プロローグ
とある学校の帰り道。俺は一人で駅の前を歩いていた。
その後、帰り道にはこの薄暗くて、ひと気がないこの道を絶対に通らなくてはならないのだが、珍しく今日は人が一人、俺とすれ違った。
そこで、すれ違った女性…いや制服を着た女子高生に話しかけられた。
「ねぇ、そこのお兄さん。」
ここはひと気がないから、俺しかいないと思い振り向き、彼女と向かい合わせになり。
「なんでしょう?」
っと、答えた。彼女の表情は、少し微笑んでいるように見えた。少しだけ、ほんの少しだけ寒気がした。
「知ってる?人が死んだ後の世界。つまり、死後の世界。そこには、続きがあるって…。」
彼女はこう話を切り出した。俺の真上には、電光灯がチカチカっと不規則に俺だけを照らしていた。
その後も、彼女は話を続けた。
「その世界ではね、まだ自分の記憶もあって体もある。もちろん五臓六腑だって、五感だって全てある。つまり、リアルと変わらずに過ごせるの。あり得ない話でしょ?」
彼女は微笑み、そう言ってきた。
俺はと言えば、こいつがいったい何を言ってるのかさえもわからなかった。馬鹿げてる。どうせ嘘だ。そんなことばかり思っていた。
「それでね、その死後の世界では色々な試練が待ってるの。それはもちろん生死に関わること。けど、あの世界にはいっぱいの人達がいるから、交渉して一緒に戦うこともできるし、対立したっていい。どう?リアルじゃなかなか味わえないし、まるでゲームみたいでおもしろそうでしょ?」
っと、彼女は不気味な笑顔をこちらに向けてきた。怖かった。
これは、本格的にこの人が頭がいってる人にしか思えなくなってきた…。大丈夫なのかこの人は…。警察でも呼ぶべきだろうか…。
「あなた、信じてないでしょ?ふふっ。目を見ればわかるわ…。」
本当に恐怖しか残らなくなってきてしまった。逃げ出そうか。携帯…、確かポケットにあ…
「あなた、警察でも呼ぶつもり?右手がポケットにある、携帯に手を伸ばそうとしてるわ。」
…!?ばれてる!?…やばい、変な汗が出てきた。気持ち悪い…。
「ふふっ。動揺してる人の顔を見るのは大好きだわぁ…。」
そう言って俺の頬を、手でそっとなでてきた。彼女の手は少し冷たく感じたと同時に、寒気がぞっとこみ上げてきた…。
「や、やめろっっっ‼」
ばちっっっ‼っと、俺はその彼女の手を、手で払った。なにか、心を支配されるかのような感覚がしたからだ。
彼女は一歩、ニ歩と後ずさりし、叩かれた手首の部分をさすっていた。
「っと、いきなり何をするのよ…、痛いじゃない…。まぁいいわ、教えてあげる。その世界への行き方の条件を。」
「条件…?」
「そ、条件。知りたいでしょ?」
つまり、条件があるってことは、死んだ人全員がいけるわけではないということか…。死ぬって事を考えるのは嫌だけど、その後の世界を見れる条件がわかるって言うのなら、そりゃ知りたいしな。
「まぁ…、一応教えてくれ。」
「他殺よ、他殺。例えば、事故死。殺害。毒殺。その他諸々全てに関する他殺よ。」
「ってことは、自殺とか、寿命で死ぬのはダメなのか?」
「そう言うことね。後、もう一つ条件がある。それはね…」
そこで、彼女は背中に手を回し何かを取り出したような仕草をした。一体何をしようって言うんだ?
「それはね、私にこの話を聞いた後、私に殺されることよっっっ!!!!」
彼女が地面を蹴ったことに気づいたと同時に、ぐさっ……。っという音と共に、俺の腹から鋭い痛みが走り出した。刺さ…れた…?
彼女は俺を刺したであろう刃物を、鋭く俺の腹から抜いた。それと同時に俺は
「っっっ‼…ゴハッ!!!!」
口から大量の吐血をし、その場にうつ伏せで倒れてしまった。な、何がどうなってるんだこれ…。夢…だろ…?
「ごめんねー!殺す期間は特に決まってはないんだけど、このごろ血が足りなくてねぇ…。ま、殺された人間が私で良かったねー!まだ、自分の人生の続きが見られるんだから…。とりあえず、あっちの世界で頑張ってねー!ははっ…はははっ…あはははは…っっっ!!!!」
彼女は、甲高い声で笑い始めた。
ち…ちくしょーっ!何が、あっちの世界で頑張れだ!本当にあるんかよ、そんな世界っ…!
「…ゴホッ‼ゴホッ!!!!」
そこで、もう一回大量に吐血をしてしまった…。やばい、意識が…。
「実は私は、あっちの世界の住人なの。もしかしたら、また会えるかもねっ。それと、あなたの記憶…」
俺の意識は途絶え、目の前は暗闇に包まれた。