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ぼっち、異世界へ行く。  作者: 藍 うらら
第1章 彼と彼女たちの歯車は動き出す
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第七話 働いたら負け

 偉そうかつ横暴たる副リーダー閣下もといスズカに、なんとか情状酌量にて当人の顔つき曰く不服ながらも納得してもらった後、罰金刑で収まることとなったわけなのだが、残念ながらというべきか当然の如くというべきか、俺は通貨を所持してはいなかった。

 ましてや、10万などという単位の通貨を持っているはずもない。

 つまり、罰金刑に服すことも不可能、ということだ。

 第一、お金も食料もなく、上に苦しんだ上でやむなく食事を手にしたという事情であるのに、その上罰金とは、いかに貧者に厳しい世の中であるかがよく解る。

 やはり、お金を持つ者こそが強者となるという原則は、どの世界でも共通のようだ。

 全くもって、世の中は優しくない。


「当然のことよ。お金だって、沢山持っている人はその分努力したからなのよ。つまり、努力の証ってわけ。……って、さっきからなにブツブツ言ってんのよ。早く、10万ゴールド払いなさい!」


「いや、だから持ってないって」


「持ってない? じゃあ、どうしようもないじゃない。やっぱり、実刑に服すしか道はないようね」


 嘘……!? お金なければ情もなし、かよ。

 これも、実社会にはよくあることだよな。つまり、「世の中の理不尽あるある」ってことね。

 絶望、というべきか。

 俺は再度の助けを求めて、先程の優男を見るが、当の優男は微笑を浮かべながら肩をすくめるだけだった。

 おい、謝って損したわ。やっぱり、オマエ、テキ。


「でもまあ、仕方ないから罰金刑のままにしてあげるわ」


「金なら一銭も持ってないぞ」


「誰が、今、支払えって言ったの?」


「え……?」


「働いて返してもらおうじゃない!」


 スズカは胸を張ってそう言い放ったのだった。

 返せないなら、働いてでも返してもらいまひょっか? まるで、強制労働。

 俺が超不安な顔をしていたのを察したのか、スズカは慌てて訂正する。


「まあ、働くって言っても、このギルドでしばらく働いてもらうだけだけどね。そうね、食事も出すし、寝床もあって、とてもいい条件だと思うけど」


「……それ、思いっきり社畜じゃねえか」


 いや、この場合は会社じゃねえから社畜ではないか。

 じゃあ、なに? ギルド蓄、略してギル蓄なの?

 かくして、俺は立派な社会人、いや、ギル蓄になり仰せたのであった。



 ◆◇◆



 立派なギル蓄として、働かされるわけになったわけなのだが。


「で、なにをすればいいの? 激務ノルマ達成必須の営業っすか?」


 体力ないのに。俺は、お仕事楽チン時給激高の求人を求めます。後、週休二日、有給休暇も追加ね。


「はあ? 営業? アンタには、ギルドのためにひとつ重要なクエストに取り組んでもらうわ」


 クエスト? そう言えば、MMOでやったことあるな。

 与えられた基準を満たせば、報酬が得られるんだよな?

 でも、難易度によって報酬のレベルも変わるんだよな。

 俺なんか、低難易度のばっかやってたから報酬も低レベルのやつばっかだったし。


「で、クエストってなに? できるだけ、簡単なのにしてくれよ。インスタントラーメンの待機時間と同じく3分で終了とか。俺、基本仕事しないタイプだから」


「……大丈夫。この街のそばにあるダンジョンを攻略して、ボスを倒すだけだから。確か……、これまでも挑戦した奴らが10人ぐらいいたけど一人も成功しなかったわね」


 そう言って、ニコリと微笑みかけるスズカ。

 さっきまで微笑みの欠片もなかったのに、ここでだけ微笑むな。ホント、悪女だな。

 それにしても、俺、ホントに行かなきゃダメなの? 超行きたくないんだけど。



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