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トワイライトシーカー  作者: otsk
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25話:時の流れ

 時が流れないというのならば、人間はその容姿から歳をとらないだろう。

 それはあくまでもそこに“迷い込んだ”人間であることが前提条件だが。

 もしくは、そこでその年で生まれ落ちたか。

 だって、時間が経たない世界で人間が生まれることなんて不可能だろう。あくまで時が流れることによって成長し、赤ん坊として生まれる。が、生まれたところで成長する術もない。

 そうすると、光については二択になる。

 俺たちと同じように迷い込んだまま帰れなくなってるか、もしくは本当にここにあの姿で生まれたか。

 後者だとすると、遊のやつに頼んでることはほぼ無意味なことなんだが、まあそれを確定させる要素がまだないからここで俺が調査をしているわけだ。


「しかしながら、こいつのおかげでここに来れたという認識をしなくちゃいけないということが非常に癪だ」


「想ちゃんが認めるって言った!」


「まあ、そうなんだが。凪、お前は自分がそういう力を持ってるっていう自覚はあるか?」


「自覚?うーん、そう言われるとなんで出来るかは不思議だよ。入院してる間はそんなこともなかったし」


「……次はある程度場所が絞れるようにしとくか」


「あ、次も一緒に行ってくれるんだ」


「お前がいないと行けないみたいだからな。あと、曜日も関係するかどうか確認したいから土曜日もやる」


「日曜は?」


「お前には課題という概念が存在しないのか」


「……忘れてた」


 これが素だから困りものである。いや、まあ、入院していたのだから確かに課題らしい課題はなかったにも等しいのかもしれないが、せめてこれから起こるであろう課題のことぐらいは予想しておいてもらいたい。


「そんなことよりだよ。光ちゃん探さないと」


「まあ、ひとつ思うのは本当に移動してるかどうか、だが」


「なんか変なふわわ~って感覚があったから移動してると思う」


 おそろしく抽象的な表現でしかないが、普段生活しているのならば体感しないであろう感覚が一瞬起こったから移動したということで結論付けるらしい。

 俺たちはそれでいいかもしれないが、詳細を知りたい遊にとっては頭を抱えそうである。実際問題、説明できるものではないというのが最大の説明だと思う。だめですか?そうですか。ちゃんと調査してみましょう。

 まあ、正直な話は誰でも行けるものではない、現象的なものだ、とそうしてくれたほうがいいのかもしれないが。


「一応、七不思議の調査なんだよな」


「光ちゃん自身が七不思議なの?それともこうやって別世界に来ることが七不思議なの?」


「……どうだろうな。考えてなかった。だが、それを分けて考えると八不思議になるから、まとめて七不思議のひとつって考えてやれ」


「私にとってはどっちも不思議だけど……」


 それこそこいつや光の移動の話についてはちょっとした超能力です☆とかこいつらから説明してくれればいいけど、光の存在については確証の得てないものを野放しにしておくわけにもいかない。

 だからここに隔離してる奴がいるのかもしれないが。


「想ちゃん、想ちゃん」


「今度はなんだ」


「気を隠すなら森の中、光ちゃんを隠すのなら闇の中だよ!」


 闇の中に置いてしまっては目立ちまくりなのだが。いや、自然現象の光ではないか。


「なんで闇の中やねん」


「すいません、ちょっとボケたかったんです。でも、確か想ちゃんの家を活動拠点にしてたよね」


「ああ、そうだな」


「前はそこですぐ寝ちゃったけど、今回はそこを調べれば何か出るかも」


「向こうにとっては俺たちがどこかからか湧いて出た存在だろうけどな。むしろ警戒してもらいたいぐらいだ」


「も~そんなこと言って。本当は光ちゃんに会いたいでしょ?」


「会う会わないは約束だからな。まあ、こちらでどれだけ時が経ってるのかなんてさっぱりだが」


「まあまあ、会えば光ちゃんも喜ぶって」


「そういえば、その光だが、いつもは来れば大抵近くにいるんだが、いないな」


 以前に来た時に凪が怪しげな行動をしたので警戒してるのか?と一瞬考えたが、そもそもの話あいつは一部を除いて記憶がリセットされてるような感じだったしな。


「しかし、このままだと俺の家へはたどり着けないぞ」


「え、どうして?」


「それは昨日のことだ」


「随分と最近な話だね」


「とりあえず、俺は昨日自分の家に行こうとしたんだ。だけど、行けども行けどもたどり着けなかった。その中で気付いたのが、光の記憶がいくらか欠落していたんだ」


「?」


「まあ、順を追って説明するわ」


「君がそれをする必要はないよ」


 隣り合って歩いていた俺たちは、不意に聞こえたその声に二人して振り返った。


「また、来てくれたんだね、想」


「光……」


「なんだい、そんな意外そうな顔をして。前に言った通り友達を連れてきたんだね。……いや、彼女さん、かな?」


「いいえ、違います」

「はい、そうです」


「どっちなんだい。まあ、どちらでも構わないけど。さて、そっちの女の子の方に説明をしないとだね。ボクは、まあ、便宜上光と名乗ってるけど、元は名もない人だよ。想が言うには……以前にきっと、君とも出会ってるんだろう。だけど、ボクには記憶が欠落してるようだ。きっと、取り戻すこともできないだろう。ボクには記憶が欠落してるという感覚はない。あとは……そうだね。何故かは知らないけど、想はボクと出会わないとボクの家へと行けないらしい。というよりは、ボクが案内しないといけないと言った方が正しいのかな?ボクがここで何してるかはさておいて、想はどうやらボクを君たちの世界へと連れて行きたいらしい。でも、連れて行ける手立てがないから、今のところは調査中ということだ」


「ちょっ、ちょっと待て」


「なんだい、君に変わってせっかく説明したというのに」


「矢継ぎ早すぎてこいつの頭が追いついてない」


 なんかもう思考停止してるかのような顔をしてる。

 一度叩いてみるか。


「凪さーん。起きろー」


「は!ここはどこ⁉︎」


「場所は変わってねえよ。お前が説明を理解することを放棄したんだよ」


「少し長すぎたかな」


「とりあえず、お前の家に連れてってくれないか?」


「別に断らずとも勝手に来てくれても構わないのだけど」


「今回は試さなかったが、また行けないなんてことが起きてもアレだしな」


「ふーむ。それが謎だよね。なぜ、ボクに会わないと来れないのか。元はと言えば想の家だ。まあ、もしかしたら世界線として想がいない世界だからかもしれないけど」


「……なあ、一つ可能性の話をしていいか?」


「それは長くなりそうかい?」


「場合によっては」


「なら、先に家に行こう。なんかすでに寝ようとしてる子もいることだし」


「凪、自分が暇だからって寝ようとするな」


「うーん」


 考えることを放棄した挙句立ったまま寝ようとしてる幼馴染を半ば引きずるように連れて行くことにした。

 まったく。なんでこんなデカくなったやつのお世話をしないとならないのか。

 それでも、見捨てようとせずに付き合うあたりはどうしようもなく凪に対して甘いのだろうな、と自分自身に呆れていた。




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