1-6 裏切り者vs灰色の襲撃者
「クソッ、!」
吹き飛ばされて倒れた身体を奮い立たせて立ち上がるとフードが外れ頭から血が流れている素顔が露わになった
「よぉ?やっと顔が見れたナ。裏切り者。隻眼のルーブク」
黒い眼帯を右眼につけた胡桃色髪の若い男。
おじさんと呼ばれるのが心苦しい年齢ほどの男が、自らの爆発で服が吹き飛んで上裸になって煤汚れ血塗れのカトルが互いに向き合った
「大人しく本を渡して俺に殺されロ」
冗談を言っている訳ではない、そんな馬鹿げた提案も彼は本当にそれを躊躇うことなくするだろう
目の前の猛獣はそういう奴だ。
渡してたまるかと思いながら手元にある本を目を向けたが、その手に本はなかった
ルーブクとカトルの間に落ちていたのだ
【クソッ!吹き飛ばされた時か、!】
反射的に落ちている本に駆け寄って手を伸ばそうとするもカトルがそれを見逃す筈もなく彼の進行上に爆破を起こした
「させるカ!」
"爆破"
目の前の本を取り戻すことに脳を支配されていたルーブクは爆破をかわしきれずに咄嗟に横に飛んだが爆風が彼の身体を建物の壁に叩きつけた
「ぐうっ、」
爆風と体の間に挟み込んだ腕が火傷を負い、叩きつけられた背中はズキズキと痛み始めた
顔を上げると既にカトルは本を拾い上げ、その本を手に取った
「これで…これデ…」
なにかに取り憑かれているように鼻息を荒げてその本をじっと見つめている
「どこを見てるんだ?」
"千手の岩盤"
壁にもたれ掛かりながらルーブクのまわりから無数の岩盤がカトルに向かって一直線に凄まじい勢いで伸びていく
岩盤は勢いそのままカトルの全身に突き刺さり、衝撃で彼は本を手放して先程のルーブクのように壁に叩きつけられた
「邪魔ヲ、するナ!」
「するに決まってるだろ。俺はお前たちの邪魔をするためだけに生きているんだからな。」
落ちた本を拾って懐に入れながらそう語る彼の表情はなにも感じさせずただ冷たい眼差しがカトルを突き刺した
「ふざけるナ!お前ハ大人しく俺に殺されレバいいんダ!」
"爆炎弾"
無数の炎弾がルーブクにに向かって襲いかかるも壁沿いをそのまま走り抜け路地裏へと逃げていく
【アイツと殺り合うのに距離を取るのは得策じゃないとはわかっているが…】
「逃げるナ!」
"爆破"
追撃の爆発を路地裏へと起こしたことで壁が崩れたがそれは道を塞ぐほどの規模ではなかった
それでもあの男は追撃を続けるために路地裏へと向かって走った
路地裏の先を見たときカトルの目の前にはルーブクがナイフを右手で逆手に持ち、振り上げた状態で待っていた
「!」
鉢合わせと同時、間髪入れずにルーブクはそのナイフをカトルの脳天に突き刺そうとした
「ぐぅ、!」
激情に任せて罠の可能性を鑑みなかった彼の失態だった、それでもカトルは脊椎反射のような速さで身を逸らした
それでもナイフは左肩を突き刺さり鮮血が舞う
赤い血がポタポタと地面に落ち続けている間にも目の前の男はナイフを引き抜きもう一度、今度は突きでカトルの眉間狙って致命傷を与えようと隻眼の目から殺気が溢れ出ている
「シュッ!」
「このヤロ、!」
放たれたナイフの突きを右手のひらで受け止めて掌を貫通して顔の皮一枚で止めた
【止まるな、!ここで攻撃を中断すればコイツは自爆覚悟で爆破してくる!】
残っている左の拳で側頭部を殴ろうと試みたがカトルは左手でそれを受け止めた
「痛えナ、!」
無理矢理動かした左腕で全ての攻撃を受け止めたとカトルは思っていた…
「だりぁぁっ!!」
ルーブクは雄叫びを上げて歯をくいしばって頭突きをしてきたのだった
【コイツ、!】
【これは間に合わ…!】
鈍い音が互いに響き合って2人の額は割れ、取っ組み合っていた手を離して立ちくらみが起きた
「はぁ…はぁ…」
頭から流れる血を腕で拭き、片膝を付いているカトルにフラフラと歩み寄った
「大人しく捕まれ。」
出血している肩をおさえながら息切れをしているカトルの様子を見て違和感を感じた
そしてその違和感はすぐに身をもって知ることになった
次の瞬間、カトルは彼の手に刺さっていたナイフを手に取り上半身を切り上げてきたからだ
「ぐうっ、!」
ナイフを使い慣れていないのかそれとも正確に使えない状態にあるのか…
その一閃はルーブクの胸を切り裂いたがその傷は致命傷には届かなかった
それでも傷は浅くはなかった…
胸から血飛沫が飛び散り路地の壁に血痕がピシャリとついた
「全身に煮えたぎってタ、血が抜けて少し冷静になってきたゼ…」
ギザギザの歯を露わにし、手にしたナイフをルーブクに突きつけながらそう笑って見せた
「お前は冷静になってもその頭の悪さは変わらない。」
挑発するように煽ってもカトルは激昂することなくただ目の前の相手をまっすぐに見つめていた
【もう隙はつけそうにないな…】
彼の集中している姿を見てルーブクは息を整えて懐からもう一本ナイフを取り出した




