プロローグ
世界は理不尽に満ち溢れている。
それは、俺が15年間この世界で過ごしてきて、ひしひしと感じることだ。
人間は社会というものをつくり、そのなかでいかに自分自身が優位に立つか、いかに自分が人の上に立てるのか、ということばかりを追求している。
そのせいで、環境は破壊され、戦争は起き、人間が同じ人間同士なのに潰し合い、憎しみ合う。
俺はそんな世界に、嫌気がさしていた。
俺、渡月 向日は、今年で高校1年生。
しかし、高校でも青春とは程遠い健やかなぼっち生活を送っていた。
俺の人生は、ぼっち人生だ。
確かに、小さいころはひとりぼっちであることに抵抗を覚え、なんとかして友達をつくろうと奔走したものだ。
流行に乗ってみたり、ラノベやアニメキャラになりきって、人気者になってみようと試みたり――、様々な取り組みを行った。
しかし、友達なんてものはロクでもない。
例え、友達になったとしてもいつも相手の顔色ばかりを伺い、いつ相手にされなくなってしまうのかと怯えながら生活せねばならない。
ならば、――ぼっちの方が余程マシである。
第一、人間はひとりでは生きていけないと誰が決めたんだ? 現に、俺がここまで生きてこれているではなかろうか。
そんな思考を浮かべながら、いつも通り高校から帰宅の途につくべく道路を歩き、向かいの歩道に行くべく横断歩道を渡ろうとした時だった。
轟音が響き、そちら側にふと首をひねった刹那、俺の目の前に一両のトラックが突っ込んできたのだった。
運転席には、耳に携帯電話を当てている運転手の驚愕の表情が垣間見えた。
つまり、よそ見運転だ。
俺は、死を覚悟し、短いようで長かった15年余りの人生に別れを告げた。
その直後、ガゴンという鈍い衝突音が脳を揺さぶり、俺の視界は暗い闇に包まれていったのだった。