愛したのは、どちら?
迷ってしまった。安易な問いに。
「ねぇ、IとYOU、どちらを取る?」
そんなの、YOUに決まってる。
…と、言いかけてつっかえた。
彼女も僕がつっかえるとは思っていなかったようで、
「え?どこか悪いの?!」
と血相を変えて僕に抱きついた。
そういう問題じゃない。
僕は真剣に迷っているのだ。
確かに僕は命に変えてでも彼女を守りたいとは思うがーーーーーーーーーー自分が可愛いというのもある。
そこである疑問が生じた。
僕は本当は彼女を愛していないのではないか? 本当はただの遊び心だったのではないか?
疑問が疑問を呼び、更に疑問が増えていく。
…いや、ちゃんと愛しているはずだ。
そこでハッと思い出す。
「愛というのは、その人の為なら死ねると言う事だ」みたいな名言を中学時代に見て
「バッカじゃねーの?」とケラケラ笑っていた事を。
今になってやっとわかった。
あぁ、こういう事なんだなと。
彼女を家まで送って、また明日と言う。
でもその明日はこないんだよとは言わずに
僕は方向転換して進んだ。
僕は君を愛していないから、
死ぬ程愛していないから、
さよならしないとね。
あぁ、今夜は月が綺麗だな。
ぼんやりとしてとても綺麗。
何でだろう、寒いはずなのに暖かい。
溢れていく暖かさ。
それを愛に変えられたなら。
どれだけ幸せだっただろう。