18話:そしてまたループする
別に律儀に月〜日って曜日をサイクルさせる必要性はないと思うのだが。曜日っていう概念があることによって、この日はテンション上がるが、次の日憂鬱だな、という日が生まれてくるのであり、撤廃してしまえば曜日ごときに手のひらの上で踊らされることなんてなくなると思うんだが。
まあ、なくしたらなくしたで、勝手なことをする奴が出てきて、いつの日かのように月月火水木金金などという休みのないクソみたいなサイクルが完成するわけだ。そんなことは断じて俺は許さない。
ただ、日本というのは上に逆らわないのが美徳でも思ってるのか、敬意は確かに払うものだが、あからさまにおかしいことを言ってる場合はやはり糾弾するべきだと思うんだ。無能な上には部下もついてこないんだよ。付いてくると思ってる奴はよーく自分の後ろを振り返ってみてほしい。まあ、俺の後ろについてくる奴なんて1人しかいないのだが。
「想ちゃん、ご機嫌ナナメ?」
「……まあ、お前は悪くないんだけどな、どうしても月曜というものはテンションが下がる。なんで自由な曜日から束縛された日に移行するんだよ。永遠に自由な曜日にしろ」
「永遠に自由にしたら誰も働かなくなるからじゃないかな……。楽して生活したいなんて誰しも思ってることだよ。でも、生きていくために必要なことを得るためにみんな働くんだよ」
「あれだな。働いてもいいが、完全週休4日を所望する」
「そんなシステムを実現させたら、世界は回らなくなると思うよ。たまに想ちゃんって理不尽なこと言うよね」
「いっそのことほとんどの作業をAIに任せたらどうだ?」
「いや、どうだ?というよりエネルギーの枯渇が叫ばれるだけだよ」
「人間誰しも楽な方へ楽な方へと生きていきたいものだ。それを体現してるのが今の社会であり、それはこれからも作られてくことだと思う」
「サイエンスな話だね〜。私には考えつきそうもないけど」
「まあ、考えつく奴はよほど楽がしたかったやつなんだろうな。まあ、その楽をするために膨大な労力を浪費するわけだが」
「結局人任せだね〜」
世の中の人がもっと便利に暮らせるようにしたい→楽になるということだからな。ただ、そのためには凪の言う通り膨大なエネルギーを食うことになり、省エネだなんだと言っても、一部だけならまだしも誰もかしこも使っていたらチリ積も方式でエネルギーを使ってる計算となるのだ。まだ見ぬ無限エネルギーでも採掘できればいいけどな。地球の7割海だし、まだまだ眠ってるだろ。エネルギー枯渇問題は、それすらも使い果たしそうになってから言ってください。
「今日光ちゃんに会えないかな」
「土日は会わなかったな。お前だけで会った日はあったか?」
「ないよ?ちゃんと勉強したのです」
「俺の監視下だけどな。1人でやってくれ」
「何事にもモチベーションが必要なのですよ!私は想ちゃんが褒めてくれればやる気マックス!」
安上がりだな。甘やかすのもあれだと思うが。まあ、でもささやかでも誰か認めてくれる人は必要なのだろう。何かしても、結局見てくれてなければ、それはその人がやったこととは認められないんだから。
果たして、光は1人でいると言ったが、孤独感と言ったものはないのだろうか。時折人と会うと言っても、俺たちみたいな突発的な現象では会わないことだってあるだろうし、そもそもの話、あいつだって記憶が曖昧なところもあるようだ。……これから会う回数を重ねたところで、信頼を得られるのだろうか。
「また放課後だな」
「今日も調査するの?」
「俺としては早期に終わらせたいからな。目処としては4月いっぱいってところか」
「それで終わっちゃうの?もし光ちゃんに会えなくなったらどうするの?」
「だから会えるようにこっちに連れてくるんだよ。その方法を探って、あいつを説得して。そうすりゃこんな面倒なことをしなくても会えるようになる」
問題としてはそんな方法が存在するのか。あとは光自身がこちらへ来ることを拒んでいること。
確かに現状、住所不特定、身元不明の女の子なんてどうやって匿うんだということになる。もっとも、その身元の確認というか調査は遊がしてくれることになってるが。それも見つかるかどうか定かではない。
もっとも、あの世界がどういう原理で存在してるのか、なんであるのか、もし原理が存在するのならば、どうやって作られたのか。そういったことですら、視野に入れないと調査なんてしようがない。
なんで存在するかとういうこともそれだが、存在するのならば何かしらの存在意義があるはずだ。
一番もっともな理由としては光が存在するためなんだろうけど。
考えうる可能性としては、本当に光はあの世界の住人で、こちらでは存在の痕跡すらないのかもしれない。そう考えると、光をこちらへ連れてくるということはある種異物を取り込むということであって、光自身に何が起こるかもわからない。
だけど、リスクを恐れて実行しないのも誰の救いにもならない。
別に光が救いを求めてるわけじゃなくて、俺の勝手な正義感なんだけども。
ただ、あの時が進まない世界というのは、結局誰のためにもなってない気もする。
迷い込んだやつの探し物が見つかると言われているが、実際問題俺の探し物なんてないわけだし、でも、そうすると俺がなんであそこに行けたのか。何度も行くことになっているのか。
……無理やりこじ付けるのなら、本当は探し物があって、それが見つかってないからなのだろう。それなのに光に元の世界に戻されてしまうから見つからない。
前に凪が言ってた通り、光がその探し物であれば解決する話なのかもしれないけど。
だが、その探し物は俺の手元に来ないわけだ。元々俺の所有物なのではないから当然の話であり、あいつは人なのだから誰かのものなんてことは一切ない。
……どうやったら来てくれるんだろう。どうしたら、あの子の存在を証明してあげられるんだろう。
月曜というのは余計な思考ばかり増やしていくようだった。




