1-9 夢の中の彼女
指先一つ動かさないカトルの様子を確認してルーブクは緊張の糸が切れてヨロヨロの路地の壁にもたれかかった
「ふぅ…」
「捕まえることはできなかったが、騒動はこれで収まったな…これで許してくれよ坊主…」
「アイツの火が消えるまでもう少し休憩するか…」
「そしたら遺体を衛兵にでも引き渡してさっさとこの街から離れよう…」
ずるずると壁から地面に尻をついて全身の体重を壁と地面に預けて目を瞑った
しかし不穏な影はこれまでのカトルの爆発を頼りにゆっくりと確実に近づいてきていた
「ここまで派手に暴れてよく休憩できるな?裏切り者。」
その声にルーブクはハッと目を見開き、路地の先に立っている彼を見て絶句した言葉を溢した
「最悪だな…」
気がつけば身体は動かない。今のルーブクの立場でそうなるのは必然だった。
なんにせよ、彼の目の前に現れたのは不信の権者。ベリアン・シトラールだったからだ。
「お前は裏切り者。俺の権能からは絶対に逃れられない。お前は既に俺の信用を無くしている」
そしてベリアンが肩に担いでいる子供。それにも
見覚えがあった。
「なんでお前がソイツを連れているんだ…?」
目を丸くしてベリアンが担いでいるラウルーレンスを見た。
彼は気絶をしているようで、目も口も閉ざしていた。
「別に…偶然このガキがアイツの子供だとわかったからな。」
「それよりもほら。さっさと本をもらうぞ。お前が持っているんだろ?」
ベリアンはルーブクの前に立つと担いでいたラウルーレンスを地面に置き、ルーブクの服の隅々を調べ始めた
こうなれば仕方がない。身動きが取れない以上、何もできないまま本を奪われて殺される。
【ここで終わりか…結局俺はなにもできませんでしたよ…エリクールさん…】
「これか。」
ついにあの本をベリアンに見つけられ盗られた。
次は俺の番だ、と覚悟を決めた時、案の定、ベリアンは鞄から注射器を取り出してベリアンの首に添えた
「毒薬か?」
「当然だ。ただナイフで刺しても面白くないからな、地獄のような熱に苛まれながら苦しんで存分に死ぬといい」
そう言って彼の首に注射器を刺そうとした瞬間。ベリアンの後ろに倒れていたラウルーレンスが立ち上がり、手を彼にかざして照準を定め、炎の球が放たれベリアンは全身を炎に包んだ。
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「ここはどこだろう…」
自分がなにをしていたかも思い出せないまま、ラウルーレンス・アスランは真っ黒な空が果てしなく続く空間に漂っていた
「あれは…星かな…」
意識が朦朧としてよく見えないがあちらこちらに無数の光が輝いているのが見えた
美しく輝く無数の星々の中をなにもできないまま彷徨っていると目の前からゆっくりとこちらに向かってくる少女が見えた
自分と同じ背丈、髪色、瞳の色までそっくりな彼女はまるで自分の妹かのようにも思えた
「誰…」
彼女はラウルーレンスの目の前までくると頬に両手を添えて優しく囁いた
「これは私自身のため…」
「私が不自由になるために必要なこと…」
「他の人には無理だから…だけど○○なら…」
「○○なら私のお願い、聞いてくれるよね…?」
「なに…言って…」
頭に自然と入ってくるその声にぼーっとしてしまう。
だけどその言葉は一部を除いてしっかりと理解できる。
「お願い…いつか私を…」
「迎えにきて…」
大きく光る星を背後に優しく微笑む彼女の顔を最後にラウルーレンスは目を覚ました




