3-1 アネモネ学園入学式
あれから数ヶ月経って今日はアネモネ学園の入学式の日になった。
ここはデンバラン団地の一室。
俺がルキナの家庭教師になる報酬として借りることが出来た部屋だ。
1人で暮らすには十分すぎるほどの広さだなと思ったら他の部屋の入居者に聞いたところこの部屋はこの団地の中で1番広い部屋の1つらしい。
1棟に10部屋あるこの部屋は常に満室で管理者であるデンバラン氏が所有していたこの部屋を貰い受けることになって少し申し訳なさも感じた
ここ2ヶ月でルキナとの親交はそれなりに深まった。週3回の授業のほかに休憩という名の遊びにも付き合わされた。
俺はあの日買った制服に着替えて学園へ行く準備を終えた。
鞄を持って部屋に鍵を掛けて外へ出る。
暖かい日差しを浴びて背伸びをして団地を出る。
学園はすぐそこ。
毎日見ていても実際に足を踏み入れるのはこれが2回目だ。
校門までくると周りには自分と同じ新入生が沢山いた。もちろん先輩という生徒も沢山いたが誰が先輩で同級生かなんてのはどうでもよかった
今日、新入生は全員講堂へ集められる。
いつしかの日みたいに迷子にならないようにキチンと貼り紙などの案内板を見て進んでいく。
無事に講堂に辿り着いて席に座ると隣から聞き覚えのある声がした
「えっと…確かラウルさん…でしたよね?」
錬金術師。メガネに黒髪の青年ジルグだった。
「ジルグ…だったか、?久しぶりだな。」
「知り合いがいてよかったよ。こんな豪華なところに来て少し緊張してたんだ。」
「そうですね。こんな広くて立派なところ、凄すぎて現実感がないですね…」
「ところで家庭教師の件は上手くいったんですか?」
「まぁ…上手くはいったな。」
その時のラウルの脳内にフラッシュバックしたのは駄々をこねるルキナやお菓子を食べるたびに幸せそうな顔をするルキナ、1人で問題が解けて大はしゃぎする彼女の姿だった。
「それは良かったです。」
「ルキナさんは一緒じゃないんですね?」
「あぁ、別に約束とかしてなかったから、な…。」
ラウルが少し言い淀んだ理由。それはここ最近で知った彼女のことからだった。
【アイツ寝坊とかしてなければいいんだが…】
「そろそろ始まりそうですね」
そんな心配をしているうちに入学式が始まりそうだった。
会場全体の電気が消え、壇上にスポットライトが灯る。
そしてその光の中にいたのは1人の健康そうな50歳ほどの老人だった
「新入生諸君。まずは我がアネモネ学園に入学おめでとう。」
「私はこの学園の管理者にして学園長。キエス・アネモネである。」
「君たちには我が学園でその自らの力を伸ばしてもらいたい。」
「新たな発見や研究。魔術や技術の研鑽。」
「この学園での生活が是非とも君たちの一生に残る濃密なものになることを願っている。」
「そして君たちを迎えるイベントがすぐにやってくる。この中には知っている人も多いだろう。」
「新入生のみで行うイベント。ファースト・グレード・ファイト。君たちの得意分野で争われる、いわゆる自分のレベルがどのくらいか知る機会でもあるな。」
「自分の今を知ってこれからやるべきことを知ること。それを各人それぞれ導き出して欲しいと願っている。」
「それでは長話もこれくらいにしよう。この後は学園内の細かい説明を聞いてもらう。なに、聞いて損はない話だからきちんと聞いて欲しい。」
「それでは諸君、また会おう。」
老人が話し終えてお辞儀をすると一斉に拍手が起こった。それを見たラウルとジルグもまわりに合わせるように拍手をした。
スポットライトが消えて会場内の明かりがつく頃にはキエス学園長も既に退場しており、会場内には放送が入った。
「それではこれより学園内説明会を開始します。」
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「それでは皆さまこの後は各人の自由にしてもらって構いません。ご清聴ありがとうございました。」
そうして会場内放送が終わり、ラウルとジルグはとりあえず会場を離れ、いつしかルキナと出会ったあのベンチに2人で腰掛けた。
「うーん。これからどうしますか?授業の一覧でも見に行きますか?」
「そうだなぁ…。特にやることもないしそれもアリだけど、今はなぁ…。」
「まぁ混んでるでしょうね。」
「よし!」
ラウルはなにか思い至ったようにベンチから立ち上がった。時刻はもう昼。そう、昼食の時間だ。
「腹も減ってきたし食堂でも行ってみるか?」
「そうですね。知ってますか?ここの食堂って基本無料で、金さえあればなんでも用意してくれるらしいですよ?」
「さすがは学園の食堂だな。」
グゥ〜
ラウルの腹の虫が鳴ると自然に2人の間には笑いが起き、「我慢できそうにないからもう行こう」と言って2人は学園内の食堂【星の食卓】へ向かった。




