第五話 一年前 決定戦編
そして、武音が一年だった頃のおっぱいチャンピオン決定戦が、開幕となった。
「やべえな…3年たちがこっちに来てる…」
武音は、必死に走っていた。
「あれ?でも、追ってこなくなったぞ。」
後ろを振り返ると、さっきいた3年の集団がいなくなっていた。
「おかしい… 誰か一斉に倒したのか?」
その発言と同じぐらいの時間に、3年の男達の悲鳴が聞こえた。
『ギャアアアアアアアアアァァ!!』
『なんだよこいつら、あっ もう終わりだ』
『なんでだよ!なんで俺を狙ってきてんだよ…………クソ2年がぁ!』
なんと、2年がたった1人で3年生達を潰していたらしい。
「嘘だろ… ありえねえ…何者なんだ…その二年…」
そう、その2年は…
伊藤義徳。
「おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!うおおおおおおお!っぱい!」
伊藤義徳は「おっぱい」という掛け声とともに3年達をどんどん追い詰めていく。
「やべえ…強すぎだろ… って見てちゃ俺も狙われるじゃねえか!やべえやべえ!」
と後ろに逃げようと後ろを向いた瞬間!
「バーカ。もう狙われてんだよ」
2年の大竹留だった。
「なにっ… いや隙だらけだったしな…って喋ってる場合じゃねえ!」
「ふざけてんじゃねえ、ぞっ!」
大竹留がものすごい速さでスイッチを狙ってきた。
「うわっ!!!」
間一髪、避けたものの…かなりギリギリだった。
だが…
大竹留は、勢いのあまりに体と手が前に出ていて、転びそうになっていた。
スキがある…だったら…
「今だっ!!」
武音は、大竹留のスイッチを押した。
「ぐっ…ちくしょう、これまでかよ…」
大竹留は、悔しそうだった。
スイッチを押すことができたと喜んでいる場合ではない。次の相手が待っていた。
そして武音は、一瞬の「スキ」を狙ってなんとか生き延びていた。
そして体力が限界になってきた辺りだった。
彼が登場したのだ。
「こいつ… まあ大丈夫かなぁ。」
満月実だ。
「なんだ…お前…」
「なんだって、もちろん君のスイッチ押しに来たんだけど?悪い」
「いや、そんなことはわかってる…でも…」
「ん?どうかしたのかい?」
「お前…その手…………
血が……………血が、ついてるじゃねえか!!!」
「ああ、殴ったからね。汚い鼻血がついてしまった。キミの顔で拭かせてくれないか?」
「殴る…?人を殴ったのか…?」
「何か問題でもあるのか?ここでは殴ってもいいんだよ。
僕の戦い方は、ひたすら殴る戦い方なんだ。」
満月実はドヤ顔でそう答えた。
「そこまでしてチャンピオンになりたいのか…?」
「ああ。僕は一番おっぱいを愛しているからな。当然、なるだろう。」
「…そうか… さっき、お前は殴ってもいいと言ったな。」
「ああ、確かに言ったな。」
「じゃあ、俺はお前を殴る!!」
「……調子乗ってんじゃねーぞ?」
満月が右の拳をあげた。
これだけでも十分怖いが、さらに怖いのが当たったときの痛さだ。
気絶してしまうかもしれない。最悪の場合、死も…
「ふざけるな!!」
武音は、上げた方の腕をつかみ、満月を後ろに倒そうとするが、
「人間には二つ腕が付いてるんですよっと」
掴んではいない、左の方で殴ろうとしてきた。
まずい…
武音は、左の腕も掴んだ。
「腕を掴んでなんになる?」
「ふっ… さあな。」
「馬鹿だなお前は!」
そのときだった。
武音が、満月に「頭突き」をしたのだ。
満月の体は後ろに倒れていく。
「手が使えなかったから頭を使う、か… 調子に乗るなよ…」
満月がすぐ立ち上がろうとしたとき、
「ああ、調子には乗らないさ、でもそのかわり、」
武音が、今日一番の怖い顔で。
「お前の体に乗ってやる!」
武音が、すごい勢いで満月を押し倒した。そして、殴る、殴る。
「ふざけるな...クソ...」
殴られるたびに、満月の悔しそうな声が武音の耳に伝わる。
そして…
満月が泣き出した。
「何泣いてんだよお前…」
「いてぇ… いてぇんだよ。クソ!」
必死に立ち上がろうとするが、乗られているため立ち上がれない。
たとえこの状況から武音を殴っても、武音には通用しない。
わかっていた。
だから自分の敗北が悔しかった。
だんだん意識が薄れていく。
そして、武音が満月のスイッチを押した。
「…………俺の負け、かよ…」
「ああ、俺の勝ちだな。」
「…おい一年、これからお前と戦うやつは、きっとお前じゃ無理だ。」
「…は?」
「だから、あいつはきっと強いんだ。お前じゃ無理だ…」
「…それは俺もさっき見てたからわかる…でも、だからこそ、
『おっぱい』だろ?」
「ああ…そうだな、『おっぱい』だ。」
「ああ。その通りだよ。」
…!? いつの間にか、伊藤義徳が、前に立っていた。
「私がその、おっぱいだよ。」
伊藤は、驚いていて何も動けなかった武音のスイッチを、押した。
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「今思えば、惜しかったなぁ。あのとき。」
武音は、まだ走っている途中だ。
「でも、まだ決着はついてないってことだ。…3日後、絶対に決着つけてやる!!」
武音は、さらに気合を入れて走った。
ちなみに、走りすぎて次の日筋肉痛になってしまった。ドンマイ武音。
「ってふざけんじゃねえよおおおお!!」
「あと2日だよあと2日!やべえよマジで……まあ、昨日いっぱい走ったし、今日は控えめにしとくかな。あと、あのメガネに土下座させよう。」
武音は、泣きながら土下座する乙杯を想像しながらおっぱい学校へ向かった。
残された時間は少ない、いったい誰がチャンピオンになるのだろうか…