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トワイライトシーカー  作者: otsk
11/45

11話:光の日常

 適当な道を歩いて行きながら、俺は光に疑問を打ち出した。


「とりあえず……普段、何してるんだ?」


「探し物をしてるよ」


「いや、そうじゃなくてだな……その探し物をしてる時間以外のことなんだが」


「そうは言ってもね……」


「そうだ。俺たちが今ここにいるけど、その間に他の人が入りこんだりしてないのか?」


「……なかなか興味深い視点だね。大概探し物をするときはすぐに見つかってそれで元の世界へ戻すから考えたことなかった。君みたいに何かを探すでもなくここに来た人は初めてだからね」


 まあ、体がいくつもあるわけでもないし、誰か一人の相手をしていたら、他の奴が入ってきてしまったとしても気付けないか。ただ、なんらかのレーダー的なものはあるようなので、片付いたらまた探しに行くのだろう。その繰り返しなのかもしれない。


「でも、風景を見る限りうちの近所だと思うけど、特にそういう体験をしたっていうのはあまり聞かねえな……もっとも、もっと情報があれば俺が駆り出されることもなかったのかもしれんが」


 もしくはあいつに本当は友達がいない説。あいつが普段喋ってる奴らはなんだったんだ。あまり可哀想な方向へ持って行くのはやめよう。ブーメランにしかならないからな。


「さっきから想はボクに何を聞きたいんだい。イマイチ抽象的で本質が見えてこないよ」


「そうだな……とりあえずはお前はうちの町で七不思議扱いされている。そのうちの六つはすでに解決されてることだが、最後の一つを解明しようとしてここに来ている」


「七不思議……か。ボクが誰かを別世界に引きづり混んで、死体にして元の世界に戻すとかそんなのかい?」


「それだと七不思議じゃなくて普通に事件だ。まあ、大概こんなものはオチがつくのが普通だが、これに関してだけはオチがないのが問題だ」


「……して、その七不思議はどんな内容で伝わってるんだい?」


「根本的にまず遭遇するのは俺たちの世代限定で出会うのは俺たちは光だったが、複数の目撃情報がある。もしかしたら光以外にもいるのかもしれないし、記憶操作の可能性もある。あとは出会うと願いが叶う、とかな」


「よほどいいオチがついてるじゃないか」


「こんな眉唾のものじゃなくてもっと明確なオチが欲しいんだろ。少女のすすり泣きが聞こえると思ったら、風が吹き抜ける音がそう聞こえた、みたいな」


「でも、その実証はボクがそちらへ行かないと成り立たない話だろう」


「まあ、来ても成り立たない話だけどな」


「なぜ?」


「信じねえからだろ。こんな女の子が神隠ししてました、なんて言って通じるか?」


「神隠し……そうか、君たちの世界からこちらへ来ると向こうの世界に君たちが存在しないことになってしまうのか」


「実際に起こった現象を見る限りそのようだ。俺がこっちに来た時元々の世界にいた凪の話を信じれば、の話だけどな」


 その凪はといえば、なんか、ほわほわしながら光と手を繋いで歩いてるが、妹でもできた気分なんだろうか。うちの妹も可愛がってあげてください。うちの妹が今現在何をしてるか定かではないけど。

 神隠しの話は、そもそもの話、光が行ってるものではない、と今は想定している。光はこちらへ誰かが来てから探しに来ているのだ。神隠しをしている本人ならもっと近くにいるはずだろう。しているとしたら、光が何かを願って、無意識下で行っていることになる。


「しかし、どうして俺はこう頻度が高いんだ」


「君が探し物をしているからだろう」


「いや、想ちゃんが光ちゃんに会いたいからだと私は思うよ」


「そりゃこいつに会わないと何も解決しないからな」


「はあ…………」


 こいつに長い溜息をつかれるほど、俺は何か失言をしたか。


「想ちゃんは絶対愛想尽かされるタイプだよ……」


 俺が愛想尽かされようが俺自身に何か影響が出るものではないので、凪の話はスルーする。


「あと、なぜかお前が近くにいるタイミングで起こってる。それと、現実で日中には起こらない。まあ、これは試行回数が少ないだけかもしれんが」


「ふむ。凪が近くにいたら日中でもこっちに来てしまう可能性があるということか」


「そもそも、入れるタイミングがその時間帯というだけで、出るタイミングはいつでもいいみたいだけどな」


 二回目に出た時はすでに日が沈んで、月明かりの道を帰って行ったぐらいだ。でも、今回は日がほとんど沈んでから来ている。このあたりのガバガバな時間設定はなんとかならないのか。などと、それを光に言及してもそれは筋違いというものだ。光は時間の流れないこの世界で生きているんだから。外のことなど分かりはしない。


「もっと根本的にはこの町に住んでやつしかこの現象には遭遇しないのかということだが」


「それはどうして?」


「光の正体が絞れるかもしれない」


「ボク自身いつからここにいるかなんてわからないのに。それに今はこんな身なりだけど、もしかしたら君たちより年上のお姉さんなのかもしれないよ?」


「今この姿だから俺たちは光が12,3歳ということで通す」


「まあ、構わないけどね……別に年齢がどうだからなんだと言われることもないし。君達の態度が変わるわけでもなさそうだし、ボクの態度が変わるわけでもない」


 君は会った時からそんなんですね。もっと敬語を使わらないと怒られますよ。

 これぐらいの見た目だったらちょっと大人ぶってるって考えれば可愛いものなんだが。さらに隣には年相応どころか精神年齢的にはそれ以下のやつはもいるぐらいだ。どうしてこうなったんでしょうね。

 慢心、環境の違い。

 いや、環境の違いはあれど、慢心は違うか。かといって、凪が意識の高いやつになってもそれはそれで今までのイメージが崩れ去りそうで嫌なものだ。

 夕暮れ時の道をしばらく光が歩くままについていくと、あるところで立ち止まった。


「どうかしたか?」


「……まあ、寝る必要はないとは言ったけど、ボクだって寝ないわけじゃない。疲れもしないのかもしれないけど、どこかで寝ろっていう生態信号が働いてるのかもしれないね。そんなわけでボクにも寝床はあるんだよ。ここをボクの住居とした」


「家はないって……」


「君の言うのは自宅、実家の意味合いだろう。それは確かにないよ。あるとしても知らない。だから、ここは、そうだな……アジトとでも言っておこうか。特に何を企むでもないけど」


「そうか。あと、一つ言いたいことがある」


「君は一つと言わずとも何度も物申してるけどね」


「……それはさておき、ここは俺の家だ」


「なら、なおさら気にすることはないね。勝手知ったるわ、他人の家だ」


 気にして。不遜すぎるでしょ君。そりゃ、人の家となれど、ここに居ついてどれぐらい経つのか知らないが、それなりに暮らしてればむしろ自分の家かのように暮らすことも可能であろう。元々住んでるやつがここにいるんですけど。


「隣が私の家だよ!」


「じゃあ、後で行かせてもらうとしよう。……しかし、君の家は何をしてる家系なんだい?」


「うちか?なんだったかな……なんかの研究者だよ。母さんは専業主婦だけどな。親父が何をしてるかは、昔聞いた気がするけど忘れた」


「……そうかい」


 光はなんだか少し寂しそうにそう返事した。

 そういえば、こいつここに来る前の記憶がないから親のことも分からないんだったか。少し無神経な発言だったか?いや、親がいるからといって、親と仲が良いとも限らない。光だって元の親と仲が良かったとも限らない。光は元の親のことを知りたいのだろうか。


「なあ……」


「ん?なんだい、浮かない顔して。疲れてるのなら想も休むといい。頭がスッキリするだろう」


 まだまだ光が何を考えてるか読めない。前に怒らせた時は、確か帰ったところで当てがあるとも限らないし、保証がない、光が幾度も考えてたことを俺が考えなしにその場しのぎの答えをしたからだろう。

 言葉は選ばないといけない。そのためには、光のことを知らなければならない。


「光」


「今度はどうしたんだい?」


「今までに出会った人のこと、覚えてるか?」


「……覚えておきたいのは山々だけどね。一度しか会わないと、よほどインパクトのある人じゃないと覚えてられないんだ。正直、二度目があるとは思ってなかったから、想のことも別れたらすぐ忘れるようにしてた。だから、会ったときはすぐに誰だか思い出せなかった」


 そういえば、二度目に会ったとき、なんとなくよそよそしさを感じた。あまり覚えてなかったのだろう。

 だけど、二度目は名前をつけてあげた。

 三度目となる今回は俺たちの名前を教えてあげた。

 まだまだ、やれることはあると思う。ただ、そのやることをまとめるためにもまた時間は必要だ。ほぼ、こちらに来てから考えればいいと思っていたため、何をしようか迷ってる現状だ。それを打破するために、そうだな、お言葉に甘えて一度休ませてもらうとしよう。

 すでに凪は寝こけているのはさすがだと言いたいところだが、そっちは放っておくことにした。

 寝る前に思ったことは、確かに俺の家ではあるが、どこかまだ違うような点があるような気がしていた。

 そうか、案内されてる部屋が俺の部屋じゃないからだな。親父が確か使っていたスプリングベッドがそこにある。ただ、それが本当に俺の親父が使っているベッドなのかは不明だ。なぜなら、この世界に人が俺たち以外にいないからだ。やはり、なんらかの形で俺たちの世界を模したものなのかもしれない。

 薄気味悪くも感じながらも、精神的疲労は拭えず、ベッドに身を預けていた。





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