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ぼっち、異世界へ行く。  作者: 藍 うらら
第1章 彼と彼女たちの歯車は動き出す
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第十話 戦闘なのに俺、空気

 スズカが見つめていた林に素早く目をやると、枝が揺れ、その先についた葉がガサガサと音を立てていた。

 まあ、見つめていた林というのも10メートルぐらいは離れていたが。

 そして、しばらくすると4本足を持ち、背中に幾重もの刺を有するモンスターが現れた。

 体長は俺ら人間の身長より少し高いくらいであり、――俺の身長が170センチであるに――2メートル弱と推測される。

 いうなれば、巨大ハリネズミってところであろうか。

 気性は、見た目鋭い背中の針同様に刺々しく荒っぽいもののようで、目の前に現れた俺たちを鋭い目つきで威嚇している。


「なんだ。レベル一桁台の初期モンスターじゃないの」


 その様相を目にしたスズカは余裕綽々の様子で、モンスターの右上に表示されているモンスターコマンドを眺めている。

 そして、堂々たる面持ちで鞘から剣を取り出すと、目前のモンスターに向ける。

 しかし、ふと何故か構えるのを止めてしまう。


「ま、これくらいのモンスターだったら、アタシが倒すまではないわ。アンタが倒してみなさい。お手並み拝見といこうじゃない」


 そう言うと、スズカは剣を下ろして、俺に顎で催促する。

 なんで俺がやらなきゃなんないの? 面倒くさいんだけど。


「まあ、そう言わずにお願いできますか? 一応、同じパーティを組む身としては互の戦力状況を把握しておきたいのですよ」


 横でやや呆れながら微笑む優男もといシルバも、スズカと同様のことをのたまう。

 ホントにやりたくないのだが、今の状況は圧倒的に俺に不利。いわゆる、やらなきゃいけないムード。

 であるからに、不本意ではあるが一応同意しておくことにする。


「へいへい。やりゃいんだろ、やりゃあ……。ま、当然のことだが、実戦経験皆無の俺に期待はすんなよ」


「大丈夫よ。ハナっから期待なんて一ミクロンもしてないから」


 いや、そんなキッパリ言わなくてもいいんじゃないの、スズカさん……?

 今のは謙遜だから。実際はマジで本気出すかんな。実力を思い知るがいい。


 そうこうしているうちにも、モンスターがこちらにターゲットを向け、動き出すのが視界に入る。

 俺は、ゆっくりと剣を出し、適当に構える。

 だが、相手の狂気迫る状況に危機感を感じたので、すぐにきちんと構え直し、振る。振りかざす。


「どりゃあ、どりゃあ、どりゃ!」


 素晴らしい。これぞ、かのレア「キバシシ」をも倒し、レアアイテムを手に入れた俺の必殺技、『振り回す』!!

 その光景を傍から眺めていたシルバが少々引きつらせた笑顔で疑問を口にする。


「よもや、それで『キバシシ』を倒したんですか」


「――無論だ!」


 そう堂々と振り回しながら答える俺に、スズカが呟く。


「そんなアンタに倒された『キバシシ』も、アンタに倒されてしまったことをさぞや悔やんでいるでしょうね」


 なんかさっきから、ずっとけなされ続けているんだけど。なに、俺を徹底的に貶めたいの?

 とにかく、今は自身の剣術に集中することにしよう。

 振る。とにかく、振る。できるだけ素早く、そして、隙をつくらないように。

 一心不乱に黙々と剣を振っていると、敵モンスターの姿は既にすぐそばにまで迫っていた。


「よし、来てみやがれ。レベル3の力を!」


 敵が俺の攻撃範囲に入ったことで、はっきりとカーソルが見える。



 モンスター名:ハリーム

 レベル:9

 HP:300



 れ、レベル9!?

 ちょっと待って。レベル違いすぎじゃん。

 俺が相手との思わぬレベル差に驚いている間にも敵は迫る。

 そのハリームなるモンスターは、徐々に速度を上げ、そして――


 ――俺の横を一目散に通り過ぎていってしまった。


 そして、ハリームが攻撃対象にしたのは、俺の背後に佇んでいたスズカであった。

 あれ……? これは、どういうことでしょうかね。何故か、俺はスルーされているんですが。

 もはや、俺はモンスターにさえ相手にされない程度の人間ってことかい?


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