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第四話 一年前

武音見多男は、必死に夜の道を走っていた。


乙杯隆にあんなことを言われて、走らないわけにはいかない。


でも途中でアイツにあったら面倒なので、少し遠い道に行った。


「はぁ… 意外ときついなこれ…」


すぐに疲れてしまうのが自分でも悔しい。あと3日しかないのにどうしろというのか。


基本的にチャンピオン決定戦の最初は、鬼ごっこの様に逃げ合うところから始まる。


しかし範囲はグラウンド内なので、隠れることなど出来ない。出来るとしたら人を盾にすることぐらいだろう。


だから、スタミナが必要なのである。


「ま、これくらい走れるなら行けるっしょ」


武音は、暇だったので一年前のことを思い出すことにした。。


――――――――――――――――――――――――――――――



思い出せば、衝撃的だった。



「お~い、お前ら!先生の話を聞けーい」


担任の先生のやる気の無いような声が教室中に響き渡る。


周囲は「なんだよー」とか「めんでぇ」など騒いでいるが先生はいたって冷静だった。


そして先生から衝撃的な言葉が出てきた。


「お前ら、一週間後にはおっぱいチャンピオン決定戦があるって、知ってるよな?」




・・・え?



一部の生徒がうなづいただけで、他の生徒はわけがわからなくなっていた。


頭の中がおっぱいだった。



「お前ら行事予定見ろよ。書いてあるだろ、おっぱいチャンピオン決定戦。知らなかったのか、武音。」


「全く知りませんでした。というかなんですか、おっぱいチャンピオンって。」


「おっぱいチャンピオンっていうのは、おっぱいを一番愛している人に与えられる称号だ。この決定戦を優勝したやつはおっぱいチャンピオンになることができる。」


おっ…



「おっぱいチャンピオンだってぇえええええ!?」



数人の生徒から一気に声が出る。お祭り状態だ。



そう、おっぱいチャンピオンは、おっぱい学校の生徒達の憧れなのである。


おっぱいを自分が一番愛している、ということが証明できるからだ。


一年生は、燃えていた。熱く、熱く。


俺が真のおっぱいだ!と叫ぶ奴もいた。


…………そう、決定戦の方法を知るまでは。




決定の方法は朝礼で校長先生から発表された。


やはりむちゃくちゃすぎる方法、ブーイングが飛び出した。


「こんなのおっぱい関係ないじゃん」


「なんだよおっぱい愛してるの証明出来ると思ったのに」


「うわ…なんだよこれむちゃくちゃじゃん」


「頭おかしー」



校長はその声に顔を赤くし、



ドン!!!!!



と机を強く叩いた。



「頭がおかしいって…ええ?」



強くも冷静なその声に、誰も喋らなくなる。



「おっぱいに対する愛…そう、愛はね…行動に移せる、いや、移すべきなんだ!愛があればなんでもできるさ!今の世の中…自分で自分の限界を決めている人が多すぎる!そんなんじゃ駄目なんだ!自分で自分を決めてしまったら…本当にそうなってしまうかもしれないんだ!だから…それじゃいけないと思ったからッ…無限の可能性…『愛の可能性』を信じて…僕はおっぱいチャンピオン決定戦を企画したんだ!僕の考えたこの企画に、頭のおかしいところなんてあるか?」


誰も…手を、あげられなかった。


「すまない…少し熱くなってしまった。悪いね… それじゃ」





「今年も、活躍を期待しているよ。一年生君。」

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