3-4 曲がり角の運命
小包を受け取ったラウルは初めてラフィと出会ったあの石塔へ歩いていった。
【それにしてもこれ…それなりに軽いが…なに入ってんだ?】
しかし小包の送り主の住所と名前を確認しようとして小包を眺めていると、曲がり角で人とぶつかってしまった。
「わっ、!」
「あ、すみません、大丈夫ですか?」
体格差で相手の方が転んでしまい、そう心配そうにしながらラウルは手を差し伸べた。
自分とよく似た金髪の彼女は肩の下まで伸びたその髪を視界の邪魔にならないように耳にかけながらこちらを向いた
それは運命だと思った。
彼女の水色の目と目が合った瞬間。落雷が全身を通り抜けたかのような錯覚に陥った。
俺は思った。これが一目惚れってものなんだと。
「だ、大丈夫…。ごめんなさいボーッとしてて…」
彼女は目が合った後すぐに目を逸らして自力で立ち上がった。
彼女の中性的な落ち着いた声は聞いていて安心する。そんなふうに感じた。
「それでは…。」
俺はそう言いながら早歩きで離れていく彼女よ背を気がつけばずっと眺めていた
「あ、!これって…」
ふと廊下に目をやるとそこには彼女の落とし物と思しきチェーンが切れたネックレスがあった。
手に取ってみると銀色のチェーンについていたのは青色の宝石が埋め込まれたペンダントトップだった。
「ちょっ!落とし物!」
そう呼びかける頃には彼女はもう見えないほど遠くに行ったのかどこにも姿は見えなかった。
「ったく…あとで事務所にでも届けておくか…」
【それにしても…なんでこんな胸がドキドキしてんだ…?まさか…な。】
そう思いながらネックレスをポケットの中にしまうと頼まれごとの続きをするためにラウルは再び石塔に向かって歩き始めた。
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【なに…これ、私こんなの知らない、!】
普段よりも心臓の脈打つ音が大きく、そして速く聞こえる。
逃げるようにというか実際に逃げた訳だけどここまで動揺したのは生まれて初めてかもしれない。
彼だ。あの人を見てから私はおかしくなった。
私は病気なのかもしれない…。
せっかくみんなでここまで来たのに…。
「おや?カリナ、どうしたんだい?」
混乱のあまり早歩きで廊下を彷徨っていると見知ったドワーフのおじさんたちが止めてきた
「あ、ルレンゴさんにゴーティエさん、グアダーニさんまで…」
カリナは一瞬話すかどうか迷った様子を見せた後すぐに相談をし始めた。
「実はみんなに言わなきゃいけないことがあって…」
何か重苦しい雰囲気を漂わせるカリナに他の3人は何か大事かと固唾を飲んだ
「どうした?」
「大丈夫かい?話してごらん?」
「カリナはワシ達の孫のようなものなんだからなんでも言ってみなさい。」
3人のおじいちゃんとも呼べる人たちの心配を感じて打ち明けようと決心した
「実は…」
「私、病気かもしれない…」
それを聞いた3人の反応はまさにこの世の終わりを思わせるようだった
「大丈夫か!?いつからだ!?」
「症状は?痛みとかないか?」
「ワシ達の希望が……」
3人の心配は心を痛めたが自分の心臓の鼓動もいつも通りに戻ってきたのを感じた。
「待って…やっぱり大丈夫…。」
その一言にさらに追求するように色々心配の声を掛けてくれたがもう自分でもわかるほどに落ち着きを取り戻したので3人も段々と落ち着いていった。
【何だったんだろう…アレ。】
激しい運動をした後のようなあの心臓の高まりは初めての体験だった。
「大丈夫ならいいんだが…」
「オレ達がここまで来た目的は忘れてないな?」
ルレンゴは彼女の顔色を伺いながら心配した。
「大丈夫。私の事を拾ってくれたみんなのためにも必ずこの復讐は果たすよ。」
先程までの柔らかな彼女とは打って変わってナイフのような鋭い意志を感じさせる眼差しが彼女のこれからを表していた
「村のみんなの居場所を奪ったあの王子を…。」
「そうだな…まずはあの王子の情報を集める所からだな。」
「情報収集はワシ達がやっておくからカリナは来たるべき時に備えておきなさい。」
彼女の言葉にグアダーニは会釈して今後の予定を話し始めた。
「FGFに関しては心配する必要はないな。」
「事前に準備はしてきたし油断さえしなければ余裕だろうな。」
「あと一週間…。準備運動ぐらいには…」
「だけどアイツに注目されないくらいに手は抜かないと…。」
ゴーティエとファーストグレードファイトへ臨むにあたっての認識を再確認した後、グアダーニは彼女が肌身離さずに付けていたペンダントを付けていないことに気がついた。
「ところでいつものネックレスは今日はしてないのかい?」
「え?」
そう言われてはじめて彼女は自身がネックレスをしていないことに気がついた
「うそ…あれ?」
スカートのポケットまで全て確認したがどこにもチェーンのかけらすら無かった。
「無くした…?」
頭の中は空っぽ…
これまで考えていた計画も全て忘れるほどに大きなショックだった。
だってあのネックレスは思い出の品なんて物じゃない。森の中に捨てられて村の人たちに拾われる前…物心がつく前から身につけていた品だった。
あれはもう私の一部であり、なくてはならない物、そう思えるほどに思い入れのあるものになっていた。
私の目からは一筋の涙が流れた。
3人は表情を一変させて彼女を慰めようとした。
だが3人の声は彼女には聞こえない。
なぜなら彼女はあまりの衝撃にまわりの音も聞こえずに自分だけの世界に入ってしまったからだ。




