3-3 あなたはどれをえらぶ
食堂を出た俺たちは授業の一覧表が貼られている事務所前までやってきた。事務所内には試験日にラフィと会ったあのお姉さんが机に向かって事務仕事をしていた。
「これですか…。」
ジルグが指差した先にはずらっと講義内容と講座名が書かれている一覧表が貼られてた
「さすがに多いですね…。錬金術、魔術、剣術、政治学、帝王学、経済学、本当になんでもありますね…。」
「確か一年目は最低でもここから3つ受ければいいんだったか?」
「そうです。ただ…。受けたければそれ以上取ってもいいということでしたね。」
ジルグの話を聞いたルキナは私は遠慮しますとでも思ったのか引きつった苦笑いをしていた。
「2人は何を取ります?僕は錬金術と科学、あとは…やったことはありませんが無難に魔術でしょうか…。」
「私はできれば勉強系は遠慮したいので…」
そうたわ事を抜かすものだからラウルは冷ややかな目で彼女を見た。
その視線を感じ取ったのかルキナは体裁的に続けた
「…というのは冗談で…。私も魔術と戦術…」
「ああもう!わかってますよ!勉強もですよね!?」
「だったら基礎算術とかでいいですか!?」
「そのくらいだったら俺が教えるから別のにしとけ。どうせなら健康学とかいいんじゃないか?」
「え?そんなのでいいんですか?」
緊張が解けたかのようにルキナはラウルの拍子抜けした言葉に自然に言葉を返してしまった
「もちろん。あの暴食っぷりのヤバさを知るには良いところだろ。」
「そんな理由で…。まぁいいです。ところでラウルはどうするんですか?」
「やはり戦闘系を?」
「そういえばラウルさんの目標とか聞いてませんでしたね…。」
「そうだな…。」
2人に故郷の出来事を話す訳にはいかない…。なぜならあの地獄のような光景を少しでも2人には知って欲しくないと思ってしまったからだ。
「俺は…目の前にいる人くらいは助けられる人間になりたいんだ…。その…深掘りはしないでくれると助かる…。」
2人にとっては初めてラウルの根幹の部分を見たかのようだった。
「なんだよ…?」
少し困った顔をしながらなにも言わない2人に対してそう言ったが2人は物珍しそうな顔をした。
2人の頭に思い浮かんだのは試験の土壁の迷路での出来事…。初めて3人が出会った時だった。
「ラウルって本当は優しい人だったんですね?」
「喧嘩売ってんのか?」
「いやいや!そういうのじゃないですって!」
「じゃあラウルさんの目標はもう達成したんですね…。」
見慣れた喧嘩をし始めた2人に混じるようにジルグはそう言った
「まぁ、そうなのか…?」
「でもまだ足りないんだ。」
「足りない?」
「ラウルさん程の実力なら特にもう問題無いと思いますが…。」
「まだまだこんなもんじゃ足りない。」
そう自分に言い聞かせるように言っていると事務所のお姉さんがこちらに気づいたようで、何か用事があるのかカウンター越しにこっちまでやってきた
「えーと。ラウルーレンスさんですよね?」
「はい。お久しぶりです。」
「?」
2人はなぜラウルが呼ばれたのかわからなかったがそれはラウルも同じだった。
「講座一覧をご覧になっている最中に申し訳ないのですが…。」
「講座の申請が終わったら1つ頼まれごとをしてもらえませんか?」
「?わかりました…。」
「では申し込み用紙をご用意しますね。」
「お姉さんー。私たちの分もお願いしますー。」
「では合計3枚ですね。」
ルキナもここぞと言うばかりにラウルのついでに自分たちの分の申し込み用紙を貰っていた。
それぞれが各々の受ける講座を書いていく中、ラウルは魔術、武術、と書いて最後の1つに迷っていた。
ルキナの家庭教師を続ける以上、ルキナと同じ3つを取ることにした。
俺が欲しいのは戦う力。ルーブクに教わったものもあるので選択肢は限られる。
最後の1つにどれを選ぶのか。俺はもう一つ実技的なものを取るか、政治学などの別の強さを知るためにそういったものを取るか…。
俺に足りないもの。それは数え始めればキリがない。その中からどれを選ぶべきか…。
俺にはわからなかった。でも1つ…。気になるものがあった。
それは運命学。講義内容は書かれていない。それでもなんとなく心にくるものがあった。運命なんてロマンチック!とか言いたいわけじゃない。
だが、これを見ていると感じた覚えのある何かを感じる。
気がつけば俺は申し込み用紙に運命学を書き足していた。
「3人とも受理致しました。それではこちら授業の必需品や日程が記してあるパンフレットになります。必需品はまたローベルさんの所で購入してください。あと、今回は無料配布ではないのでそこは注意しておいてくださいね。」
説明を聞き終えるとルキナとジルグはこの後に呼び止められているラウルに別れを告げてどこかに行ってしまった。
「それで…なんの用ですか?」
「実は…。この荷物なんですが…。」
そう言って取り出したのは掌サイズの小包だった
「これをラフィさんの所まで届けて欲しいんですよねー。」
「私今日手が離せなくて…。引き受けてくれますか?」
あのチビっ娘の所に行くのは少し気が引けたが特に断る理由もないので引き受けることにした。
「別にいいですけど…これなんですか?」
ただ、汽車を作ったという有名らしい錬金術師がこんな小さな物を欲しがるわけがわからなかったがそんなに貴重なものなのかとも考えた。
「それは…ですね…」
彼女はなにか言いづらそうにしていたのでこれ以上の言及はしないことにした。
「言いにくいんならいいんです。」
「とりあえずこれを渡せばいいんですね?」
「はい!渡したらもう帰っても構いませんから。」
そう言われながらラウルは軽い小包を受け取った。




