<第二刻:瞬間接触>
お久しぶりです。新学期は駅伝練習やら生徒会やら弁論練習やらでいそがしくて更新できませんでした。もしこんな作品の更新を楽しみにしていた方がいらっしゃるならこの場を借りて全力で謝罪させていただきたいと思います。本当にすいませんでした。次回から週一更新を目標にしてまいります。
ps.第三者視点に挑戦しようとした。梗くん視点と今回の視点どちらがいいか意見をくださると嬉しいです。
原作キャラの登場を待っている方がいるのなら。
リクエストしないと厳しいと思います。オリキャラだけでも完結させられるほど案があるので^^;。(希望してくださったキャラは出来る限り出演させるよう努力します。)
焔をマヨヒガの屋敷に送り、寝かせた梗が翌朝目覚めた理由は朝の日差しではなかった。
隣で寝ていた焔のかかとおとしが脇腹に完璧に決まったのだ。
苦痛に顔を歪ませながらも梗は体を起こすと朝の支度を始めた。
朝食の準備の前にほとんど使われていなかったこのマヨヒガのひとつの屋敷を丸々掃除を始めた。八雲家の屋敷に比べれば小さなこの屋敷も長年蓄積されたしつこい汚れが至る所に見られた。
梗が屋敷の掃除を終え、朝食を作り始めるころには朝日は東の空から指し始めていた。
掃除の時間は実に一刻半(3時間)といったところだったろうか。
焔がまだ寝むそうな目をこすり、寝ぐせをたてながら起きてきたので朝食にすることにした。
○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ●
「美味しい!。梗って料理上手いんだな。」
焔が味噌汁を持ちながらうれしくも以外そうな顔で言った。
「むっかし藍様に叩き込まれたからな。家のことは全部人並み以上にできるぜ。」
梗は昔のことを思い出すように軽い苦笑いを浮かべながら焔の疑問に答えた。
炊事・洗濯・掃除。これらを藍に叩き込まれたのは梗自身がまだ、ただの「梗」だったころの話だ。
「そういえば、昨日言ってた話だけど・・・。」
焔が今度は嫌な話しを切りだすように梗に問いかけた。
「ああ、寺子屋の話しか?。俺はお前の勉学力向上のために通ってほしいんだが・・・だってお前・・・十より先の数を答えられないだろ。」
「うっ・・・。」
焔が自分の弱みをズバリつかれたような表情をみせた。額には「ハハハ」と言わんばかりの焦りの汗が伝っていた。
「俺が教えようにも、俺だって暇な訳じゃないし。なにより俺との一対一の勉強より多くの人に囲まれた環境での勉学のほうが望ましいと思うんだ。お前には多くの他人とのつながりを通して成長してほしいからな。」
「そうか・・・。」
焔は少し俯き視線を梗からそらした。焔自身も多くの人との関わりを持ちたいのだろうがそのたびに過去の忌々しい記憶が脳裏をよぎる。
「・・・。」
「まあ、結局はお前の判断だ強制はしない。まずは自分で決断して動いてみるこった。その行動が正しかったのかっていう答え合わせは実際に行動した後じゃないとできないからな。あくまでお前の判断だ。俺はお前の決断を責めたりはしない。」
「・・・うん。」
焔は黙りこんだ。そしてそれからしばらくの沈黙があったが。梗はずっと考える焔を見つめていた。そして、長い沈黙を破り焔が口を開いた。
「寺子屋に・・・行く。」
「大丈夫か。」
すかさず梗が意志の確認をとる。
「うん。焔ずっと友達なんてできないと思ってたんだ。でも、梗に出会って初めて自分と真剣に向き合ってくれる奴に会えた時嬉しかったし、ほっとしたんだ。そして昨日、橙ちゃんと遊んでたてき『友達だよ!。』って言ってもらえたんだ。そのときも凄く嬉しかった。もし、この行いが間違いでも大丈夫。焔は事実を受け入れるよ。」
ひとつひとつの言葉を絞り出すように出した焔の気持ちはしっかり梗に伝わった。
「わかった。今日からお前を寺子屋に通わせる。早く支度するんだな、そんな頭じゃ友達に笑われるぜ。」
梗がからかうように言うと焔は「え?。」と自分の頭へ手をやった。自分の異常な寝ぐせに気付くと梗にこの頭をずっと見られてたのかという思いがこみ上げ焔の顔が一気に赤くなる。
「治してくる!。」
勢いよく立ちあがり、梗の見えないところへ走って行った。
「治すじゃなくて直すな。」
それを梗は少し頬を緩めながら見ていた。
そうして、焔を寺子屋へ送った梗は八雲家に戻り。いつも通りの仕事を始めていた。
いつもの仕事は簡単に言うと「雑用」だ。屋敷の掃除や衣服の洗濯。藍が結界の様子を見回っている間にこれらの仕事を梗が受け持つ。実際、梗の八雲家での位置づけはこんなものであり。不審火異変の調査中にもこの仕事兼用しての異変調査だった。
「これは、たまってるな。」
それでも、流石の梗でも異変の調査をしながら完璧に雑用をこなすのは難しい。普段より掃除が乱雑になり人間には気付けないのだが、ほこりが普段より多く溜まっていた。今日の梗は掃除を意識的に行い。終わるころには八雲家はいつも通りのピカピカを取り戻していた。
「今日だけで二刻半(5時間)は掃除したぜ、今日は年末か何かか?。おっと、もうこんな時間だ。橙達を迎えにいかねえと。」
○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○ ●
「梗~!。」
梗が寺子屋を訪れると、授業を終え子供たちと遊んでいた焔が俺の方に駆けてきた。
「寺子屋の奴らとは上手くいったか。」
「うん。慧音先生はやさしいし橙ちゃんのおかげで友達もたくさん出来たんだ!。」
満面の笑みで応える焔を見て梗はほっとしていた。梗自身、正直焔が寺子屋の子供達と馴染めるかは心配だった。それだけに焔の笑顔をみて梗は安堵の溜め息をはいた。
「お!梗兄ちゃんじゃん!。」 「本当だ!。一緒に遊ぼうよ!。」
梗に気付いた。子供達がすかさず梗を取り囲み「遊ぼう」と口ぐちに言う。
梗は寺子屋に行く際は尻尾を隠していない、橙も隠さないし、慧音も半人半妖のようなものだから不要という判断だろうが、実際不要で面倒見のいい梗は子供達に兄のように慕われている。
「わかった、わかった。少しだけだぞ。」
「やったー!!。じゃあ、早く速く!。」
子供達は梗の手を掴みひっぱって行く。
「おい、焔。お前も早く来い。」
「え?。焔もか?。」
「当たり前だ、ほれ。」
そういうと、梗は焔の手を掴み自分と一緒に連れて行った。
そのかいあって、初日から焔は多くの友達を得る事が出来た。寺子屋が終わった後、先に橙を家に帰し焔に人間の里を案内した。焔にとっては目に入る全てが新鮮であらゆるものに目を輝かせていた。
一通り里を案内し帰ろうとしていた時だった。向こうから歩いてくる女性にふたりは異変を感じた。身長は現代の単位に合わせると160cm前後と幻想郷の女性では高い部類に入るが問題はそこではなかった。
明らかに漏れているのだ・・・・・・「妖力」が・・・。
まずいと思ったが。梗は平然を装い歩みを止めようとはしなかった。焔は彼女に危険を感じ、梗の右側にさらに寄り添った。女性が歩いてきているのは梗から見て左側だった。
梗と女性はこのままでは体がぶつかる様子だが梗はよけようとはしなかった。それは女性も同じだった。
「ドン。」
二人の方がぶつかる。あたる瞬間梗が左肩をひいたのでどちらかが倒れることはなかった。
「あら、すみません。私ったらよそ見しちゃってました。」
第一声を発したのは女性のほうだった。その声は非常に落ち着いた綺麗な声だったが。梗と焔の二人にとってはその逆に恐ろしい程落ち着いた声は背筋を冷やすことになった。
それに梗は思った。
(よそ見をしていただと?。とんでもない嘘をさらっと吐きやがって、お前はずっと前から俺をみて歩いてきてたろうが。)
しかし、彼女の落ち着いた様子から厄介事を起こすことはないと思い。ありのまま思ったことを話すことにした。
「いえ、こちらこそ、わかっていたのに避けられなくてすみません。では・・・。」
「盗った物を返していただけるとありがたいのですが。」
「はい?。」
彼女はなんのことやらといった表情とそぶりを見せたが梗は続けた。
「あなたの右のポケットに入っている物の事です。さっきぶつかりぎわに落ちたのでしょう。拾って下さりありがとうございます。」
梗は笑顔で彼女を覗き込む。すると、彼女も笑顔になり。
「なかなか、鋭いですね。返す前に言われるとは、これの事ですねお返しします。」
そういって、彼女が取り出したのは1枚のお札だった。
「はい、間違いありません。それでは。」
「そうですね、【また会う日】がくるのならば・・・。」
そういって二人、いや、三人は別れた。しばらくして、焔が彼女に聞かれない事を確認し、小声で切り出した。
・・
「なあ、梗。なんでお札しか取り返さなかったんだ?もしかして気づいてなかったのか?。」
・・・・
「ん?気付いてたさ、あいつが俺のもう片方ポケットをすり抜け財布を盗ってた事ぐらい。」
「じゃあなんで!?。」
「さあ、なんでだろうな・・・。」
「?。」
・
「まったく馬鹿な狐よね~。お札だけで私に勝った気でいるなんて。」
「まったく馬鹿な<泥棒>だぜ、空の財布で勝った気になるなんて。」
「何よこれ!?。」
財布の中には一銭も入っておらずただこう書かれた紙が入っているだけだった。
<な~に引っかかってんだよ(笑)。俺にここ(頭)で勝とうなんて一生速いんだよ馬~鹿。
by.八雲梗>
「ま、そういうことだ。」
「へ~。」
「おのれ八雲梗!。<怪盗>であるこの私を侮辱するとは・・・!。絶対に後悔させてやるわっ!!!。」
お疲れさまでした。誤字・脱字・駄文の指摘をして下さるとありがたいです。
原作キャラ登場リクはこの次の章まで行うつもりです。ドンドンご意見のほうをお願いします!。