


「あと、夢芽のところ寄ってくけど行くか?」


「そうだ!どうせだし夢芽ちゃんも一緒に帰ろうよ!」


「別にあいつがいいならいいけどな……」


 なんとなく断られそう。しかし、先ほど頼んだことの手前言っておかないとなんで言わなかったの!って怒られるのも目に見えてるし、メールだと見忘れてる可能性もあるからちゃんと言っておいた方が確実で怒られない、と思う。

 こんな些細なことで悩んでるのも今となっては馬鹿馬鹿しいかもしれないが、人間、いつだって怒られたくはないものだ。


「じゃあ、凪のお目付役ありがとう」


「またこれで俺はお役御免かよ!」


「そういえば鳴海さんは」


「早瀬が帰れないなら先帰るって」


 あの人は俺か凪をいじりたいだけの人かよ。いない方が話は進めやすいけども。

 まあ、なんであれ凪は必要か。

 でも、とりあえず遊には一つだけ言っておくか。


「遊。あの写真の女の子だが、本名がわかった」


「え、マジか」


「ああ。……仙石明里。それがあの子の本名だ」


「どこで知ったんだ?」


「まあ、さっき出てた時にな。その名前で何かヒットしたら教えてくれ」


「お、おう」


 向こうは釈然としないかもしれないけど、それは仕方ない。

 それに調べようにもきっと出て来ることはない名前だろう。

 別段、名前が売れてるわけではないのだし。しかし、あいつの家の情報網ならたどり着くかもしれない。

 ただ、たどり着いた時はどうするんだろうか。もしくは、どうなるか、だが。

 忘れてしまえるのならそれでいいだろう。多分、遊のやつがずっとたどり着けないのは不都合があるからだと思う。


「あ、また来た」


「そう言うな妹よ。思ったより早かったうえに行く場所が学校の近所だったから戻って来たのだ」


「夢芽ちゃん部活いつまで?」


「たぶん6時半とかそれぐらいかな……残ってくかもしれないけど」


「お前待てないだろ」


「見学する!」


「じゃあ、凪置いてくから夢芽、頼んだぞ」


「私が預かることなど大変恐悦でございますので、謹んでそちらに返品します」


 なんだかあってるのか怪しい日本語で凪を突き返された。


「だそうだから帰るぞ凪」


「うええ、夢芽ちゃんイジワル〜」


「じゃあ、俺と帰るか、待った挙句夢芽に置いてかれるかどっちがいい」


「いや、さすがに私もそこまで非情じゃないよ」


「夢芽ちゃん忘れてそうだから想ちゃんと帰る……」


「私もあんまり信用ないなー。じゃあ、凪ちゃんはお兄ちゃんと帰るんだね?私練習戻るから」


「ああ。悪かったな」


「帰ったらアイス食べたいなー」


「俺がお前より先に帰れたら置いといてやるわ」


「やった」


 まあ、いつも迷惑かけてるしこれぐらいバチは当たらないだろう。それこそ、ご機嫌取りな気もするが。

 それに、あくまでもあいつより先に帰れたらあいつはアイスを食べられるのだ。

 いつ帰れるんだろうな。

 夢芽は俺たちに背を向けて再び練習へと戻っていった。すまんな、こんな兄に付き合わせて。


「私の家にいれば夢芽ちゃんにアイスを渡すことはないよ?」


「いや、さすがにアイスを奢ってやらないほど俺もケチじゃないから」


「じゃあ私にも!」


「お前は俺の借金を返済してからねだれや」


「うええ」


 別に金の貸し借りをしたわけではないが、膨大な時間をこいつに費やして、世話を焼いて来たのだ。損得勘定をする気はさらさらないが、ここで夢芽がねだるのとこいつがねだるので一緒くたにしてしまっては夢芽の方に申し訳立たない。

 欲しいものを欲しいといえば与えられるわけじゃないんだし、我慢しろということだ。我慢がきかないほど子供でもあるまい。


「アイスー……」


 子供だった。


「はあ……じゃあ、先にコンビニ寄るか。なんか買ってやるよ」


「じゃあハーゲン◯ッツ!」


「お前ガリ◯リくんな」


「選択権なしですか!」


「買ってやるだけありがたいと思え」


「せめてハイパーカップがいいです」


 スーパーじゃねえのかよ。いつのまにグレードが上がったんだあのアイス。

 しかし、あまり自分で買わないせいなのか、本当にハイパーカップなるカップアイスがあった。

 あいつにも買ってやるか。何が好きなんだろか。


「光ちゃんにも買うの?」


「さっき聞いてたろ。光じゃなくて明里だよ、あの子の名前は。今日、本当の名前を教えてやるつもりだ」


「でも、光ちゃんで慣れちゃったし……」


「まあいいけどさ……」


 どうせ後数日だ。

 ……数日?なら、凪はどうなるんだ?凪はこの世界の人間なのか?


「どうしたの?アイスがキーンってきた?」


「いや、アイス食べてねえし……」


 そもそも俺も神隠しにあってると言われたが、あったとしたなら何かしらから逃げてきたという風に言われた。

 何から逃げてきたんだ。


「……行こう、明里のところへ」


 なんとなくチョコアイスを買って、凪を呼びつけた。

 向こうの世界に答えがあるような気がする。

 なんの根拠もないただの直感だけど。


「想ちゃん、何か焦ってる?」


「知りたいだけだ。俺がこの世界に来てしまった意味」


「?」


 凪は何も知らないんだろうか。もしくは忘れてしまったんだろうか。

 さらに考えれば演技が上手いんだろうか。

 なんであろうと、凪が何らかの手がかりになることは間違いないと思う。


「凪も助けたいだろ?明里のこと」


 凪は首を縦に振った。

 俺は、凪の手を取り、また別の世界へと行くのだった。

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