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ぼっち、異世界へ行く。  作者: 藍 うらら
第2章 彼ら彼女らの戦いが始まる
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第三十二話 噂

その後、ミカによって「GF」とゴードンとの疑惑について説明がなされた。もっとも、それは憶測の範疇を出ないものであるのだが。


「なるほど。やはり、ゴードンと『GF』は繋がっていましたか」


 説明を聞くなり、シルバは顎に手をやりながら納得したような表情を浮かべる。おい、何がわかったんだ?


「いえ、こちらとしても少々思い当たる点があったので少々調べていたのですよ。すると、どうでしょう。ゴードンにまつわるある噂を耳にしましてね」


 ほう。仲間は裏切っていないだのなんだのいっていた人間とは思えないほどに素晴らしい対応じゃないか。


「まあ、僕自身はそこまで優しい人間ではないのですよ。だから、疑わしきものは調べておくべきだと思ったまでです。しかし――」


「なるほどね。スズカは違うと言いたいんだな?」


「ええ、おっしゃる通りです。あのお方はあのようなことがあってもなお仲間を信じて疑っていません。僕が聞いた噂通りであれば大変ショックを受けられることでしょう」


 そう言うと、シルバはやや目線を下へとそらす。


「なにはともあれ、その噂とやらを聞かないと事実も何もわからんだろう。もったいぶってないで話せよ」


「ええ、実は――」




 シルバの掴んだ噂とやらは至極単純な話だった。


「――なるほど。つまるところ、このギルド内に『GF』の奴隷売買に関与している人物がいるということか」


「ええ、簡単にいうとそういうことになります」


 であれば、そいつはゴードンで決まりだろう。噂が流れているということはつまり、そこまで証拠をつかむことは難しくないのではなかろうか。

 とまあ、俺は事態をかなり楽観的に見始めているわけなのだが、シルバの表情は明るく無かった。


「確かに、それが一人であればゴードン財務長が犯人であり、それで事態は収まるのでしょう。しかし、それが複数人なのですよ」


「ゴードンだけじゃないってことか?」


「ええ、このギルド内の複数人が関与しているという情報です」


「だとしたら、大問題じゃないか。そもそも、そんな噂があったのならどうしてお前らは何も動いていないんだ。職務怠慢かよ」


「それは耳が痛いですね……」


 俺が素直な疑問を口にすると、シルバは少々困ったような表情を浮かべる。

 すると、これまで俺の隣で静かに事態を見守っていたミカが突然口を開いた。


「シルバさんも、スズカさんと同様にこの組織内で排除されているのではないですか?」


 排除? つまり、疎外されているってことか。


「うん。だって、おかしいじゃない。ギルドの重要ポストに就いている二人の部屋がこんな場所にあるなんて」


 確かに。それは誰もが思うところだろう。

 会社でもなんでもそうだが、お偉いさんの部屋といえばもっと豪勢なものと相場が決まっている。

 てか、お前スズカの部屋も知っているのかよ。


「実は、シルバさん達と別れた後も暫くあの部屋の近くにいたんです。それで、色々と聞こえてしまって……。悪気はなかったんです。ごめんなさい」


 ミカは申し訳なさそうに頭を下げた。

 なるほど。だから、部屋の場所も知っていたし、俺を救出することもできたというわけか。たまたまでも偶然でもないじゃないか。

 頭を下げるミカに、シルバは平生のニヤケスマイルを浮かべると、


「全く問題ありませんよ。寧ろ、よくお調べになりましたね。それに、有用な情報をいただいたわけですから、感謝したいくらいですよ」


 優しく語りかけた。

 なんとも忌々しい顔だ。どうも、神様は生まれつきルックスという点において人を平等ではないものにしようとしているようだ。

 人は生まれながらにして皆平等とか言った奴は誰だ? いますぐ俺の目の前に来てこの事実について説明してみろといいたいね。


「それにしても、だ。そんなに人数が絡んでいるのだとしたら、事は重大だ。はやく何らかの対処をしないと大変なことになるぞ」


「まさしく、その通りですよ。もし、これが公になればこのギルドの存在そのものを脅かす恐れもある不祥事です。しかし、何分証拠がないのですよ」


 証拠、か……。

 証拠があるとすれば、『GF』あるいはゴードンが握っているとしか思えない。


「ゴードンねぇ――」


 俺がその言葉を呟くと同時に、先程の忌まわしい記憶が脳裏に浮かび上がる。


「ちなみにですが、先ほどのあなたの問題行動についてはこちらで内密に処理しておきましたので恐らく問題なく終わると思いますよ」


 シルバは右手を大きく横にやりつつ、やや苦笑気味に話す。

 なんだ、お前の耳にも入っているのかよ。


「いえ、まだあれから時間が経過していませんからそこまで大事になるに至りませんでしたよ。たまたま耳にしたまでです」


 ほんと、すんません……。


「それはいいんですよ。それよりも証拠です」


「そうですよ! 渡月くんの失態よりも今は証拠の方が重要です」


 呆れ気味のシルバに同調して、ミカが皮肉気たっぷりに声をあげる。

 おい、何度も言うんじゃない。どんだけ俺の豆腐メンタルを崩壊させたいんだよ。

 あと、シルバに対しては敬語なのに何故俺に対してはそんな口調なんですかねぇ。

 と、俺が心中で叫んでいた刹那、後方の扉が電光石火の如く乱暴に開かれた。


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