3-5 石塔宛の小包
「今回は迷子にならずにここに来たな。」
相変わらず古い建物だが何故だか今度は扉に鍵が掛かっていた
「前来た時はこんなの無かったのに…」
「それはたまたま僕が忘れてただけだよ」
聞き覚えのある声が背後から聞こえた。
子供っぽい声、だがその奥には多少の性格の悪さが表れている。
振り向くと声の主はやはりラフィだった。
「相変わらずだな」
「それってどういう意味?」
出会って早々しかめっ面から始まった再会だが、彼女はラウルの手に持っていた荷物を見ると目を輝かせた。
「ねえ…それってまさか…僕宛の荷物だよね?」
「そうだけど、これ一体なに入ってんだ?」
俺の問いに彼女は答えなかった。
「君には関係ないものだよ」
ただはぐらかすだけ。特段興味はなかったがそんなことを言われれば気になってしまった。
「へぇ…」
「なにしてるの?はやく渡してよ」
ちょっとしたいたずら心でラウルは彼女の手が届かないところまで小包を高く掲げた
「そっちがその気なら中身教えてくれるまで渡さねー」
「せっかくここまで運んできてやったんだから、何入ってるかくらいは教えてくれてもいいだろ?」
「あぁ!もう!めんどくさいな!」
「いいから渡せ!」
ラフィは彼の態度に頭を悩ませ、結局はとどかない荷物相手にぴょんぴょんと飛び跳ねて取ろうとした。
だがもちろん少女の体で青年の頭より上にある荷物に手がとどくなんてことはあり得なかった。
【コイツにだけはバレたくないのに、!】
【なんだってコイツになんか配達させたんだ!?】
「もうわかったよ!」
「なに入ってるか言えばいいんだろ!」
「クッキーだよ…。」
遂に根負けした彼女はその小包を指差して目を逸らしながらそう言った
「クッキー?」
ラウルは持っていた荷物を大人しく渡すと彼女はその場でその中身を取り出した。
「ほら、本当だろ?」
【どうせ、やっぱりお子ちゃまだな!とか言うんだろ…。ああそうだよ、僕はお子ちゃまだよ!】
「本当にクッキーだったんだ…」
小包の中身はクッキーと書かれた大きな缶詰、彼女の言っていたことは本当だった
「なんだよ。てっきりもっと凄いものだとか思ってたのに…。」
「期待通りじゃなくて悪かったね」
「じゃ、ちゃんと届けたから俺は帰るかな…」
「それじゃ」
そう軽く手を振るとラウルはそのまま石塔から離れて校門の方へ向かって行ってしまった。
「言わないのかよ!」
ラフィは予想が外れて地団駄を踏み、クッキーの缶を抱えて石塔の扉に右手をかざした
カチャ
その音と同時に鍵が開き、そのまま石塔の中へ入って行った。
彼女は寝室の部屋に入り、本がいくつも重ねて並べられている机の横の棚にその缶を置いた
「なんだよ…なんなんだよ…」
「僕はなんで、お子ちゃまなんて言われるのを期待してたんだ…?」
「はぁ…アイツが居ると気が狂うなぁ…」
「今度彼女に会ったら文句言ってやる…。」
ラフィは壁に掛けられていたカレンダーに目が移った。
「新入生ってことはFGFの時期か…」
「アイツが出るならアイツの負け顔見れるといいなぁ」
「なんて、ちょっと大人気ないかな…」
その時、誰が石塔の扉を叩く音がした。
「誰だ…?」
ラフィは目を瞑った。あの扉にはいくつかの仕掛けが施されている。
1つは扉の鍵を担う魔法陣。
もうひとつは監視、違う言い方をするなら視覚の一方的な共有とでも言うべきか、彼女が意識をすれば扉の前の光景が彼女の目に映る。
「またアイツか…帰ったんじゃないのか…?」
ラフィは階段を降りて扉を開くとそこにはさっき別れたはずのラウルが立っていた。
「帰ったんじゃないの?」
「今度はなんの用?」
嫌そうな顔をしながら出迎えると彼はポケットの中からチェーンの切れたネックレスを出した
「悪いんだけどコレ直しておいてくれない?」
「ネックレス?なんでこんなもの…」
「錬金術師なんだろ?だったらソレ明日までに直しといてー!」
彼女がネックレスを受け取った瞬間、ラウルは180度回転して走っていき、途中で振り返りながらそう告げて去っていった。
「なっ、!ちょっと待てって!」
しかしその声は届かず、彼女の手には置いて行かれたネックレスだけが残った
「やっぱアイツ嫌いだ!」
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ラウルが走り出した理由。それはとある人から呼び出されていたからだった。
「ちょっとハプニングがあったけどなんとか間に合いそうだな…」
校門を飛び出して街中を走る。そして珈琲の香りが漂う路地裏を抜けた先にある一軒の珈琲屋に着いた。
「手紙の内容だとここだよな…」
店のテラス席を見回すと1人、珈琲と新聞を広げて帽子を深く被っている男性がこちらに気がついたのか視線を送ってきた。
その男が座る席の向かいに座ると彼は新聞を折りたたんで帽子を取った
「久しぶりだなラウルーレンス。」
そこにはルーブクが居た。
「久しぶり、ルーブク。」




