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トワイライトシーカー  作者: otsk
29/45

28話:明日また

 たかだか50分。それだけ経ったのか、それ以下だったのかそれ以上だったのか正確にはわからない。時計見れば一発だろと言われそうだが、たぶん、その時間を認識してしまったらこの世界が崩壊してしまうのだろう。16時ぐらいだったと思うが、また16時から時計が始まっていたのだ。確かに針が進むのを確認しながら進めていたので間違いはないはずだ。


「はい、じゃあ今日やったところ復習するように」


「終わったー!」


「簡単過ぎじゃないかい?」


「できない子に合わせてるからな」


「ああ……」


 納得されてしまった。そもそも高校生、それも今年度受験生の三年生ができない子あつかいなのもこいつはいいのだろうか。しかし、光のやつは本当に頭がいいらしく、教科書眺めてる程度で教えてた範囲は理解したらしく、最終的に先生二人で生徒一人を教えてたようなものだ。この調子だと俺もいらないぐらいかもしれないが。

 まあ、数Iだし、中学の内容がある程度出来てたら理解できるものなんだが……おそらく2年もちゃんと勉強するって言う習慣がなくなってたために中学のとき習ってたこともあまり覚えはいないのだろう、凪のやつは。


「しかし、光は凪より確実に勉強ができるみたいだな」


「先生と呼んでくれて構わないよ」


「光せんせー」


「はい、早瀬さん」


「ナデナデしていいですか?」


「意味がわからないよ!あ、ちょっとやめないか!」


 有無を言わさず、凪は光を抱き抱えて頭をナデナデしていた。

 なんか収まりがいいらしく、光もついに抵抗しなくなった。


「はあ……今日は帰るぞ」


「あ、光ちゃん!これあげる!」


「さっき使ってた教科書?」


「お前はそれで勉強しろ」


「想ちゃんの借りる〜」


「……じゃ、ボクから宿題だ。これを使って次の範囲を予習してきて」


「うえ〜返された」


 妥当な判断だと思う。そもそも光には必要なさそうだし。


「そうだね。ボクはこの学校を捜索してみるよ。想たちは一度帰るといい」


「光」


「ん?」


「俺たち以外に誰か人に会ってないか?」


「どうだろう。最近……といってもどれだけの期間かは分からないけど、君たち以外で出会った記憶はないよ」


「そっか。じゃあ、なんかあったら俺が渡したメモ帳にでも書き込んでおいてくれ」


「なにかあったら……ね。あまり目ぼしいことは見つからないと思うけどね」


「じゃ、明日また来るよ」


「来れる保証はないというのに」


「約束っつーのはすることが意味があるんだ」


「まったく、口が減らないね」


「お前だけには言われたくないな」


「さて……」


 しばらく光は凪の腕に収まっていたが、そこから出て来ると、俺と凪の手を取った。


「明日……うん、君たちにとっては明日かもしれないね」


「だから遠回しに怖いこと言うな」


「明日だといいね」


「もう直接的になったな」


「ふぅ……だからあまり人を長居させたくないんだ。心配ごとが増えるからね。まあ、二度来るようなことがなければなにも問題なかった、って思えるんだけど」


「何度も来る俺は異端ってか」


「そこまでは言わないよ。結局、ボクには何のつながりもないからね。また明日、会いにきてくれるとボクも嬉しい。もちろん、凪も」


「うん!会いに来るよ!」


「明日、また会おう」


 調査が進んだかどうか、そのものさしで言えば、全くと言って進んでないのだろう。

 あくまで一つの見解を出しただけだ。その調査の続きはこちらでということになる。が、はたしてその親父は捕まるのか分からないし、そもそもなんのためにそんなことをしてるのかも分からない。

 ただ、それが元々あった現象で辻褄合わせに俺たちがこじつけてるにすぎないかもしれない。考えるのは自由だが確固たる証拠も一切ないのは事実だ。

 光に見送られ、俺と凪は最初に向こうに行った位置に戻ってきていた。なんなら、向こうから帰った場所と座標が同じ場所に帰ってくれればその方が調査結果は出しやすいのだが、これだと入口が出口みたいな話でしかない。

 その入口の作り方だか、そもそもの存在の仕方を知りたいのだが。何かしら情報があったとするのなら、凪以外にその能力を持った人がいたはずなのだから。

 いや、こう考えることもできるか。

 あくまで、これは二人一組の媒体で、解決するとその能力はなくなって、また別の人に引き継がれる。そもそも、入口の能力を持ってるやつはそもそも持っていたことに気づきすらしない可能性もあるしな。最初は俺一人だけで行ったのだから、凪が関連してるとも考えつかなかったし。


「そもそも引き継ぐ必要性だよなあ」


「どうしたの?まだ戻ってすぐなのに」


「まあ、細かい話はまた明日、だ。遊に報告次第また行くとしよう」


「おじさんの話は?」


「……そうだな。こんな生活を繰り返してんじゃ、母さんとロクに会話できんな。夢芽を使うか」


「夢芽ちゃんやってくれるかな〜?」


「あいつだってイマイチ知らないだろし、いい機会だろ。自分の親が仕事何してるのか詳しく知るのも」


「ふああ〜もう眠いよ……」


 スマホを取り出して時間を確認すると日付が変わるかどうかというところだった。

 下手をすると凪の方は捜索願が出されかねないかもしれないな。だから、不安なんだが。


「本来ならあまり連れて行くべきじゃないよなあ」


「ん〜……」


 凪は俺に対して返事をしたのか、眠気から少し伸びをしてるのかよくわからない声を出していた。


「ほら、手繋いでやるから早く帰るぞ。警察に捕まって補導なんて笑い話にならん」


「むにゃむにゃ」


 もう多分ほとんど寝てるんだろう。本能だけで足を動かしてるような状態の凪の手を引きながら、なんとか帰路へついた。

 凪の家へとつき、制服のまま寝かせるのもなんだったが、俺が着替えさせるわけにもいかないのでそのままベッドへと寝かしつけた。

 ……いつまでこんな生活が続くんだろうか。

 光の心配ごともいうのもこういうのともあるのかもしれない。一回だけの出来事ならば、その一回だけで、また同じようなことになることはないだろう。だが、こうやって続けていれば、いつか体にガタがくる。俺も時間の問題かもしれない。

 体が資本だし、元気でなければ同じように調査に繰り出すこともままならないだろう。

 でも、また明日、会う約束をした。それだけは守ることにしよう。凪の部屋をあとにし、俺も自分のベッドで寝ることにした。




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