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The world of rights 【わるらい】  作者: SAKURA
第二章 超越の再演編
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3-9 大派閥の勧誘

ラフィに連れて行かれた俺は通りがかる人々の視線を浴びながらも石塔へ辿り着いた。


ここに来てから3回目となるこの石塔への訪問。


扉を通り、階段を登り、彼女が立ち止まった階で止まり、その部屋の扉をくぐる。


その部屋は長い2つのソファと膝の高さほどのテーブル、そして壁掛け時計、木製の棚がある質素な応接室だった。


「まぁ座りなよ。」


彼女は一方のソファに腰掛けるとそう促した。


お言葉に甘えて座ると部屋の扉がノックされ、ラフィが入室を許可すると見覚えのある女性がしょんぼりした顔をして入って来た。


「失礼します…。」


「なんで事務所のお姉さんが?」


「ん?それはね…君に仕事を押し付けた罰を遂行してるんだよ。」


仕事。それは一昨日俺がラフィに届けた荷物。

それは本来、彼女が持ってくる予定だったものだ。


それだけで多少の想像はついた。


おおよそ、ラフィが事務所に押しかけて彼女に問いただしたのだろう。


「紅茶です…。」


彼女は紅茶を2人の前にそれぞれ用意して提供し、それが終わると一礼して、すぐさま部屋から出ていった。


「それじゃあ…。先日の出来事を話して貰おうか。」


そうして事件の事情聴取が始まった。


先日、俺を襲って来たあの人。


あの人はあの後ラフィが拘束し、今はこの街の牢屋に囚われているらしい。


話を聞いている内にどうやらラフィは様々なコネクションを持っているとわかった。


この街の発展に深く関わった人物だからだろう、改めてそういうことを思い知らされ、彼女を見る目も少しは変わった。


この人は自分なんかよりもずっと立派で世界に大きく貢献して、数多の人々を今も幸せにしている。


「ちょっと…聞いてる?」


「、!あぁ。」

【調子狂うなぁ…。】


「だ・か・ら!」

「君がどうして襲われたのか聞いてるの!」


彼女はソファから身を乗り出してそう聞いて来た。


「えっと…それは…。」


本当の事を話すべきか…。嘘をついたことでいい事は無いし、本当の事を話してもその後がわからない。


彼女は俺の過去を知ってどう思うだろうか…。


2.3ヶ月世話をしたルキナにも話していない俺の事を話してもいいのか、わからない。ルーブクに聞きたい…。


俺はどうするべきなのか…。


「君の事を襲った人はずっとだんまりらしくてね。だから詳しいことは君からしか聞けないんだ。」

「だから協力してくれると助かる。」


彼女は急かすようにそう言う。


「面識は無い。なんか後ろからつけられてたから下水道に逃げ込んだだけだよ。」


ふーん。と彼女は腕を組みながら話を聞いていた。


おそらく彼女は何も話す事は無いだろう。

だから俺はあの人との因縁を隠しながら話すことにした。


「下水道に逃げ込んだ、ねぇ…」

「どうして君はまわりに助けを求めることもせずにわざわざ人のいない下水道に逃げ込んだんだい?」


彼女は俺に疑いの目を向けた。

それは単なる疑問をぶつけているだけだろう。

しかし俺はかなり神経質になっていた。


彼女のあの目で見られていると鼓動が速くなる。

別に自分がなにか悪い事をしたわけでもないのに、1つの嘘を隠すためだけにこんな思いをしている。


「君は戦闘することに固執していた。」

「違うかい?」


「、!」


なにも返答できないでいると彼女は核心を突いてきた。


「まぁ…。話したくないならいいよ。」


「いいのか?」


そう問いかけると彼女は紅茶を一口飲んで続けた。


「無理矢理口を割らせればいいだけだからね。」


狂気じみた妖艶な笑みを浮かべる彼女の一言に俺は一歩後退りしたが座っていたので椅子をガタンと揺らした。


「冗談だよ!(笑)」

「ただ僕が君のそういう間の抜けた顔を見たかっただけだよ(笑)」


ラフィは笑い涙をうかべながらそう笑った。


「面白いものを見せてくれた代わりに詮索はしないであげるよ。」

「君は知らない人に後ろをつけられて一心不乱に下水道に逃げ込んだ所を襲われた。」

「それでいいね?」


「あぁ…。じゃあそれで。」


「よし。決まり!」

「手続きは僕が特別にしておいてあげるからさ。これは貸しだとでも思っておいてよ。」

「じゃ、話は終わり!もう帰ってもいいよ。」


常時ラフィ主導の話し合いが終わり、俺は石塔を出た。


扉を開けた瞬間、学園内の至る所から視線を向けられた。


近くでこちらを伺っている生徒はヒソヒソとなにか話している。


【気味が悪い…。】


それほど石塔の錬金術師に連れて行かれたことがこんなにも注目を集めていたとは知らなかった。


思えばそうだ。俺は勘違いをしていた。あんなに小さな身体を持つ彼女はまさに世界を変えた人だったんだ。


そんな人に連れて行かれればこう注目を浴びるのも当然だ。


誰1人として話しかけてくることはない。


その事実がより彼女の存在感をラウルに示した。


ただ、他とは一線を画した覇気を纏う人がラウルに話しかけてきた。


「あの錬金術師が石塔に人を招くなんて珍しいな…。」

「それも新入生ときたか。」


制服のジャケットを肩に羽織り、薄暗い灰色の髪をかきあげた、強面で逞しい男がラウルに話しかけてきた。


「えっと…」


「悪い、自己紹介をしていなかったな。」

「俺は学園派閥ヴァナヘルム・ギャングという派閥のリーダーをやっている、THE BOSS、タルヴァスという。」


突然のことで、誰だかもわかっていなかったのでそう混乱していると、彼はそう名乗った。


彼がそう名乗ると、こちらを伺っていた人は全員、彼を見つめ、「本物!?」という声まで聞こえてきた。


「お前に声をかけたとは他でもない。」

「ウチには1人、'千里眼'を使える奴が居てな昨日のお前の戦いぶりをソイツが教えてくれたんだ。」

「お前のその強さが俺は欲しい。」

「俺の派閥に来ないか?」


そう言うと彼は手を差し出して握手を求めてきた。


握手をすればそれに応じる、ということになるだろう。


「あの…突然のことで、ちょっと待ってください…。」


派閥とはこの学園内に存在する勢力だ。

派閥はその大きさによって様々な特権が与えられていたりする。


そして派閥は大抵、拠点と呼ばれる学園内に存在する建物を所有している。


多くの生徒は派閥に所属し、そこで自らの研究や課題、やりたい事を進めている。


だが、それは小さな派閥での話。


彼がリーダーを務めているというヴァナヘルム・ギャング、それは学園内に存在する派閥の中でも大派閥と呼ばれる数少ない派閥の1つだ。


大派閥と呼ばれる派閥には国家も絡む。


なぜ国家も絡むのか、それはこの学園内で擬似戦争とも言えるものをしているからだ。


国家と国家のいざこざを学園内の自らの国民がリーダーを務める派閥を用い、国家が派閥に依頼し、互いの合意が為された上で執り行う戦争、それが擬似戦争だ。


それを可能にするのがfirst grade fightでも用いられるコロッセオと呼ばれる施設にある巨大な復活の魔法陣。


それはたとえ戦争で死んでしまっても、魔法陣に記録されている情報を元に肉体を蘇らせるというこの世に1つしかない、誰が作ったのかも公表されていない魔法陣だ。


それのお陰で擬似戦争はできている。


タルヴァスという人はそれに向けた戦力を増やすために俺に声をかけたのだろう。


しかし、俺がそれに応じる道理はない。


「やっぱり遠慮しておきます。」


確かに派閥に入るメリットは大きい。

俺の目的にも近づくことはできるだろう。


しかし、俺は自ら戦争なんて地獄を作り出したい訳じゃない。


そんなものに興じるくらいならそのメリットも必要ないと思った。


「そうか…。」

「まぁ。君には君のやりたいことがあるんだろう、気が向いたらいつでもきてくれ。その時は歓迎しよう。」


俺の答えに見当違いをしたような顔をしてそう返すと、彼は「邪魔したな」とだけ言って立ち去って行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


彼が出ていった応接間、石塔の錬金術師ラフィ・スフィクスは1人、座っていたソファに寝転がっていた。


「あの、え?って顔!」

「これまで僕のことを馬鹿にし続けてた奴とは思えない!」

「あはは!お腹痛い!死んじゃう!」


一通り笑い転げたあと、あまりにも笑いすぎて息切れを起こした。


「ひーっ、!面白かったー、!」

「はー…久しぶりにこんな笑ったー…」


コンコンコン


部屋の扉がノックされ、ラフィはゆっくりと起き上がった


「いいよ」


扉を開けたのは罰として雑用をさせている事務所勤務のルイズだった。


「カップを回収しにきました。」

「ラフィさん、アスランさんと何の話をしてたんですか?」


紅茶のカップを片付けに来た彼女はそんなことを聞いてきた


「別に?あの子が一昨日面倒事に巻き込まれたからその処理をしてたんだよ。」


「そういうのにラフィさんが口を挟むなんて珍しいですね?」


「だって見ちゃったんだから仕方がないだろ?」


「そうですかー?いつもなら面倒くさがって見て見ぬふりする癖に?」


意地悪そうに告げる彼女を睨むとルイズは何でもなさそうに「それでは失礼しましたー」とだけ言って部屋から出ていった。


「僕だってわからないよ…。」

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